警察予備隊
僕は源田さんと藤沢さんに連れられて、丸の内に到着した。そこにはGHQの本部がある。僕はそこで懐かしい人達に出会えた。
「え、海老名!? 海老名中尉じゃないか?」
「お久しぶりです。不知火大尉、しかし、私は今、少佐になるんですかね?」
「おい、海老名、こんな時にふざけるな」
「いや、今は同じ同僚じゃないですか? 別に私のマネージャーという訳じゃないし」
「お前なぁ、現金なヤツだな。海軍時代の事はもう忘れたのか?」
「どういう事なんですか?」
僕は海老名と藤沢さんの会話の意味が解らず、思わず聞いた。
「私達はフィリピン沖で戦死したと思われたせいで二回級特進だったんですよ。親父に聞いてびっくりしましたよ」
「私も同様だ。実は今、GHQで通訳の仕事をしていてな、上司から警察予備隊の初期メンバーには誰がいいかと相談されたんだ」
「け、警察予備隊?」
おかしい、早すぎる。日本に警察予備隊ができたのは朝鮮戦争が起きた頃、1950年代の筈だ。
「まあ、私達の事務室で話そう。不知火君は長い間監禁されていて世の中がどうなったかわからないだろう? 君の知っている歴史とはずいぶん変わってしまった様だ」
「教えてください。レイテの後、日本はどうなったんですか?」
僕は切迫して言った。知りたい、一体日本はどうなったんだ?
藤沢さんと海老名、そして源田さんはその後の歴史を話してくれた。その後の歴史は僕の知っている歴史と以外と大きく変わらなかった。ただ、タイムスケジュールが1年遅かった。僕がレイテ湾で西村艦隊を救った事で、レイテ湾に西村艦隊と志摩艦隊が突入、輸送船団を蹂躙した。そして米陸軍兵は3万人という途方もない人員を僅か一日で失った。貴重な物資やそれを運ぶ輸送船と同時にだ。米軍は侵攻スケジュールを遅くするしかなかった。だが、その後の歴史は全く同じだった。沖縄戦、硫黄島戦。
だが、かなり違う点があった。終戦が遅れたが、ソ連は僕の知っている史実と同時期、つまり1945年に日本を攻撃してきた。その為、日本軍は中国より撤退、満州、朝鮮半島、樺太(サハリン防衛)に徹した。しかし、資源の枯渇していた日本軍は米軍とも戦っており、次々と玉砕、撤退。樺太、朝鮮半島の半分そして北海道の半分を失った。
満州は中国共産党、蒋介石国民党軍に奪還され満州の全てを失った。その状況に危惧を抱いたのが米軍だった。来るべき新しい第二次大戦後の世界として、米国は共産党を敵視した。そもそも共産国家と資本主義国家及び民主主義がいつまでも仲良くできる訳もなかった。
米国は原子爆弾を青森県大湊(日本海軍基地)と札幌に原子爆弾を落とした。目的はソ連への威嚇だ。それ以上侵攻したら? というメッセージだ。実際、ソ連軍の侵攻はそこで止まった。
が、日本がポツダム宣言を1946年8月14日に受諾し終戦を迎えると、ソ連に占領されていた北海道の半分及び樺太はその1か月後に日本民主主義共和国の設立を宣言した。
ここにきて、米国は日本の重要性を理解した。日本はアジアの共産党国家との最後の砦なのだ。その為、GHQ設立後すぐさま検討されたのが、日本の再軍備だった。日本に傀儡政権を作り、日本を共産国家と戦う橋頭保にしようという作戦だ。
「では、終戦から僅か4か月しか経過していないのに、再軍備を計画しているのですか?」
「その通りだ。私達は通訳だが、その職務上知った。そして、GHQから命じられて適切な人材をピックアップする事になった。不知火君も源田さんもそうだ」
「明日、僕がボスへ不知火さんを紹介しますよ。先ずは警察予備隊で陸軍みたいですけど、おそらく来年には海軍的な組織が設立されると思います」
「僕はまた海軍に配属されるのですか?」
「それは君の意思次第だ。だが、希望してもらえば歓迎されるよ」
僕はしばらく考えたが、結論は直ぐに出た。
「僕だけではなく、僕の魔法兵もお願いしていいですか?」
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