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永遠の素晴らしい贈り物  作者: 午後の時計屋
1/1

第一話 2260年






『世界中の沢山の方の中からあなたが選ばれました!

厳正な審査の結果です。さぁ、あなたも”ラプレス”へ!! L・L社』



〜これからラプレスに行かれる方へ〜


1:"移住者"に選ばれた方は、(食料)(住まい)(雇用)を提供します!

2:皆さんが手を取り合って楽しく過ごせるよう我々も全力でサポート致します!

3:ゲートをくぐる為にワクチンを接種して頂きます。

4:ワクチン適性検査は、予め登録頂いているDNA情報を使って行っておりますのでご安心ください。

5:厳正なる査定の上で選ばせて頂いております。その為、ご家族・ご友人と別々に入っていただく場合もありますのでその際はご了承下さい。

6:規律、契約を違反した際の身の保障は致しません。

7:ゲートは一方通行ですので地球には戻って来れませんが、必ず世界中の皆様が行けるよう努めてまいります。

8:必ず係員の指示に従ってください。


 

L・L社




─── ミーンミーンミーン ───



”セミ”の声がかなり大きく鳴り響いている。自然生物省、通称『自生省』という新たな組織がこのセミ達を造った。

ここの年寄り達が、「昔はもっと虫が鳴いていた!」だの、「よくバッタやコオロギを捕まえて歩いた!」だの言って、昔に縋って(すがって)造ったのが機械の虫だ。種類はかなり豊富で四季に合わせて活動する。アリやチョウといった、日常生活でよく目にするものからクモやムカデ、ゲジゲジなども数多く存在する。しまいには“G”までいるという噂だ。見た目は“ほぼ本物”らしい。・・・『らしい』と言うのは、実際に生きている虫を一般の人は見たことがないからだ。

虫はある『一定の場所』へ行かなければ見ることが出来ない。増えすぎてしまった虫を追いやって隔離する。そうしなければ人間が虫に負けてしまうのだそう。

だが、虫を駆除、隔離するために使った薬が植物や他の動物、そして人間にも有害なもので、どんどんその命を奪っていった。その結果人間も住める場所を追いやられることとなった。人間とは、いつまでも学ばない生き物なのだ。

──今の人間が暮らしていける場所は、かつての100分の1にまで減ってしまった。これでは全員が暮らすことは出来ない。そこに目を付けたのが『ラッキー・ライフ社』という大企業だ。この『ラッキー・ライフ社』は国を挙げてのプロジェクトに幾度も参加しており、今回もその一つなのだろう。大々的に広告されている。


【EFG.プロジェクトに是非参加を!皆様の生活をお守り致します。ゲートをくぐって楽園へ! L・L社】


『EFG.プロジェクト』というのは、(Eternal Fantastic Gift. "永遠の素晴らしい贈り物を")という企業理念のもとに発足されたプロジェクトで、名前もそのまま単語の頭文字を取って名付けられた。



ゲートをくぐるには”ワクチン”と呼ばれる薬を打たなければいけない。ゲートの向こう側の世界に身体を馴染ませる為のもので、そうしないと体細胞が持たないのだそう。

ゲートを通過することが出来る『移住者』は、ラッキー・ライフ社が全世界から厳正なワクチン適性調査を行った上で選ばれるらしい。


ここまで長々と話してしまったが、俺は『自生省』の職員ではないし『ラッキー・ライフ社』の社員でもない。バイトで、ラッキー・ライフ社が作った工場施設でほぼ休憩無しで部品等をひたすらに作る仕事をしている。都市伝説とか陰謀論が好きで、よくネットで調べている。

このEFP.プロジェクトには黒い噂が絶えず、見ていてとても面白いのだ。

政治家達にとって都合の悪い人達を消す為だとか、人体実験だとか。しまいには宇宙人に売られているなんてものもある。

だが大多数の人はラッキー・ライフ社を、地球から救い出してくれる神として崇めているのだ。




「おーい幸市(こういち)、聞こえてるかぁ?」

「、、ん?」

「何ボーッとしてんだよ、、ほらそのパーツ終わったら次こっち手伝ってくれ」

「おぉ!悪い悪い!」


────仕事終わり。ロッカールームで着替え中。


「全く、ちゃんと寝てるのかぁ?また都市伝説系の動画みて夜更かししてたんだろ?」

「さすが和輝(かずき)。もう眠たくて眠たくて仕方がないわ!」と幸市は笑って続けた。

「そうそう最近になって気になる噂が出始めてさ。。。」

「ん?気になる噂?」

「そう。。。知りたい?」

「、、知りたいもなんも、そんな言い方したら気になるだろ」

「わかった、、誰にも秘密だぞ?」


「わかったって。なんだよ、早く言えよ」


「来月から、、、ここの給料上がるってよぉぉお!!!」


ボフッ


「痛っ?!なんでパンチしたんだよ今!」

「都市伝説の話かと思ったわ!」

「え?ビックニュースじゃない?給料アップ」

「もう知ってるよそれは。先週あたりに入口の掲示板に貼ってあったよ」

「えぇ?!そうだったのか。めちゃくちゃ知らなかった」

「あそこはチェックしておかないと。シフトも張り出されてるし」

「そうだね、、見るようにするよ、、」



ピンポンパンポーン



和輝のスマホが突然鳴った。


「?? 何だこの通知音」





画面を見ると、メールの差出人はラッキー・ライフ社だった。




『世界中の沢山の方の中からあなたが選ばれました!

厳正な審査の結果ですので是非ご参加ください!

EFG.』




「え、、!来た、、!すごい、、本当に来た!!」と和輝が興奮気味になったのを感じた。


「えぇ?!どれ見せて! !、、本当だ、、、どうするの?行くの?」


「どうするって、、行くよ!!行くに決まってんじゃん!!」


「まじ?」


「おう、、すげぇ、、!やった、、!!」


「一人で行くの?家族は?お父さんやお母さんとかさ、みんなも選ばれたのか聞いてみた方がいいんじゃないか?」


「確かに!きっと選ばれてるはず!!電話してみる!!」


和輝は部屋を出ていった


─5分後─


ガチャ


「どうだった?」幸市が聞いた。


和輝は遠くを見つめたまま首を横に振っていた


「そうか、、まぁ、こういう事も多いって聞くからな、、」


「家帰ってから、家族で話し合う、、詩織は『お兄ちゃんの為に行って欲しい』って、、でも俺だけ助かって家族を見捨てるような事出来ないし、、どうしよう、、」


和輝は泣きそうな声だった。


「そっか、、そりゃそうだよな、、」


「いつかこの場所もガスに満たされて住めなくなるって政府が言ってたけど、いつだよ!いつなんだよ!なんでこんな思いをしなきゃならないんだよ!」


「毒ガスはあと100年くらいで地表を覆い尽くすらしいよ。そう都市で、、」


「都市伝説はもういいよ!!、、そんな噂話!信じられるか!!俺は行かない!行けない!!この話は終わりだ!」


「和輝!」


バタン!


和輝は勢いよくドアを閉めて出ていった


──次の日──




やけに工場の入口付近がざわざわしている。


「おはようございまーす」


「おお!幸市!見てみろ!斎藤(和輝)行ったんだってな!”ラプレス”」

「え?、、ちょっ、すみませんっ!見せてください!」


工場の掲示板には、『ラプレス移住者 斎藤和輝さん おめでとうございます! 出発済み。』 と書かれた紙が一番上に貼ってあった。


、、出発済み?!


幸市は急いで和輝に電話をかける。


『おかけになった電話番号は、電波の届かないところにあるか、電源が入っておりません』


何度かけても繋がらない。


「えぇ、、?昨日あんなに、、家族も一緒に行けたのかな」

少し考え込んだ。

「そうだ!」


幸市はエレベーターで工場長のもとへと向かった。


「失礼します!」


「ん?なんだどうした、作業員?なんでここまで来てんだ」


「あの、違うんです。斎藤和輝の事でちょっと聞きたいことが」


「あぁ、ラプレスに選ばれた奴か」


「はい。工場長なら何か知っているかなと思いまして」


「なんだ。アイツの知り合いか。あぁ、今朝来たよ」


「! その時に何か言っていませんでしたか?!」


工場長は笑顔になって言った。


「かなり嬉しそうだったよ。よっぽどラプレスに行きたかったんだな!」


「え、嬉しそうだったんですか?」


「向こうは映像で見る限り楽園のような場所だ。誰でも憧れるだろ。」


「いや、でも、、」

昨日の事を言おうとしたがやめた。


「あの、その時家族は一緒に居ましたか?」


「いや、アイツ一人だけだった。だけど、この部屋で話をしたから下で待っていたのかもしれない」


「そうですか、、ありがとうございました」


幸市はエレベーターで1階に降りた。


そのまま和輝の家へ向かった。



━━━━━━━━━━━━━━━


ピンポーン


「こんにちは!森田です!」


ドアが開いた。


「あら、幸市君?どうしたの?」


和輝の母が出てきた。


「あれ?、、あの、和輝君いますか?」


「和輝は、もう仕事に行ったよ」


?!


もしかして家族に言ってない、、?


「あの、昨日和輝何か言ってませんでしたか?メールがどうのこうのとか」


「あぁ、ラッキー・ライフ社のメール?ラプレスに行く為の。昨日話したわ」


「そうなんですね。で行く事に決めたということですか。」


「いやいや、本人は行きたくないって。私もお父さんも詩織も、和輝の為を思うと行って欲しいと思うけど、一度行ったら戻って来れないじゃない?もし私達がワクチン適性検査で引っかかって行けなかったらもう会えないってことになってしまうから、、だからここは本人の意思を尊重しようって事になったの」


「え、じゃあ、、」


「和輝はラプレス行きを断ったのよ」


幸市は状況がうまく掴めなかった。


昨日の和輝の様子。

工場の掲示板の張り紙。

和輝の家族の証言。


矛盾している、、


どういう事だ?


幸市は工場の張り紙の事を慎重に話した。


「え?、、え?」

和輝の母は戸惑った顔をしていた。

当たり前だ。俺だって何がなんだかわからない。


和輝の母は、自分のポケットからスマホを取り出し、和輝に電話をかけようとしていた。


『おかけになった電話番号は、電波の届かないところにあるか、電源が入っておりません


プープープー

プープープー』


やはり繋がらないようだった。



「え、ねぇ!詩織?! お兄ちゃんの事何か知ってる?!」


突然和輝の母は家の中に走り出した。


「あ、あのっ!」


思わず幸市も家の中に入っていく。


リビングには、パーカーに下が短パン姿の完全部屋着の詩織ちゃんがいた。


「お兄ちゃん?、、え!幸市くん?!なに、どうしたの?!」


「和輝が電話に出ないのよ!」


「だってお兄ちゃん仕事中でしょ?」

眉毛をひそめて詩織ちゃんが言う。



「それが幸市君から聞いたんだけど、お兄ちゃん”ラプレス”に行っちゃったかもしれないんだって、、」


和輝のお母さんの声は震えていた。

息子がよく分からない状況になって情緒が少し不安定になってきた様な気がした。


「え?!昨日行かないって言ってなかった? え?行ったの、、?! どういうこと、、?幸市くん!本当なんですか?!」


「工場に張り紙があったし、工場長にも聞いたんだ」


「家族に言わないで、職場の人には言ってたってどういう事、、?」


「いや、職場の人にも言ってないと思う。言ったのは工場長にだけ、、」


なんで工場長には言ったのだろう。

ますます分からなくなってきた。



すると





ピンポンパンポーン





和輝のお母さんのスマホが鳴った。

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