南太平洋海戦1
南太平洋海戦、昭和17年西暦1942年10月26日にソロモン海域で行われた日米両軍間に生起した機動部隊同士の海戦。バトルオーダーは日本軍、空母翔鶴大破と瑞鳳中波、米軍、空母ホーネット撃沈、空母エンタープライズ中破という戦果であり、日本軍の戦術的勝利、稼働空母を失くし、日本軍のガダルカナル島奪取をくじいた米軍の戦略的勝利であった。
米軍の稼働空母はホーネットとワスプのみになり、空母の数的不利(日本軍は正規空母翔鶴、瑞鶴、蒼龍、軽空母隼鷹、飛鷹、祥鳳、瑞鳳が稼働)により積極的な空母群の投入を控えた。しかし、ガダルカナル島のヘンダーソン飛行場の航空兵力にてガ島の日本陸軍は絶えず空襲にさらされ圧倒的に不利だった。また、遅れていた米軍の補給もこの間に終了し、空母エンタープライズは10月15日に修理が完了すると、空母エンタープライズ基幹の第16任務群、空母ホーネット基幹の第17任務部隊、空母ワスプ基幹第18任務部隊 の3隻の大型空母が前線基地であるエスピリッツサント島沖に10月25日集結した。求める物は日本軍空母だ。
一方日本軍はガダルカナル島総攻勢に向けて準備を進め、陸軍第17軍総兵力6万によるガ島での総攻撃を10月25日と設定した。これを支援するため、水上打撃部隊第8艦隊による駆逐艦や巡洋艦でのガ島への鼠輸送を実施した。さらに水上機母艦日進、高速輸送船団による大量輸送も実施予定であった。更にトラック泊地には、水上打撃部隊第二艦隊、航空部隊第三航空艦隊(空母翔鶴、瑞鶴、蒼龍、隼鷹、祥鳳、瑞鳳)が集結していた。
「史実通り、空母飛鷹は機関が故障しましたね」
「ああ、君から聞いてはいたが、貴重な空母が戦う前から一隻脱落するとはな」
「それだけではありません。僕の知っている史実では空母サラトガだけで無く、空母ワスプも潜水艦の攻撃で雷撃され、撃沈しています。しかし、この世界では…」
「空母撃沈の報が誤報でならともかく、ありもしないという事は、先ず、健在と見るべきだろうな」
僕は空母祥鳳の艦橋で、藤沢艦長と話していた。
「つくづく、僕が第二次ソロモン海海戦で、空母龍驤を守り切れていれば…」
「いや、空母龍驤が小破に留まったから、歴史が変わり、空母ワスプが健在となったのかもしれん」
「確かに、この世界には僕の知っている歴史へと修正する力が働いている様に感じます」
歴史が修正されようが、されまいが、戦争の結果は変わらないだろうという言葉は飲み込んだ。軍人である藤沢艦長を不快にしても、何の意味もない。僕でさえ、考えたくもない。僕はこの世界の日本の軍人なのだ。今、考えている事が、生き残る事であっても、目の前の友軍を助ける為の考える努力は当然する。
「南太平洋海戦というのだったな。この戦いは…どんな経過を辿るんだ?」
「10月26日、つまり明日ですね。二段黎明索敵より敵機動部隊が発見されます。しかし、米軍も日本軍をほぼ同時に発見し、日米同時に攻撃隊を発信させます。そして、空母ホーネットを撃沈、空母エンタープライズを中破させます」
「こちらの被害は?」
「空母翔鶴大破と瑞鳳中波で済みました」
「それなら大勝利じゃないか?」
「いえ、駄目です。日本軍は空母航空戦力を失います。空母はあっても、稼働航空機がなくなり、ガ島の制空権を取れず、ガ島への援軍揚陸に失敗します。敵空母を叩くだけでなく、航空機に余裕を残して勝利する必要があります」
「そうすると、正規空母3杯と軽空母3杯で敵正規空母3杯を完全撃破した上、余力を残す必要があるのか?」
「そういう事です。それに加えて僕の知っている史実と異なり、空母ワスプが戦列に加わっています。こちらには空母蒼龍と祥鳳が加わっていますが、搭載機からすると、戦力比率はあまり変わりません。おそらく僕の知っている史実とそれ程大きく変わる事はないと思います」
「…そうか」
藤沢艦長と話が終わると僕は艦橋を一時離れた。新しい擬人化兵器に会う為だ。第二次ソロモン海海戦で僕のレベルはかなり上がった。今はレベル40だ。ソロモン海ではちょこちょこ僕達空母祥鳳の出番があったので、かなり経験値を上げる事が出来た。レイのレベルは20になったし、キュウに至っては40、ナナは20、ユキは40、ユウは30、羽黒は20だ。そして、もう一人僕は 仲間を増やす事に成功した。擬人化兵器、局地戦闘機枠の紫電改だ。
「入っていいかい? 紫電改?」
「入りな。葵」
紫電改は局地戦闘機、つまり迎撃機だ。性能はレイより空戦能力の素養が高い。だが、航続距離はややレイの方が上だ。ただ、性格が野蛮で困るのだ。紫電改にも個性があって、それはヤンキーなのだ。
「紫電改、また、味方の零戦の後ろから20mm機関砲をぶっ放したのか?」
「ああ、あいつらびびってやがったから、ちょっと、ケツの穴を絞めてやろうと思ってな」
紫電改は片目にアイパッチをしていて、隻眼だ。綺麗なんだけど、そのアイパッチと粗暴な言葉で、折角の美貌が台無しだ。
「紫電改、そこそこ仲間とはうまく折り合わないと、後ろから撃たれても知らないよ」
「俺様がそんなヘマするもんか。何より、あんな腰抜け達に遅れをとる筈がないさ」
「油断はするものじゃないよ。君の能力は知っているけど、過信しちゃだめだ」
「わかっているさ。油断はしねぇ」
ホントかな? と思っていると、僕は奇妙な事に気がついた。なんか、昨日はアイパッチが右目についてた様な気がする。だけど、今日は左目…どういう事?
「ねえ、紫電改のアイパッチって、昨日は右目にしてたんじゃなかったっけ?」
「ええっ? そんな事、覚えてるのか? お前、気持ち悪いな、俺様の事、ガン見してたな?」
「いや、ガン見はしてないよ。そんな事より、凄く気になる」
「ふん、いいさ、別にガン見しても…」
いや、だから、ガン見はしてないって!
「そうじゃなくて、アイパッチの事!」
「ああ、俺様のアイパッチは毎日ローテーションなのさ、だって、目が悪くなるだろう?」
…えっと、意味が解らなくなったんですけど…
「ええっと、君のアイパッチて、もしかして、アクセサリーみたいな物?」
「アクセサリーなんて、言うな! これはロマンだ! 戦いの時に俺様の片目が疼くんだ」
「ええっと、士気高揚の為にやっているって事? 戦いの時にどんな風に思ってんの?」
「それは決まってるだろう? 戦いの前に、こう、片目に手をあてがってだな、封印されし右目が疼く…魔界の龍の声が聞こえる、俺様の封印されし黒龍の力を解放するしかないのか?」
紫電改は痛い決めポーズをしながら、更にこう続けた。
「ふっ…人は俺様を黒竜の騎士と呼ぶ」
やはり痛い名乗りをあげ、しばらく時間が止まった様な気がした。僕の頭の中では、
「…………」
という状態だったが、優に20秒は経過してようやく気がついた。
この子ヤンキーじゃ無くて厨二病だ…
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