南太平洋海戦4
葵が艦隊防空に万進していた同時刻、ソロモン海沖米機動部隊上空に擬人化兵器レイ、キュウ、ナナはいた。
「キュウ、あまり無理しないで、戦闘機隊は私に任せて」
「レイ先輩だって無理してるじゃないですか?」
「二人共無理しないでください。ナナも戦闘機と闘えるといいのですが…」
「ナナは駄目よ。未だレベルが低いし、ナナの速度だと戦闘機に追いつかれるかも…」
「迎撃の時と違って、奇襲にならないからしんどいですね」
「ええ、各個撃破するしかないわ」
「レイ先輩、まだ敵戦闘機は20機はいそうでうね」
「既に20機は撃墜した筈なんだけど、増援を出した様ね」
「レイ先輩、戦闘機隊を全滅させないで、キュウとナナで空母ワスプに攻撃を仕掛けましょう。レイ先輩は援護してください。特にナナちゃんをお願いします」
「…でも、それでは」
「このままだと、敵空母に攻撃する前に魔力が尽きます。それならば!」
「わかったわ。攻撃が成功したら私達に戸籍が、人として扱ってもらえる。葵の気持ちにレイも応えたいわ」
「キュウも同じ気持ちです」
「ナナもお兄ちゃんに武勲をたてて欲しいです。自分の為にも」
「行きましょう。キュウ、ナナ!」
三人は米空母ワスプに向かい、対艦攻撃を実施した。レイが敵戦闘機隊を惹きつける。キュウは上空に高く高度を取り、急降下爆撃の準備に入る、ナナは高度を落として、雷撃を敢行する。
「いけぇぇええええええええええ!」
キュウの爆弾が12個投下される。空母ワスプに4発の命中弾。しかし、
「ナナ雷撃します! いっけ~!」
ナナから放たれた魚雷は6発、だが、運悪く、魚雷は空母を捉えきれなかった。
空母ワスプはキュウの爆撃を受け、大破炎上していた。しかし、ダメコンに勝る米軍はワスプを復旧して、戦線に復帰させる可能性がある。
「レイ先輩、私もう一度攻撃します。もう一度位の攻撃する魔力は残っています」
「大丈夫? キュウは戦闘機隊とも戦ってるでしょ?」
「大丈夫です。キュウが一番レベル高いし…先輩に喜んでもらいたい」
「わかったわ。ナナちゃんは帰還して、キュウの護衛は私がする」
「お願いします。レイ先輩」
「わかりました。レイさん、キュウさん、ごめんなさい。ナナが失敗したから…」
「気にしないで、100発100中という訳にはいかないもの」
「そうよナナちゃん」
ナナは帰還した。そして、レイに護衛されてキュウは再度空母ワスプに攻撃する。
「いけぇえええええええええ」
キュウは再度爆弾を投下する。魔力が大幅に下がる。その時、
「きゃああああああああああああ」
「キュウ、大丈夫?」
「大丈夫です。護衛艦の対空砲火が命中したみたいです」
「気をつけてね」
「はい」
キュウは空母を眼前に見据えて、7.7mm機銃を掃射すると急上昇に移った。
「―――――~~~~ッ!!!!」
空母上空の低い高度を上昇中は極めて危険だ。そんなキュウに護衛艦の対空砲火が命中した。
「キュウぅうううううううううう!?」
レイの声がこだました。レイが最後に聞いたキュウの声は、
「せ、先輩、す、好きと言いいたかった…」
速度を失ったキュウに次々と着弾する。キュウの四肢は爆散した。
「キ、キュウ」
僕は第一次攻撃隊の帰還に喜々として喜んだ。敵空母1隻撃沈、1隻大破。大戦果だ。第一次攻撃隊の回収の前にレイとナナが帰還した。僕は飛行甲板で二人を迎えた。
「キ、キュウはどうしたんだ? 何故いないんだ?」
「葵、キ、キュウはLOSTしました」
いつかの様にレイと ナナは僕に敬礼した。いつも敬礼なんていないのに…擬人化兵器が敬礼したのはレイがLOSTした時だけだ。
「なんで、キュウを助けられなかったんだ!」
僕は最低な事を言ってしまった。レイはボロボロだった。彼女も大変だったのか、それともキュウを救う為、レイも危険だったのは明らかだ。レイの魔力も限界すれすれなのは見ての通り、最悪三人共…それなのに僕は…
「ごめん。僕がどうかしていた。ホントにごめん」
レイは赤いリボンを差し出した。
「こ、これ、キュウの…」
それはキュウの制服もどきの胸の赤いリボンだった。何度かキュウの首に巻いて引っ張った。キュウはそうするとドMの本性を現したのだった。
「葵、キュウは空母ワスプを撃沈しました。葵の為に」
「…そ、そんな」
僕はキュウが帰還したら、告白しようと思っていた。キュウの笑顔を想像して、とても幸せな気持ちだった。でも、キュウは、キュウは帰ってこなかった。
「キュウの最期の言葉は…『せ、先輩、す、好きと言いたかった…』です」
それを聞いた瞬間、僕は泣き叫んだ!
「も、もう嫌だ! キュウ、なんで僕はもっと早くキュウに告白できなかったんだ? 何故キュウは無事に帰ってきてくれなかったんだ?」
「葵、キュウは葵の為、命をかけました。キュウを褒めてあげてください」
「ナナがいけないです。ナナの攻撃が上手くいかなかったから!」
「違う、僕が敵空母への攻撃なんか命じたからだ。僕が、僕が悪い」
僕は祥鳳の飛行甲板上で一人泣きぬれた。
日本軍損害
小破:駆逐艦 照月
航空機損失:62機
航空機搭乗員戦死:56名
艦船乗組員戦死:90名
LOST:擬人化兵器九十九式艦上爆撃機二二型
米愚損害
沈没:空母 ホーネット、ワスプ、駆逐艦 ポーター
大破:駆逐艦 スミス
中破:空母 エンタープライズ
小破:戦艦 サウスダコタ、軽巡 サン・ファン
航空機損失:141機
航空機搭乗員戦死:86名
艦船乗組員戦死:380名
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