表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/42

23話 ゆっくりした・・・かった

何度も訪れているサードゥの街。だが今回は今までとは状況が違う。街に俺達を狙うものがいる可能性があるからだ。


「あの時やっぱり無理にでも追うべきだったのかなぁ」


「流石にあの状況で全員逃がさないってのは難しかったし今更言っても仕方ないわ」


俺達はいつものように宿で今後の予定について話し合う。


「これからは街へ行くのも慎重にしましょう。おそらく今は情報が回り切っていないでしょうからまだそこまで警戒しなくてもいいけれどあと数日もすれば確実に私達の行動を監視されるでしょう。そうなる前に準備をしないとね」


「俺の料理を食べる機会が増えるってわけだな」


「不味いの出したら怒っちゃうんだからね」


「2人とも・・・まぁいいわ。明日にはここを出るからそれまでに2人で色々と買い物をしてきなさい。買い物はここにまとめておいたから、あと各々で欲しいものあれば好きなようにして。私はいつも通りここにいるから」


「おう、気をつけてな」


「マリー様、すぐ戻りますんで待っててください!」


俺達は買い出しのために宿を後にする。市場まで特に変わったことはなかったのだがやたらと周囲が気になる。


おそらく安全、という中途半端な状態に合わせた警戒度をできるほど器用な人間ではない。それが遊びの範疇で収まっているならそうではないが命がかかっている状態だからだ。


サラの方を見ると彼女も同じ様だ。周りは人混みのためいつ狙われるかわからない。この緊張感は実際に体験してみなければわからない。精神衛生的にも今の状況で街に居続けるのは不可能だ。


そんな中でゆっくりと買い物などできるはずもなく足早に宿へと戻る。


「ふぅ、安心できる空間に戻ってこれた。追われる立場になるってのがどれだけ辛いことか。よくわかったよ」


部屋の扉に手をかけた俺は違和感を感じる。鍵がかかっているはずの扉が開いたからだ。


「サラ、誰かが扉を開けたようだ。戦闘が始まるかもしれないから準備してくれ」


「言われなくてももうしてる。私の言うタイミングで突入して・・・今よ」


彼女の合図と同時に部屋へ突入する。しかし、部屋は荒らされていたが誰もいなかった。


俺は魔石を取り出し、王女の収納魔法を発動させる。万が一王女がいなければ大変なことになる。どきどきしながら異空間を除いてみると王女がいたので一安心する。


「何かあったようだな。わかっている範囲で教えてくれ」


「貴方達が出て行ってしばらくした後、複数の足音がこの部屋に向かってきたわ。魔法で扉を開けにくくしていたけど向こうにも魔法使いがいたみたいで開けられてしまったの。そのタイミングで私は収納魔法を使って逃げたからそこから先はよくわからないの」


「なるほど、マリー様の休息の時間を奪う輩どもめ。この私が地の果てまで追いかけてやるんだからね」


俺達は荒らされた部屋を調べる。幸いなことに物を置いていたわけではなかったので盗まれるものはなかった。だが、今ならまだ安全という俺達の予想は完全に外れてしまった。


「流石にこのまま泊まるってわけにはいかないよなぁ。それともここに入ってきた奴らがどこにいるのか分かったりするのか?」


「流石にそれは無理ね。わかったとしても他にも私達を狙うものがいる可能性がある以上、この街でゆっくりするのは危険だわ。今すぐにでも街を出ましょう。追手が来ない様にどうにか出る方法を考えないと・・・」


「そうねぇ、パッと見た感じ見張られているようには見えないけど何かしらの手段で私達を捉えているのかもね。ちょっと試してみましょうか」


「と言っても具体的にどうするんだ?こっちが適当に動いてそれに反応する奴を探すんだろうけどそんな簡単にいけるか?」


「おそらく今この街にいる追手は私とユウタしかいないと思っているはず。マリー様というか仮面の女がどこにいるか血眼になって探しているはずよ。但し、街の中にはいないと思っている。理由はこの街に入るときに衛兵がすべての顔を確認するから仮面をつけたままでは入れないし私達は2人で街へと入った。敵はおそらくこの情報をどこからか手に入れて私達の足取りを追って宿を見つけた。今回はそれを利用するの」


「私が貴方達2人を追っている者をさらに追えばいいのね。おそらく部屋を荒らされたことに対するこちらの出方をうかがっているのでしょう。貴方達に意識が向いている間に私がそいつらに認識疎外の魔法をこっそり撃って上手くいったらこの街を出る。こういうことかしら?」


「流石マリー様。私のことはお見通し・・・ってわけね」


「ふざけてないで。これには1つ問題があるわ。もちろん貴方もわかっているでしょうけど。私の存在に気付かれて狙われた時もっと面倒になるってことなんだけどこの時どうするかをちゃんと考えてないならこの作戦は却下ね」


情報戦という観点で言えば町に王女はいないはずという手札はまだ晒すべきではない。存在しない敵を探し続けさせることにリソースを割かせ続けたほうがこちらとしては楽だからである。


「うーん、そこまでは考えてませんでした。でも私達の居場所が分かってるのに直接は何もしてこない辺り向こうはこちらの場所を把握するのが精々というところでしょう?それならちょっと荒っぽいけど騒ぎを起こして人混みに紛れてしまえばしばらく向こうは何もできなくなりそうじゃない?これならどうでしょう」


「そうねぇ、その役を貴方達と離れた場所で私がすればいいのかしら。騒ぎを起こした後すぐに異空間に逃げて騒ぎに乗じて街を出る。やってること完全にテロみたいなもんだけど割と良さそうね。この件が全て終わった時には謝れば事情が事情なだけに許してもらえるはずでしょう」


「後はマリー様を宿の外のどこかで呼び出して私達と別れればいいのね。そうと決まれば実行するけどいい?」


「まぁマリーのことだから上手く被害のでないようにするんだろうけど・・・どのタイミングで仕掛けるか俺達にはわからないから一応決め事をしよう。もし何らかの原因で騒ぎを起こせなくなったらすぐに異空間に逃げる。俺達は騒ぎが起きなかった場合別れてから1時間で呼び出す。騒ぎを起こせたら周囲の安全が確保できた時点で呼び出す。これでいいか?」


「えぇ、それでいいわ。では早速実行に移しましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ