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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
101/154

(2)




 シェナは海面まで下り、走り続けていると、複数の銀の輝きが近付いてきた。

現れたのはミラー族達で、彼等は島を指差し、シェナに何かを訴えると姿を消してしまう。




 シェナは潜った彼等を目だけで追うと、漁船の真下に潜っていくのが見えた。

途端、漁船が底から押し進められていく。

急な速度上昇に、漁船内の皆やシェナは目を剥いた。




「シェナ、まさか島に引き返そうって!?」



「冗談じゃないわ!

こっちはありったけのもん積んで、何もかも開け放つつもりでいんのよ!?」




シェナは声を張る仲間に頷くと、船尾を目指して宙を斜め上に走る。

彼女の意思に沿って伸びる鏡の路は、漁船内の皆の頭上に煌びやかなアーチを描き、越えていく。

この時、鏡の路に映し出される多くの人々の笑顔や笑い声、また、音楽までもが降り注いだ。




 シェナは船尾に辿り着くと、そこにしがみ付き、息を大きく吸い込む。




「止まってーっ!」




願いは喉を燃やす様に金とオレンジの光に変わる。

皮膚を這って根になるそれらは、顔と肩にかけて滑らかに巡って消えた。

同時に、強い向かい風が漁船の進行を妨げていく。




 漁船の底のミラー族達が事態に慌てて飛び出し、シェナを仰ぎ見る。




「人手はいくらでもいるわ!

この人達は強い。最後まで戦える!」




彼女の力強い声に、ミラー族は顔を強張らせ、小刻みに首を横に振り続ける。

人々のこれ以上の接近を許さんとする様に、再び潜ろうとするのだが、シェナはそれに抗う様に船尾に強くしがみ付くと、力んだ際に漏れた息で再び向かい風を起こした。




「あんた達に頼みがある! いいの!?

これを断ったら、大事な筆頭様を失うって事よ!」




ミラー族は眉を寄せ、互いを見合う。

漁船の皆は武器を掲げ、麓で停滞する彼等に向かって声を上げた。




「君達だけに守らせたりはしない!

この子達は、俺達の子でもある!」




ライフルのストックを船縁に叩きつけたグリフィンが吠え飛ばした。




「俺達が魔人じゃねぇから無理だって?

決めつけるな! ぶつかるための身体が、まだ残ってんだよ!」




全身に痛々しい怪我を負っているカイルが大きく身を乗り出して怒鳴る。




「勘違いしてんな、お魚さんよ!

戦場に飛び込んでく子どもを黙って見てるほど、人間腐っちゃいねぇ!」




グレンの怒号が飛んだ時、後方から他の仲間の勇ましい声が次々と押し寄せた。

ミラー族はそれに暫し怯むと、漁船に触れていた手を離す。




「あたし達を連れていきなさい!」




真上からのシェナの指示に、ミラー族は鏡の双眼を瞬かせる。

そこに反射するのは、彼女の喉から煌々と灯るオレンジがかった金の光だ。

この場に穏やかな風を吹かせ、漁船と波を安定させている。

風と声に向き合ったミラー族は、シェナや人々を暫し見つめた後、そっと頷くと、術を編み始めた。




 シェナはコアに目を尖らせる。

そのすばしっこい移動を相手にする他の神々や、宙を駆ける3人が手古摺っていた。

だが、コアは確実に弱っている。

この鏡の路と攻撃が合わさる事で止められるだろう。

否、必ず止めてみせると、喉は光の火に変わる。




「接近するわよ! チャンスは1度きり!

合図をよく聞くのね!」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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