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マリアナ沖海戦 2

日本軍は米軍は中部太平洋での攻勢を本格化させ、ギルバート諸島、マーシャル諸島、パラオニューギニア島が米軍の支配下におちた。皮肉な事に要塞と化したラバウル基地は半場無視された。もちろん空襲はあり、艦隊は逃げ出したが、占領はされなかった。その為、ラバウル航空隊は機能していたが、孤立しており、補給に苦慮した。


この戦況を踏まえて、米軍の総攻撃が5月から6月とし、迎撃地点はマリアナ諸島周辺と想定した。日本軍はこれに合わせて迎撃の為の最後の機動部隊、基地航空隊を整備した。


5月16日、小沢治三郎中将麾下の第一機動艦隊は、タウィタウィ泊地へ進出した。史実と違ってタウイタウイ泊地周辺の潜水艦の脅威はなかった。理由はもちろん、僕達祥鳳の魔法小隊の対潜哨戒任務が完了しており、この付近に集結した米潜水艦隊は一網打尽とした。暗号が読まれている事を逆手に取った作戦だ。おそらく米軍はしばらく潜水艦隊を動かせないだろう。僅か10日間で20隻潜水艦を撃沈した。この海域に潜水艦が進出する事はリスクでは無く、自殺行為だ。論理的な米軍は正体不明の対潜部隊の情報収集にやっきだろう。


小沢艦隊は予定通りタウイタウイ泊地沖で機動部隊航空隊の訓練を行った。史実ではこの潜水排除の為に出撃した駆逐艦が逆に4隻も撃沈されたが、この世界では駆逐艦への損害はない。そもそも駆逐艦隊は出撃事態がなかったのである。


この頃の連合艦隊司令長官は豊田副武大将だった。僕の認知度は山本長官時代よりむしろ下がった。これは痛いと言えた。以前の啓蒙はかなり浸透した。だが、また一から行う事になりそうだ。航空総参謀も源田実から淵田美津雄と変わり、僕の意見は一度も聞かれていない。


「不知火中尉の世界ではこの戦いはどうなったんですか?」


「マリアナの七面鳥撃ちと揶揄されるぐらい見事に航空部隊が全滅したよ」


「全滅ですか? 日本の航空部隊が?」


「米軍はすっかり装備が変わったんだよ。米軍はレーダーで効率の良い迎撃を行った。しかも、米軍の戦闘機はヘルキャットだ。ワイルドキャットじゃない。零戦の優位性は消えた。零戦53型でやっと互角だと思う。練度を考えると、米軍の方が上さ」


「…そんな」


「だけど、僕の知っている史実よりは頑張るとは思うよ。基地航空隊も機動部隊の攻撃隊も直掩機なしでは出撃しない筈だ。山本長官は航空作戦の基本的な考え方を変えてくれた。だから基地航空隊が一式陸攻を出撃させる事も無く、ましてや直掩機無しで出撃させる事はない筈だ。機動部隊だって、艦載機の半分は戦闘機になっている」


「でも、機動部隊の戦闘機は53型がコンパクトで詰めるから積んでいるだけで、基地航空隊には十分53型がいきわたっていないと聞いた事がありますよ」


「なんだって? 基地航空隊に53型が行きわたってないのか?」


「はい、53型の生産が追い付かず、旧型は内地で新平の教練に使われています。残りの旧型は各基地に僅かに配置されているだけです」


「もし、それなら、基地航空隊は壊滅的な被害を受けるぞ…」


「第一機動部隊は大丈夫なんでしょうか?」


「ただでは済まないさ。米軍の艦載機は900機にも上る。そのうちの半数が戦闘機だよ」


「つまり、450機の戦闘機が待つ米機動部隊に我が攻撃隊は突撃する必要があるのですね?」


「ああ、そういう事になるね、基地航空隊の零戦隊が米軍の戦闘機を削いでくれるのを期待したんだけど…」


「という事は、また、不知火中尉の出番ですね…」


「残念極まるが、アウトレンジ作戦が成功して敵機の来襲が無い、という想定は満に一つも無いとした方が良さそうだ」


「負担をかけてしまいますが、不知火中尉の活躍に期待したいです」


「ああ、僕も死にたくないからな。もちろんレイ達を戦死させたりしたくもない」


「私だって、そんなのはやり切れないですよ。幸い、祥鳳には24機も53型の零戦が搭載されています。ミッドウェーやソロモン海の時の様にレイさん達の協力もあれば、なんとかなりますよ」


「そうだな。僕も学んだ。彼女らが出撃する時は艦隊に周知する必要があるし、できれば艦隊付近では戦わせない方がいいと思う」


「そうですね。見えなければ味方から撃たれる事もないですね」


「ああ、それは確かにそうなんだ。実際、敵味方の識別は僕のいた未来でも難しい問題なんだ」


「70年も経過しても変わらないんですか?」


「いや、僕の時代では解決したけど、1960年代の戦争で、敵味方識別装置が使えないという事例が発生してね」


「どういう事ですか?」


「敵味方識別装置が作動すると友軍の位置が全てバレるんだ。だから使えなかった。それで、目視で敵味方を識別する必要に迫られたんだ」


「何とも難儀な話ですね…」


「ミサイルという射程距離外から攻撃できる手段があったのに使えないというおまけつきだ」


「ミサイルですが、以前不知火中尉から聞いた、誘導装置付きの噴進弾ですか?」


「そうだよ。ドイツ軍は第二次世界大戦の後半に実用化したんだ」


「ドイツは凄いですね」


「日本だって、米軍より先に噴進戦闘機やジェット戦闘機を飛ばす事ができたんだよ」


「日本も中々やるんですね」


「ただ、ドイツ軍の物に比べると性能がね…」


「何となく察しました」


僕は空を見上げた。やはり、僕の知っている史実通りになりそうだ。

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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