レイテ沖海戦2
僕は辞令を受け取とると、直ちに戦艦 扶桑に向かった。
「指揮官の西村中将はどの様な人だろうか?」
僕は突然の移動に戸惑った。新しい上官。それは西村中将への恐れだった。レイテ沖海戦で有名なのが、栗田艦隊の謎の反転だ。すべては栗田中将が戦後何も語らなかったから謎となったのだろう。しかし、実際には栗田中将の判断は正しい。航空機による援護も無く、米軍の輸送船団に突入できるのなだと思う方がおかしい。
実際、レイテには囮の小沢艦隊に引き付けられたハルゼー提督の艦隊の他にも航空母艦はいたのだ。それに、輸送船団に護衛がいない訳がない。
つまり、栗田艦隊が突入していれば犠牲が増えただけだったのだ。有名なオルテンドルフ艦隊は西村艦隊を殲滅した後も十分な徹甲弾を持っており、大和以下三隻の戦艦と言えども、6隻の戦艦に太刀打ち等できる筈もなかっただろう。
そして、西村中将だ。彼は勇敢な武人だろう。彼もわかっていた筈である。全滅するだろうという事が…だが、彼はある意味、作戦の本質を理解していたのだ。レイテ沖海戦の各艦隊への命令とはすなわち玉砕命令だったのだ。作戦とは言えない作戦…それを西村中将だけが実行した。悲劇の司令官とも言われる。しかし、彼もまた、狂気の武人なのだ。ミッドウェー海戦で空母飛龍と運命を共にした山口司令の様に…
「勇気と無謀は違う、それを日本人はわからなくなってしまっている」
僕は一人呟いた。おそらく西村司令はスリガオ海峡に突撃するのだろう。彼は勇敢で忠実な男なのだ。作戦命令事態が狂ったものであるにも関わらず、彼は突撃する。そういう男なのだろう。武人としては立派だ。尊敬の念さえ抱く…だが、僕もそれに運命を共にするとなると話は別だ。この戦いに意味等無い。唯の時間稼ぎだ。だが、一体何の時間稼ぎなのだ? 結局援軍や新戦力等存在しない。これからの戦いで死に行く者はみんな無駄死になのだ。国家が国民を殺していくのだ。玉砕命令や特攻命令で…
ようやく、第二艦隊の停泊地に移動して、戦艦扶桑に乗艦すると、思いがけない早く西村中将に出会えた。
「おお、君があの魔法小隊の不知火大尉か?」
「はい、今日付けで第二戦隊に配属された不知火です。よろしくお願いいたします」
西村中将は僕を値踏みするかの様に見ると、呟いた。
「最後までは連れていけんな」
「!?」
西村司令は既に玉砕命令である事を承知しているのか?
「司令、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だ。君の魔法小隊の威力は聞いている。そして、君は若すぎる。日本の未来の為に君は生き残った方がいいだろうという事だよ」
「まってください! 司令はこの作戦の意味を理解されているのですか?」
西村司令はちょっと困った様な顔をするとこう言った。
「私は軍人なのだよ。先に死んで逝った者に顔向けができない」
「そんな! 玉砕命令だなんて、作戦でもなんでもないではないですか!?」
「それでも、上がやれというなら、私は戦う。死んだ部下に顔向けできんからな」
「西村司令!?」
僕の頬には涙が流れた。悲劇の司令官、彼は最初から死地へ向かうと知っていて向かうのだ。死んだ仲間に顔向けができないという理由で…
「君には期待しているよ。君は航空戦力も水上戦力、両方もっているのだろう?」
「はい、米軍の空襲にも、多少の敵艦隊にでも対抗できます」
西村司令は僕の回答を聞くと満足そうに頷いた。
「少しは米軍にぎゃふんと言わせてやれるかもしれんな」
「僕も及ばずながら!?」
僕はできるだけ、この戦隊を守ろうと考えた。そして、西村艦隊のスリガオ海峡への突入を思いとどまらせ様と思った。西村司令のやろうとしている事は自殺だ。
艦橋で西村司令他上官に挨拶すると僕は自室に戻った。自室には二人の擬人化兵器がいた。僕の使い魔はとうとうフルコンプリートした。中距離攻撃機銀河、戦艦大和の二人だ。二人が僕の自室にいるのは、二人に個室が無いためだ。僕の部屋は4人部屋なのだ。
「帰ってきたの? それにしてもメインヒロインに随分な仕打ちね?」
「個室が無い事? それはごめん。僕の報告が遅れてしまって…」
「そういう事じゃないの! 自分の性癖の為に二人の睦事を銀河に見せようだなんて、酷すぎない?」
「へぇ?」
僕には意味がわからなかった。もちろん若い男女が一つの部屋にいるのはまずい事はわかっていたが、だからと言って、彼女達二人の個室はないし、他の男の部屋に行かせる訳にもいかない。何より、断じて僕は二人に手を出したりしない。レイとの事もあるし。
「私としたいのはわかるわ。葵は男の子だから、でも、それを銀河に見学させるのだなんて、酷すぎない? どんなけ、悪趣味なのよ!」
「ち、違うよ。僕は大和に手を出したりしないよ! 僕にはレイがいるんだ!」
「なっ! メインヒロインの私を差し置いてなんて事言うの? それ、もっと酷いわよ!」
「だから、ここは軍艦の中だから、どっちみち、そんな事できないの!」
大和は少し思案する様な仕草をする。仕草と同時にその46cm弾の様な胸が大きく動く、つい目で追いそうになるのを我慢する。大和はレイより胸が大きい。プロポーションは抜群だ。
「銀河は見ているだけじゃ嫌です。ここは三人ですれば公平じゃないですか?」
「だから、ここは軍艦の中だから駄目!」
僕はきつく言った。銀河は航空機の中では一番大きい筈のくせに一番小さい体系だ。しかも、胸はツルっと見事に無いのである。ついでに見た目は辛うじて中学生かと思える位の童顔だ。でも、この子18歳なんだよね。合法ロリコンである。
「「そんなぁああああああああ」」
二人同時に声をあげる。僕は自分の貞操にかなりの危険が近づいているのがわかって、困った。
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