第三次ソロモン海海戦1
第三次ソロモン海戦、昭和42年、西暦1942年11月12日 - 15日にソロモン海にて日本軍と連合国軍が水上打撃戦力で激突、数少ない空母以外の艦艇が戦った戦い。この戦いで、連合国軍は勝利し、日本軍の増援部隊の揚陸は阻止された。ガダルカナル島での戦いは連合国軍の優勢へとなっていった。
11月13日に第三次ソロモン海戦第一夜が終了していた。日本軍は戦艦の主砲にてガダルカナル島のヘンダーソン飛行場を攻撃せしめんとしていたが、舵を故障した戦艦比叡を喪失するという衝撃的な結末を迎えた。その後、重巡洋艦による攻撃に成功するも飛行場に打撃を与える事はできなかった。これに対し、日本軍は15日に再度戦艦によるガダルカナル島砲撃を画策した。
南太平洋海戦で米軍は空母ホーネット、ワスプを喪失、エンタープライズを中破され、太平洋における稼働空母数は0となった。米海軍にして『史上最悪の海軍記念日』と言わしめる事となった。
一方日本軍は損失空母0という大戦果であり、ソロモン海域における勝利を信じて疑わなかった。しかし、一方で日本軍側も搭載機の損耗が激しく、防空専門の空母祥鳳、瑞鳳以外稼働空母0という状態になった。空母翔鶴、瑞鶴、蒼龍は内地に回航され、機体と搭乗員の補充を受けて後、復帰する事になった。そこで、機関に故障を生じて、本国に廻航中の飛鷹の航空部隊を隼鷹に乗せ換え、辛うじて稼働空母3(隼鷹、祥鳳、瑞鳳)という状況となっていた。僕の魔法小隊はキュウのLOSTを理由に一切の攻撃の任を辞した。他の空母同様、損耗…そんな言葉は使いたくないが、そういう状態だった。
つまり、日本海軍のガダルカナル島への支援は中途半端なものしかできなかったのだ。その為、にまさか僕達がガダルカナル海域で水上打撃艦隊同士の戦いに参加する事になろうとは、夢にも思わなかった。
僕は南太平洋海戦が終わって、魔力が戻ると、直ぐにガチャを行う事にした。もちろん、キュウを再度召喚する為だった。例え、4年間の記憶を失っていたとしても、キュウに返ってきて欲しかった。あのウザくてもいいから、可愛い笑顔が見たかった。今度は優しい言葉をかけてあげたかった。それで、10月の終わりから、毎日ガチャを行っていた。他の擬人化兵器も一緒だ。みんなキュウをお迎えしたいのだろう。でも、中々僕は艦上急降下爆撃枠の擬人化兵器、SSRを引き当てる事ができなかった。僕達は第三次ソロモン海戦への参加を打診されており、僕はそれを引き受けた。それはキュウの復讐の為だった。僕にそんな気持ちが芽生えるのだなんて思いもしなかった。以前は例え、米軍兵でも、殺したくなんてなかった。でも、今は憎い、愛しいキュウを殺した米軍が憎い。米軍にとってはお門違いの憎しみだろう。こちらから仕掛けた戦争なのだ。殺しあうのは当たり前の事だろう。むしろ、僕達魔法小隊が米軍に与えた被害を考えると、米軍の方こそ、僕達を憎んでいるだろう。理屈ではわかっていた。でも、顔も見た事もない、米軍の軍人が何人戦死しようが、僕はたった一人の自分の知人や、ましてや最愛のキュウを殺した米軍を許す事なんてできなかった。
「葵、今日こそ、キュウを…」
「お兄ちゃん、お願い…」
レイとナナは責任を感じているのか、僕への懇願が他の子達より強い。レイはキュウを戦闘機として守り切れなかった事、ナナは自分の攻撃が外れてしまった事で、キュウが再度攻撃を行った為、キュウが死んでしまったと思って、気に病んでいる。全ては僕の責任だ。僕は艦隊防空にかまけて、彼女らのケアを怠った。危険な敵空母への攻撃を承諾してしまった。慢心だった。防空においてはレイやキュウは圧倒的だった。でも、それはユキ、ユウ、羽黒の電探情報によって、絶えず奇襲攻撃ができたからだ。米軍の空母はレーダーを装備している。強襲となった時、レイやキュウは敵戦闘機隊とかなり苦戦を強いられた。それを僕は事前に察知できなかった。間違っても二次攻撃なんて許してはいけなかったし、そもそもそんな危険な艦隊攻撃に彼女らを投入する事を承諾すべきじゃなかった。でも、せめて、4年間の記憶を失っていてもいい。帰ってきて欲しい。ひたすら、それだけを願っていた。
「じゃあ、ガチャを引くよ」
僕はステータス画面をオープンすると、艦上爆撃機枠のガチャを引いた。そして、遂に、虹色の光り輝くSSR、つまり擬人化兵器を引き当てた。
「やった! キュウに再開できる!」
キュウはいきなり僕を先輩と呼ぶだろう。記憶を失っていても、初めて会う僕を何故か先輩と呼ぶだろう。
「キュ、キュウ?」
だが、そこに現れたのは、茶髪のショートボブのキュウではなかった。金髪、碧眼の女の子だった。
「グーテンダーク! ドイツと日本のハーフの彗星です。小隊長! 学級委員の会合さぼったでしょ? 駄目だよ! 来週は必ず参加だからね!」
僕は茫然とした。そこに現れたのは艦上爆撃機彗星、金髪と碧眼、髪は肩まであるミドルボブ、制服もどきは銀と薄い青を基調としている。リボンの色も青だ。
「キュ、キュウじゃない?」
「葵、擬人化兵器はガチャで、違う子が出る事があるの。海軍航空機部門はあまり変化ないけど、艦上爆撃機だと、九十九式急降下爆撃と彗星の二択になるの」
「じゃ、キュウは?」
「擬人化兵器は一枠、一人だけなの。だから、キュウは…」
「何か、何か方法はないの? キュウをもう一度召喚する方法が?」
「あの、ありますよ。ヘル、ルテナン」
「あるのか? 頼む教えてくれ、彗星!」
「私が死ねばいいんですよ」
「死、死ぬって…」
「私は気に入られなかったんですよね。なら、死ねと命じれば、直ぐに死にます…」
僕は彗星の言葉に絶句した。気に入られないから死ぬ。それが僕の使い魔の擬人化兵器。
「ご、ごめん。お願いだから死ねと命じてくれだなんて言わないでくれ。彗星も大事な僕の仲間なんだ」
僕はキュウの為に彗星に死んでくれだなんて言えない。ゲームじゃないんだ。彼女らは人間と何一つ変わらないだ。僕は彗星を歓迎すると、皆を返し、一人で自室で泣き続けた。
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