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レイテ沖海戦6

戦いが始まって西村艦隊とオルテンドルフ隊の距離は12000mまで縮まった。残存兵力の敵戦艦3隻はついに反撃を開始した。レーダー射撃だろう。


「うっ!?」


激しい振動と爆音に思わずうめき声が出る。戦艦扶桑に敵命中弾がついに出た様だ。幸い前部主砲塔に命中したらしい。一番装甲が強いところだ。その硬い装甲が命中弾をはじいたらしい。爆発は空中でおきたものの様だ。


「被害しらせ!」


艦長が被害状況を確認する。対艦攻撃に支障はないだろう。速力も変わらない。機銃座などは損傷したと思うが、夜戦なので、対空要員はいない。


「損害状況機銃座3損壊。夜間見張り員一名不明」


「わかった。行方不明者か…運の悪い」


艦長は扶桑勤務が長い、顔見知りが行方不明になったのかもしれない。しかし、今はそれについて話ている場合じゃない。


「いよいよ、敵の反撃が始まったか、つくづく電探というものは便利だ。不知火大尉の魔法兵がいなければ今頃こっちが頭を押さえられていた」


「そもそも、射撃開始が敵の方が先だったかもしれません」


史実ではそうである。扶桑も山城も満足に抵抗などできなかった。多数の魚雷艇、駆逐艦から魚雷を受け満身創痍で敵戦艦と満足の砲撃をかわすことなく一方的に撃破されたのだ。


「夾叉ぁああああああ」


また至近弾だ。扶桑以下4隻の戦艦群は旧式な代わりに練度が高い。次々と面白い様に命中弾を得る。


ごおぉ♪(ノ)’∀`(ヾ)おん


凄まじい轟音が響いた。


「左切れ200m」


更に轟音が響く、


「右寄せ10次」


「下げ1,000次」


「高め600急げ」


「本射開始」


「ちゃくだーん」


ごおぉ♪(ノ)’∀`(ヾ)おん


「なに? 轟沈なのか?」


「いえ、違う様です。轟沈したのは最後尾の6番艦です」


「その様だな、我らが狙っている4番艦は健在の様だ、だが何故最後尾の6番艦が?」


多分ユキかユウだ。彼女らは駆逐艦隊を振り切り戦艦に肉薄、雷撃を行ったのだろう、大和の射撃は少し命中率が悪い様だ。まだレベルが低いせいもあるだろう。先程から命中弾が出ていない。と、思っていたところ、


ごおぉ♪(ノ)’∀`(ヾ)おん


轟音が響き、敵5番艦が大炎上とる。


「今度は5番艦が? どうなっているんだ?」


「おそらく、弾薬庫が爆発したか何かの事故でしょう。いくら何でも轟沈はそう簡単におきません。あるいは味方駆逐艦の雷撃が当たり所が良かったのでしょう」


僕は適当な事を言ってごまかした。僕の魔法小隊が戦艦を3隻も葬ったという事はむしろ秘密にしたい。決戦兵器だなどと言われてレイ達を特攻でもさせられたらかなわん。


敵4番艦と5番艦に次々と命中弾が集まり、火だるまになって、遂に大爆発が起こった。


「こんな死に方だけはしたくないな」


西村司令がそう呟いた。歴史の偶然か本来オルテンドルフ隊の指揮官が呟くはずだった言葉を逆の立場の西村司令が発したのだ。僕は思わず息を呑んだ。そうだ、これからどうなるんだ? 栗田艦隊は既に反転しているだろう。しかし、西村艦隊は無傷だ。扶桑に3発程くらったが、敵も扶桑と同じ14インチ砲戦艦だったらしい。航行にも射撃にも支障がない。


「西村司令、重巡洋艦最上が被弾した模様です」


「何? 最上が? 随分と後ろを狙ったものだな?」


「いえ、どうも魚雷艇の一撃を受けた模様です」


ちっ、全部撃沈できていなかったか?


「そうだな。駆逐艦隊と合流したら、損害を受けた最上を連れて退避してもらおう」


「わかりました。駆逐艦隊の状況を把握します」


しばらく遠方で時々火花が上がる。駆逐艦隊同士と僕の使い魔ユウとユキだろう。時々照明弾が上がる。それから小一時間程で米軍駆逐艦隊は掃討された。魔法小隊が数を1/3にしたとは言え、駆逐艦隊の善戦は著しい。流石帝国海軍の駆逐艦隊だ。


「駆逐艦時雨が艦尾に敵駆逐艦の銃撃を受けてしまった様です。他の艦艇は無傷です」


「そうか、では、時雨に最上を連れていかせよう。それについでだ…」


ついで? 何だ?


「不知火大尉を駆逐艦時雨に移乗させて退避させろ」


「西村司令? どういう事ですか?」


僕は驚いた。つい先ほどまで敵艦隊とやりあっていたのだ。先の事はわからない。電探も無く、このまま先に進むのだなんて自殺行為だ。 それに早朝米軍の輸送船団に突入したとして、帰りは怒りに狂った米艦載機の猛攻を一身に受ける事になる。


「電探もありがたかったが、他の敵戦艦の謎の轟沈は全部不知火大尉の魔法小隊の仕業だろう?」


西村司令は笑っていが、西村司令の目は笑っていなかった。


「しかし、僕が駆逐艦に移乗する為にはこの扶桑をしばらくこの場で停止させる必要があります。それより早く先に進んだ方が良いと思われます」


「君はここで死んでいい人材ではない」


西村司令は僕の目を見据えてそういった。その目は死を決意したからだろうか、強く、厳しいまなざしだ。


「し、しかし、司令?」


「これは命令だ。上にも正式に報告しておく」


僕はこうして、駆逐艦時雨に移乗させられた。


あくる日になっても僕は眠れなかった。僕と魔法兵は全員時雨に移乗して退避した。しかし、戦艦扶桑以下西村艦隊が戻って来る事はなかった。


時に西暦1944年10月23日西村艦隊、志摩艦隊は見事レイテ湾の敵輸送船団を撃破、蹂躙した。敵陸軍の損害は数万規模の戦死者が出て、米軍の侵攻作戦は1年近く遅れるだろう。日本軍の第一機動部隊も玉砕し、空母祥鳳も沈んだ。

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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