(1)
伸びた足場の先端に掬い上げられた4人は、呆気に取られながら立ち上がると、仕組みを見回す。
1歩、また1歩と恐る恐る進めば、その動きに従って足場が導く様に伸びた。
ジェドは試しにその場から飛び降りてみると、元居た足場がなだらかに崩れ落ち、新たな足場が身体を受け止める様に追いついた。
見ていたビクターは、進みたい方向に行けるのだと分かると、坂を上る様に斜め上に進んでみる。
足場はその意思に従い、彼が思うままに宙を上らせていった。
ミラー族や精霊達は声を失くしたまま4人を見つめる。
その下には、シャンの力と海からの反射光によって傷が癒えた海洋生物、そして竜が集まっていた。
力が漲った彼等は眼光を鋭く灯し、コアを睨んでは武器の音と威嚇の声を重ね、攻撃を放つ構えを取る。
コアは目が眩みながらも、悔いと怒りに身震いしては両腕を広げる。
淡い紫の輪郭が灯った時、身体が僅かに浮上すると、海面を移動しにかかった。
「ふーん。おもしろいじゃない。
さっさとやっちゃうわよ!」
シェナが真っ先に駆け出すと、ジェドはナイフを、フィオは槍を抜いて後に続いた。
仰ぎ見るミラー族や精霊達もまた、彼等と共に前進する。
ビクターは先に攻める3人を見ていたところ、抜いたピストルに視線を落とす。
鏡の表面には、左半顔から黒い陽炎を薄く揺らし、水色の眼光を放つ自分が映っていた。
この姿を恐れる必要はないと、身体がよく分かっている様だ。
黒い陽炎が軸になるお陰で、安心して身体を支えていられる。
また、この力で決着をつけられるという確信すら湧いてきた。
(勝って、終わらせるっ……もう決まってる事だっ!)
熱く打ち鳴らす鼓動に押されて鏡の足場を蹴ると、前傾になる。
ビクターは、空中を上下左右に緩やかに蛇行しながら走り抜けた。
まるで一心同体の足場は、コアを目指して突き進む路だ。
ビクターは、シェナの頭上をあっさり追い越していく。
早々に鏡の路の要領を得た彼は、助走をつけては跳躍を繰り返し、足場は無数に渡って伸びては消えてを繰り返す。
跳ねた先での着地も、足場が息を合わせる様に追いついてくる。
「早くしろシェナ! 置いてくぞ!」
「うるさいわねっ!」
余裕の笑みを浮かべるビクターは、前方を低空飛行するコアに向くと、光る目を凝らして更に追い上げていく。
この時、シェナは立ち止まると漁船を振り向いた。
コアを遠ざけられている事で被害が治まったものの、それは一時的かもしれない。
彼女は踵を返すと、ビクターを真似て跳躍を繰り返し、足場の位置を変えながら漁船に戻っていく。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非