第二次日本海海戦4
僕達魔法小隊は北朝鮮からの伏兵を撃破し、豊原の艦隊の空母を叩いた。これで引き下がるかと思ったが、敵艦隊は尚も進撃が続いた。
「どう思う? 不知火君?」
「わかりません。僕達が敵艦隊の空母を叩いた筈です。制空権のないなかで、戦艦を始めとする水上打撃艦隊が行動するのだなんてあり得ない話です」
「とはっても、進撃を続ける以上撃破するよりないか?」
「それはそれ以外に手はないと思います」
僕は疑問に思った。あり得ない。何故豊原の艦隊は引き返さない? 自殺行為だ。例え中型空母一隻でも、戦艦だけでは対抗できる筈がない。
「第一次攻撃隊発艦準備完了しました」
「直ちに出撃を許可する!」
飛行甲板からは震電と流星が発艦していく。総数24機だ。カタパルトを使用する事でようやく流星という大型機を運用できるが、無ければ運用不可能だっただろう。搭載はできても発艦ができない。
艦隊上空で空中集合を終えた攻撃隊は一路豊原の艦隊を目指した。しかし、
「攻撃隊より入電!」
「どうした?」
「攻撃隊に対空憤進弾の攻撃が続いています。なお、憤進弾は回避しても追尾してくる模様!」
「ミサイルだ!?」
僕は思わず叫んだ。そうか、豊原の艦隊が空母を失っても引き下がらなかった訳、それは対空戦に自信があったからだろうか?
「艦長、攻撃隊指揮官に攻撃隊の退却を進言してください」
「わかった。だが、聞き入れてくれるかどうかはわからん」
戦後、航空母艦の航空隊と艦は別組織となった。指揮系統が違う。これは航空隊が損耗しても、違う航空隊の搭載を容易にする為の措置だ。それと指揮を航空攻撃と艦の運用を切り分けて、艦の指揮官の負担を下げる目的もある。米軍は戦後からこうだ。
「駄目だ。あいつら頭に血が上っている。退却しない気だ」
「それでは犠牲が!」
航空隊飛行長の判断に藤沢艦長は歯を強く噛み締める。藤沢艦長も死にたくない派だ。無駄な人命損失は回避したいのだろう。だが、航空隊の指揮権はない。あるのは発着艦の許可を航空隊に出すだけだ。
「最悪を覚悟しよう。戦艦同士の殴り合いが始まるかもしれん」
「ならば、僕はやまとに向かいます」
僕はレイ達を連れて超ド級護衛艦やまとに移乗した。レイ達航空魔法兵が僕や海上魔法兵を大和艦尾の水上機甲板に飛んで連れて行ってくれた。
僕はやまとの乗員に挨拶もそぞろに艦橋に向かった。レイ達は艦尾の水上機甲板に残した。出番が出るまで待機だ。
僕が大和の艦橋に入ると、怒鳴り声が聞こえた。
「誰だ、ここはお前の様の子供が来る処じゃない!」
怒声をかけられた。僕の正体を知らないのだろう。僕は童顔だ。というより、どうも歳をとらないのではないかと思えた。魔法兵と同様に…この世界に来て既に16年以上経過している。僕は既に30歳なのだ。だけど見かけは高校生位にしか見えない。彼が勘違いするのも無理はない。
「待て、彼は不知火2佐だ。我らの秘密兵器だ。丁重にお迎えしろ!」
「感謝します。阿部空将補(少将)」
「こ、この人が不知火2佐! ソ、ソロモンの悪魔!?」
僕の魔法兵は中途半端に有名だ。特にソロモン海での活躍が有名らしく、日米双方からソロモンの悪魔と呼ばれている。戦艦2隻を鋼鉄海峡アイアンボトムサウンドに送り込み、味方艦隊の防空を完全に行い、日米両方から畏怖と敬意を受けていた。電探の威力はそれ程凄いものだった。もっとも、僕の魔法兵が直接戦艦1隻と正規空母1隻を撃沈した事はあまり知られていない。それでもこの評価は如何に電探がありがたいものであったのかがわかる。
「あまぎの攻撃隊はどうなりましたか?」
「壊滅だ。残存機は僅か5機だ。攻撃を敢行したが、艦隊上空に辿りつけたものは半数だ。その上、激しい対空砲火でまともな航空攻撃ができなかったらしい」
「くっ!?」
僕は散っていった航空兵の事を想い、思わず唸ってしまった。彼らは戦後教育された新兵だ。彼らは戦争を知らない世代だったのだ。
「不知火君、君の力を貸してくれ。頼めるか?」
「もちろんです。敵より先に見つけてごらんに入れます」
「いや、直接の艦隊同士の殴り合いにも参加して欲しい。あまぎの攻撃隊から連絡があった。敵艦隊は戦艦2隻を中心とする艦隊だ。戦艦は武蔵の他にもう一隻いる」
「2隻? どういう事ですか? 豊原の戦艦は解放という蹴った糞の悪い名前になった武蔵だけの筈」
「報告ではソビエツキー・ソユーズ級戦艦という事だ」
「まさかソ連から? いや、それは絶対乗員もソ連兵だ」
僕はまさかの艦隊決戦に巻き込まれた。いや、今回巻き込まれてもいい。こちらには本物のやまと、それに魔法兵の大和、航空母艦加賀、重巡洋艦の羽黒もいる。駆逐艦隊の露払いにはユキやユウも活躍するだろう。
僕は魔法通信を開き、魔法兵の大和、加賀、羽黒、夕張、雪風に出撃準備を伝えた。
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