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第三次ソロモン海海戦4

艦隊は回頭し、敵艦隊との距離は8kmまでに迫った。幸い、敵艦隊に察知されていない。大和の電探では未だ敵艦隊を捉えられていない。どうせ射撃開始すると故障する欠陥品だ。既に故障していても構わない。


「ユウ? みんなと合流できたか?」


「葵君、合流完了できたわ」


「わかった。ユウ、君だけが頼りだ。距離6kmで照明弾を発射、その後みんなで突撃して、至近距離から一発かませろ!」


「敵戦艦を撃沈したら一発犯ってくれるのね?」


「いいから、早くして!」


「わかったわ。早くユウを犯したくて仕方ないのね!」


いや、もう、止めてユウ、僕はそんな事考えてないよ。


「阿部中将、数分後に僕の使い魔が照明弾をあげます。そうしたら、お願いします」


「わかった。全艦、戦闘準備! この海峡に鉄くずを大量に送り込むぞ!」


シュンと音がすると、照明弾が上がった。ユウのだろう。そして、僕達の眼前に敵戦艦の勇猛なる檣楼(しょうろう)が浮かび上がった。僕の背筋に何かが這いずった様な気がした。それ位破壊力抜群の光景だった。


「敵旗艦と思われる戦艦を攻撃せよ」


「射撃照準開始、主砲門開け!」


「敵艦距離8000、1時の方向、速度12ノット!」


「射撃計算完了、各砲塔、射撃準備!」


大和の3連装46cm主砲が龍の首がもたげるかの様に旋回する。


「試射開始!」


ごおぉ♪(ノ)’∀`(ヾ)おん


凄まじい轟音が響いた。


「左切れ300m」


更に轟音が響く、


「右寄せ10次」


「下げ1,000次」


「高め500急げ」


「夾叉ぁああああああ」


しかし、この時、羽黒以下、三人が敵戦艦に近づいていた。突然僕に魔法通信が入った。


「ふふふ、葵ちゃんお姉ちゃんに任せて!!」


えっ? 何言ってんの? と思った瞬間。


ずががっがががっがががっがががーんんんんん


信じられない轟音が響いた。突然の轟音に思わず足がよろめく、しかし、改めて、敵艦を見ると、


「なっ!?」


僕は信じられなかった。自分の使い魔の威力に驚いた。戦艦ワシントンは轟沈だった。既に艦体は真っ二つに折れ、かなりの勢いで夜の海に沈んでいく。


「これは君の使い魔の仕業か?」


阿部中将に問われて、僕は仕方なく答えた。


「…おそらくは」


「…凄まじい威力だな」


「射撃緒言再入力、目標、健在な敵2番艦!」


戦艦大和は新たな獲物を求めてその主砲を回頭した。


戦艦サウスダコタは史実と異なり、電源を喪失しなかった様だ。射撃を開始してきた。あちらもこちらをレーダーで捉えたのか射撃を開始する。


「米軍もなかなかやるな、だが、大和の防御力、見せてやろう」


戦艦大和は46cm(18インチ)砲弾に耐えられる設計となっている。サウスダコタは16インチ(40cm)砲戦艦なのだ。


戦艦大和の命中弾より先にサウスダコタの命中弾が出る。第二砲塔付近だ。だが、サウスダコタの命中弾は主砲塔前盾にはじかれ、海上で爆発した。


「ふふっ、大和の装甲はそれ位では破れんぞ」


僕の知っている史実の阿部中将は消極的な指揮官とされていたが、この人はまるで別人だ。ほとんど、うちの紫電改と同じだ。つまり、厨二病を発症したらしい。


「撃ちまくれ! あたれば轟沈だ!」


いや、そこまではいかないだろうという突っ込みを入れたかったが、阿部中将だけでなく、他の将官も熱を帯び、全員厨二病を発症した模様だ。これまでに既に大和は命中弾を多数受けていたが、全く被害はない。彼らは大和に魅せられたのだ。


「夾叉ぁああああああ」


遂に大和は夾叉した。試射は終わりだ。


「大和、本射開始!」


夾叉を確認すると試射より本射に移った。そして、命中弾は二射目で得る事ができた。


「ちゃくだーん」


砲術長が大声で怒鳴る。そして、爆音がおきた。サウスダコタは突然沈黙した。それは当然だった。爆音が再度起き、サウスダコタは沈没して逝った。艦隊の疫病神との異名を持つ彼女はその不名誉な異名を授けられる事も無く、その生涯を終えた。


戦艦サウスダコタを襲った大和の命中弾はB砲塔を吹き飛ばし、艦橋を破壊した。そして、艦橋を破壊した砲弾はサウスダコタ艦内で大爆発を起こしたのである。主砲弾はサウスダコタの腹にまで穴を開け、彼女は一瞬で数千トンの海水が侵入、あっと言う間に沈没していった。


大和艦橋は一瞬静寂に包まれた。あまりに一瞬の事なので、皆あっけにとられたのだ。大和の主砲のすさまじさに。


「ば、ばんざーい!」


気がつくと艦橋の将官は万歳三唱という状態だった。そして、


「第十一戦隊、ガダルカナル島へ突撃し、敵飛行場を撃滅せんとす!」


阿部中将の宣言でこの戦いは終わった。最も、後続の艦隊は米残存艦隊と死闘を演じた様だが…


敵戦艦を葬った第十一戦隊はガ島へ突撃する事となった。事前の取り決めでは戦艦撃破の際は引き返す筈だったが、阿部中将という闘将が誕生した瞬間、歴史が変わった。いや、判断は妥当なのかもしれない。戦艦二隻を葬るのに要した時間は僅か10分。時間に余裕があるのだ。大和も霧島も健在であり、時間もある。ガ島突入は至極当たり前の判断と言えた。故にだれも反対しない。僕もできなかった。論理的根拠がないからだ。


戦艦大和、霧島はガ島のヘンダーソン飛行場に三式弾を1000発近く撃ち込んだ。ヘンダーソン飛行場は1週間は機能喪失するものと見積もられたが、実際には僅か3日で機能を回復した。


日本軍はこの勝利で、輸送船4隻による揚陸に成功し、陸軍将兵2000人と武器弾薬、糧食をガ島陸軍に届けた。


この輸送船団は空母エンタープライズの航空隊とエスピリツ・サント島のB17爆撃機の攻撃で多数の被害を受けていた。その為、当初11隻いた輸送艦は4隻まで減少し、更に3日後、ヘンダーソン飛行場が機能回復すると、輸送艦での揚陸作戦は断念せざるを得なかった。


機能を回復したヘンダーソン飛行場の航空隊は新たに揚陸した第三十八師団に大損害を与え、十分な援軍を得られなかった第二師団はヘンダーソン飛行場の占領に失敗。日本軍の敗戦が濃厚になった。


日本軍はラバウルの航空隊や空母隼鷹、飛鷹の航空隊で支援するも、アメリカ軍のガ島守備隊は兵力3万人にも達し、とても奪還は不可能である事が判明してきた。


多くの犠牲艦を 鉄底海峡 アイアンボトムサウンド は飲み込んだ。この戦いで戦艦二隻を撃沈した日本軍の戦術的大勝利、輸送艦7隻を空母で撃沈した米軍の戦略的勝利と言えるだろう。そう、日本軍は概ね僕の知っている敗戦の歴史を歩んでいた。

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