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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
103/154

(4)




 コアはジェドを掴もうとする。

だがジェドにはスローに捉えられ、彼は透かさず宙を飛び、新たな足場に乗り換えると、仮面の嘴に向かって駆けた。




 先端に辿り着くと、リヴィアの雷によって深い亀裂を負った頭部を目指しては、握っていた小さなナイフを減り込ませた。

コアが激痛に大きく揺れ、ジェドはなけなしのナイフに縋って身体を支える。

振り払われるか否か、這いつくばりながら拳を掲げると、留めにナイフの柄を打ち叩いた。

打ち壊したい一心で叩きつける威力が、新たに深い亀裂を生む。と、ジェドは苦痛に叫ぶコアの反動で振り解かれた。




 それを捉えたビクターは、精霊に宙で支えられたままジェドを目掛けて腕を伸ばす。

意思に従って伸びた黒い陽炎は、落下していく彼の胴体に巻きつき、宙吊りになった。




 ジェドは激しく揺られる中、陽炎に馴染みある温度を感じ取る。

ここまで共にやってきたビクターに巻き取られている様な感覚に、体内を巡る熱が冷まされていった。






 ジェドの動きを仰ぎ見ていたフィオは立ち上がると、槍を握り、再びコアの腹を目指そうとする。

だが、その場に追いついたシャンディアに手を引かれ、接近を妨げられた。




 足場から不意に海へ引き込まれたフィオは、シャンディアの速い泳ぎに身を任せるのがやっとだった。




「シャンディア戦わせて! あと少しなの!

コアはもう、光を蓄えられないところまできてる!」




シャンディアは耳を疑いながらフィオに振り向くも、間もなく新たな足場に降り立とうとするビクターとジェドの元へ彼女を導こうとする。




「コアが本来求めているものは、お母さんがくれた鏡の路が証明してる! お願い、今はそこに立たせて!」




この時、シャンディアは耳を澄ませた。頭上で降り立ったビクターとジェドの足場から、数多くの幸せに満ちた声や音が海に伝わり、胸を震わせてくる。

その震えは次第に涙に変わると、鏡の双眼に輝かしい大海原の景色が浮かんだ。




「泣かないで。もう、大丈夫だから」



“大丈夫だから”




シャンディアは眼を見張ると、鏡の涙を流しながらフィオを抱き締める。




 もう2度と聞こえない先代の声が、フィオの言葉と重なった。

触れ合う肌は同じ様に冷たいのだが、そこから伝わるのは温かい心だ。

髪を撫でてくる手の動きに息が震え、大粒の涙に喜びと深い悲しみが混ざり合う。




 大いなる存在の死を、そう容易く受け入れられた者はいない。

人間に向かっていく先代の決断を恐れ、止めようとした。

その際に告げられたのが、人間から学んできたその言葉だった。




「オルガ様……」




小さな子どもの様に泣くシャンディアを、フィオは強く抱き締め返す。

この時、母に縋ろうと必死になっていたシャンが、腕の中で悲しむシャンディアに重なっていく。




 母は、父と自分の目の前で水と化し、砂に染みていった。

ミラー族は、ただ先代オルガを失った事を悲しんでいるのではない。

彼等はこの悲しみを、どこへも向ける事ができずにここまできたのだ。




「大丈夫。今度こそ、全部大事にする。

貴方達の気持ちも、皆でね。

さぁ手伝って、もうすぐ太陽が見えるわ」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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