カビてたもの
父のお葬式はザーザー降りの雨だった。
作ったばかりの喪服が雨に汚れて、うんざりしていた。
何度も着るものじゃないし、3年前の高校の制服を着るには歳を取りすぎていたし。
ガラス細工のような繊細の心の父親は、いちいち私の言葉に右往左往していた。
心が弱いとは思っていたけど、まさか自分で死ぬとは思わなかった。
父の自室は本にあふれていた。
大きな本棚の隅っこの段に、きれいな箱が置かれていた。
開けてみると、私が子供の頃に贈った肩たたき券と、キャバクラの割引券が入っていた。
「陽子ー! ごはんよ! なにしてるの?」
「あぁ、ちょっとお父さんの部屋のカビてたもの捨ててただけ」




