第二次日本海海戦5
航空護衛艦あまぎは護衛艦一隻を伴い、艦隊から離脱した。僕らの戦力は、
即応集団 超ド級護衛艦やまと、護衛艦 あきづき、すずつき、はつづき
第3護衛隊群 護衛艦なつづき しもつき、ふゆつき、はるつき、よいづき
戦艦1駆逐艦8からなる艦隊だ。それに僕の海上魔法兵5人。
「加賀、大和、艦隊前方に展開、羽黒、ユウ、ユキの三人は更に前方に展開して敵駆逐艦隊撃破を目指せ!」
僕は魔法通信で、5人の海上魔法兵に連絡した。海上を40ノットで疾走する彼女らを初めて見る隊員もいるだろう。彼女らはソロモンの魔女と呼ばれている。
「葵君、先生、敵艦隊見つけちゃった。方位11時、距離100浬」
「ありがとう加賀先生、帰ったら、お仕置きしてあげるね」
「あ、ありがとう、葵君」
「…駄目な先生だな。先生なのに…」
「まあっ、素敵! まっ、いいよね」
ホントにいたらホントに駄目な先生だな…
しかし、距離は未だあるな。先制攻撃の射程は距離5万メートルだ。一番射程が長いのが空母の加賀先生、次に戦艦の大和、それから順次重巡 羽黒、軽巡 ユウ、駆逐艦 ユキとなる。
「対空電探に反応したわよ葵君!」
「大和、どういう事?」
「おそらく対艦墳進弾! その数、8」
「なんだって!?」
メインヒロインという設定の僕の使い魔の中の底辺に位置する大和を少し不憫に思えて思考が集中できない。だって、大和は一番普通で、個性が薄いんだもん!
「阿部司令、敵艦よりミサイルが発射された模様です」
「な、なんだって!? 撃墜不能じゃないか?」
「いえ、僕に任せて下さい」
レイテ沖海戦、戦後、散々ガチャを回して手に入れた装備。イージス武器システム ベースラインJ7、対空ミサイルSM-3、近接対空ミサイルRIM-116、近接防御システムファランクスCIWS、ユウとユキはイージスシステムが搭載できないが、射撃指揮システムFCS-3(護衛艦あきづき級のヤツ)と対空ミサイルのESSMを装備した。これは秘密だけど、大和と羽黒には巡航ミサイルトマフォーク(核弾頭)を搭載している。これは使えない装備だけどね。
「大和、羽黒、対空ミサイルで敵の対艦ミサイルを撃墜して!?」
「大丈夫よ。葵君、イージスBMD5.1 システムは搭載済よ」
「わ、忘れた。 BMD5.1忘れちゃった…」
何とまさかのメインヒロインの失態である。
「大和、帰ってきたら、お仕置きね…」
「は、はい。ごめんなさい」
「あ、葵君、できればお姉ちゃんにもお仕置き頂戴」
「羽黒はご褒美に言葉責めをしてあげる。ホント僕の事しか見てない、いけないお姉さんだ…」
「はぁぁ、素敵!」
何処が素敵なんだろうか? それに比べて大和のなんと普通な事か? でも、普通過ぎて全然目だたないんだよね。だから、どうも大和の事は忘れそうになる。
羽黒と思われる位置から次々と垂直にミサイルが上がる。
「ユウ、ユキ、ミサイルが艦隊上空に近づいたら、近接対空ミサイルRIM-116で撃破して!」
「わかったわ。葵君、幼馴染としてはここでいい処を見せてお仕置きしてもらわなきゃ!」
「…」
ユキ、だから喋れよ。それとユウにはご褒美をあげておかないと、
「ユウ、無事帰ってきたら、お尻を叩いてあげるからね」
「ひゃ、ひゃあああああああ、わ、私、いいの? そんな好待遇で? 私、幼馴染よ?」
「だから、なんで幼馴染はそんなに位置低いの? ユウはもう少し、自信をもってよ!」
思わずユウに言ってしまった。本当にユウは自己評価が低い。
羽黒が撃ち漏らしたミサイルが3発やまとを襲う。しかし、ユウとユキから発射された近接対空ミサイルがたちまち撃ち落とす。
「勝ったな!」
僕は思わず呟いた。敵艦隊の奥の手は封じた。敵艦隊はそれでも進んで来るだろう。あちらは戦艦2隻、こちらは1隻なのだから。
「加賀先生、艦載機で敵艦隊の小型艦を先に叩いて」
「もちろんよ、加賀先生に任せて」
加賀先生から妖精が乗るF35が弓矢から顕現して飛んでいく。僕のCICには次々と撃破される、敵前衛艦隊が見られた。
「良し、大和、出番だよ。電探射撃準備、射程内に入り次第、射撃開始」
「もちろんよ。葵君、お仕置きは…手加減してね」
はっと驚く、何て普通の反応だろうか? レイだと、より激しいお仕置きを要求するか、自分がお仕置きをするかどちらかだから、大和の普通の女の子の反応は新鮮だ。えっ? 大和って普通が個性なの?
ちょっと、頭の中に比較図が思い浮かぶ。レイ=表面状ドSで真性ド変態のドMvs大和=表面状普通で奥は少しドM。大和の方がいいよね? レイは馬鹿だし…プルプルと頭を振って妄想を振り払。僕はレイを見捨てたりはしない。例え残念極まるド変態でも、一番愛しているのだ。例え、見た目だけで一番馬鹿でも、僕は一番レイを愛しているのだ。
「葵君、大和の射程圏内に敵艦隊が入ったわ。攻撃開始するわ」
「頼む、大和。あと、帰ったらご褒美にキスしてあげるね」
「ひゃ、ひゃあああああああぁあああああ」
大和が壊れた。普通の反応ではないが、レイやユウと違ってキスで喜こんでくれるのだなんて、普通に嬉しい。レイだと、最低首輪にリードつけて夜の公園でお散歩コースだ。
大和の砲撃が始まる。曳光弾が遠方の敵艦隊に降り注ぐ。未だ目視で敵艦隊を補足できない。電探射撃だからできる芸当だ。そして、やまとの射撃も始まった。
「全艦、砲雷激戦用意! 耐ショック、耐閃光防御、急げ!」
「SC3レーダー敵艦補足、追尾装置正常に作動。射撃開始まで後10秒」
「A砲塔からC砲塔まで揚弾終了。射撃開始、何時でも可能です」
「やまと射程まで後3、2、1、0、ファイヤ!」
激しい振動と共に大和の主砲が火を噴く。そしてようやく敵艦が水平線上に姿を現した。優美な曲線を持つ戦艦。その名は武蔵、現在は解放という共産国家らしい名前になっているが、武蔵だ。そして、武骨なスタイルのソビエトスキー型戦艦、この船もまた18インチ砲戦艦。大和級と同じだ。
「敵弾、来ます!?」
砲術長の怒鳴り声と共に、敵艦隊の砲弾がやまと周辺に着弾する。200m程離れた処だが、水柱は18柱にも及ぶ。
「豊原の艦隊は、統制レーダー射撃ができる様だな」
「おそらくそうです。あんなに近くに2隻の戦艦の着弾が集中する筈がありません」
僕は自分の考えを言った。豊原の戦艦2隻の砲弾はほぼ同じ場所に落ちている。これは同じ射撃緒言を共有して射撃している証拠だ。つまり、当たる確率は2倍になる。
何度目かの射撃で、遂に命中弾を得る。
「命中弾、出ました、直撃です」
「敵艦、速度衰えず、主砲射撃再開しました」
「敵も同じやまと級、それに18インチ砲同士か…」
阿部司令がうなる。やまとの主砲をくらってなおも反撃可能なのは同じ18インチ砲同士のみ。
「敵弾来ます!」
再度、砲術長が怒鳴る。そして、激しい着弾音と衝撃。やまとは同時に3発の46cm砲弾を受けた。しかし、
「被害状況、艦尾カタパルト損壊、A砲塔及び艦橋に着弾するも戦闘に支障なし」
やまとは3発もの命中弾を受けても尚も戦闘に支障はない。そして、その時、
ごぉおおおおおおおおんという爆発音が聞こえた。ソビエトスキー戦艦に僕の魔法兵の大和の弾丸が命中したらしい、しかし、
「敵ソビエトスキー戦艦被弾するも戦闘行動に支障ない模様」
駄目だ。大和の主砲の直撃を受けても尚、反撃を続けるのだなんて、僕は決意した。
「阿部司令。僕の魔法兵に対艦ミサイルを使わせます」
「何? ミサイルを装備しているのか?」
「はい、黙っていてすいません。奥の手です。数に限りがあるので、ご理解ください」
阿部司令は黙って頷く。僕は魔法通信を大和達に送った。
「大和、羽黒、ユウ、ユキ、兵装を17式艦対艦誘導弾に変更、全て敵戦艦に集中!」
「「「「「了解!」」」」」
前方の4人から黒煙があがる、ミサイルが発射されたのだ。四人は大和が16発、他の子が各8発装備している。同時に発射できるのは1発だけだ。
「敵艦、火災発生した模様!」
僕の魔法兵のミサイルが着弾するにつれて敵戦艦の動きが鈍くなる。
「敵艦、速度低下、火災更に激しくなった模様」
いいぞ、この調子だと、その時、
ごぉおおおおおおおおん
という轟音と共にソビエトスキー級戦艦が大きな火を噴いた。おそらく弾薬庫に火が回ったのだろう。次々と爆発が起きていく、そして、更に、
「命中!」
やまとの主砲もまた、戦闘艦の武蔵に直撃弾を与えた。そして、
ごぉおおおおおおおおん
再び轟音をあげて、武蔵は激しい爆発を引き起こした。弾薬庫に直撃弾がはいったのかもしれない。やまと級は副砲の位置の装甲が薄い、そこに当たれば、艦内で砲弾が激しく飛び回る事になる。おそらく武蔵はやまとの主砲弾を全部副砲の位置に受けたのだ。
更にやまとの命中弾を受けて、爆発大炎上し、二隻の戦艦は日本海に沈んで行った。最後は二隻とも簡単に沈んでしまった。
こうして、第二次日本海海戦は終わった。
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