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ミッドウェー海戦7

午前5時を回っても米軍の波状攻撃は続いた。僕達祥鳳は敵機が近ずく度にその位置を報告していた。最初旗艦は無視していたが、段々僕達の言う事を信じてきた様だ。艦隊の直掩隊が僕達の報告がもたらされると直ぐに動き始める様になった。そしてミッドウェーへの第一次攻撃隊が戻ってき始めた。艦隊が混乱するのは自明の理だった。そして午前5時30分、利根4号機より敵空母発見の連絡が入る。


「利根4号機の電文を傍受、『敵はその後方に空母らしきもの一隻を伴う。ミッドウェー島より方位8度、250浬』」


「いよいよ艦隊が蜂の巣をつついたようになるな」


「ええ、混乱が一番怖いです。冷静になれなければ、勝てるものも勝てません」


まあ、米国と開戦した事自体が冷静さに欠けるという気もするが、今それを考えても仕方ないが。


南雲司令は山口少将の第二航空戦隊に命じ、空母蒼龍にだけ2機配備されていた試作高速偵察機十三試艦上爆撃機の発艦を命じた。しかし、この索敵は失敗する。利根4号機の敵艦隊位置情報はコンパスの不具合から誤差が100km以上あるのだ。


「山口少将からの電文傍受、『現装備のまま直ちに攻撃隊を発進させむるを至当と認ム』」


通信科の綾瀬中尉が報告する。


「第二航空戦隊司令の進言で南雲司令部が命令を再考してくれればな」


「少しは生き残る可能性が高くなります」


「勝てる確率が増えるではないのか?」


どうせ勝っても、最後は米軍に負けるとは言えなかった。僕も一応軍人なんだ。


「この戦は消耗戦になります。とにかく目先の勝利より、将兵と艦艇の生存率が重要です」


「君が言うのならそうなのだろう。祥鳳も生き残りを優先する」


「艦長!?」


三浦航海長が驚く、当然だろう。海軍にあってある筈が無い考えだ。


「三浦航海長、我らは山本長官の未来人を預かっている身だ。それを忘れるな」


「なるほどですね。承知しました。勝利の為、生き残る事に注力する点、同意します」


「お二人も不知火中尉に感化されてますね?」


綾瀬中尉が笑いながら言う。そういう彼も僕の言う事を真剣に聞き始めていた。かくいう彼もそうなのだろう。僕は貴重な味方を得る事ができた様だ。


しかし、午前5時30分、旗艦赤城から『艦爆隊二次攻撃準備、250キロ爆弾揚弾セヨ」との電文を受け、第二航空戦隊、飛龍、蒼龍は二次攻撃に備え対艦用250kg爆弾搭載の準備を始める。


「進言は却下されたか?」


「その様です…」


南雲司令部は僕の知っている史実通り、第二次攻撃隊の陸用爆弾を対艦攻撃用の250kg爆弾に換装させた。空母に装甲はない、当たれば陸用爆弾でも空母の離発艦能力は奪える。250kg爆弾は戦艦用に作られた爆弾で、戦艦の装甲を打ち抜く徹甲弾の様なものだ。だが、空母に装甲は無い。そもそも爆弾だけで空母を沈めるのは結構困難だ。爆弾で沈むのは当たり処が悪かった場合と艦内の爆弾や魚雷に誘爆した場合だけだ。


おそらく南雲司令部は米機動部隊との距離は遠く、時間があると判断したのだ。利根4号機の敵機動部隊位置情報が間違っていたのだ。実際にはかなり近い。


午前5時37分、各空母はミッドウェーへの第一次攻撃隊の収容を開始した。そして第一航空戦隊、赤城、天城の艦攻は午前7時30分発進可能との報告、第二航空戦隊、飛龍、蒼龍からは午前7時30分から午前8時に発進可能との電文を受信した。祥鳳からは祥鳳攻撃隊午前6時00分に発進可能と藤沢艦長より報告された。祥鳳は兵装転換ではなかったので、発進準備が早かった。何せよ、一度搭載した陸用爆弾をいちいち下して対艦用爆弾や対艦魚雷に換装するのだ。時間の無駄にも程がある。通常の倍以上の時間を浪費する。時間が全てを決める航空戦で、あり得ない選択…もちろん僕の意見は後付けのチート知識だ。この時代、戦力を集中して使う事は当たり前だった。それは戦艦対戦艦でも陸軍の歩兵部隊でも同じだった。僕の意見は後付けの知識であるから言える事なのだ。この時代、珊瑚開戦以前に空母対空母の戦いはなかったのだ。南雲司令部が無能であったとするのは軽率だろう。とは言え、それに巻き込まれている身としてはやり切れないものがある。


第一次攻撃隊の収容は午前7時00近くまでかかった。この間、ホーネット雷撃隊TBDデヴァステイターが来襲するがユキやユウの電探情報に従い、直掩の零戦隊に撃破されていた。南雲司令部の考えは正しい点もあった。現に米機動部隊は日本軍と逆に時間を優先して、準備ができた隊から発進させている。しかし、戦力の逐次投入となり、その被害は甚大だった。もし、日本軍が十分な数の直掩機を用意できていたなら…祥鳳の艦載機が全て零戦であったなら、いや、せめて、敵艦隊攻撃任務が無ければ、空母は助かった可能性が高い。だが、その後米機動部隊の波状攻撃を退けたものの、午前エンタープライズの艦爆隊SBDドーントレス32機が接近すると、僕は決断した。藤沢艦長に報告する。


「藤沢艦長、我が艦隊に敵爆撃機32機と17機の二隊が近づいています。ユウから連絡が入りした。魔法小隊に出撃の許可をください。この爆撃隊によって、空母3隻が沈むのです」


「わかった。頼むぞ」


「了解しました」


僕は魔法通信回線を開くとレイとキュウに連絡した。


「レイ、キュウ、出撃だ。ユウから聞いた敵爆撃機を粉砕してくれ!」


「葵中尉。その言い方はどうしたのかしら?」


「えっ? それは……命令だけど?」


「糞豚野郎の分際で何を偉そうに言っているのかしら? 身の程をわきまえなさい」


いや、いつものレイのドS発言だけど、今は勘弁して。


「いや別に偉そうになんてしていないけど……」


「わかったわ。私に偉そうな事を言って、ご褒美の言葉責めを期待していたのね? だとしたら、綿密に練られた変態な計画ね!」


「どんなけ僕を変態にしたいの! 僕にそんな趣味はないよ!」


「五月蠅いわね、いつも出撃の時、私のスカートの中覗いて、だらしないオスの顔してるの知っているのよ? ……ホント恥ずかしい男ね」


「いやそうだけど……って、何言わせるの!」


「ふふっ。白状したわね。逆に聞かせてほしいわね。葵、女の子のスカートの中を覗いてどんな気分か言ってみなさい?」


「い、いゃ……レイはいつも黒いショーツが多いなとか、いつか間近でみたいなとか……何言ってんの僕?」


「葵。変態な事が暴露されて恥ずかしいのでしょう? でも、変態な事を周知される事に快感を覚える変態なんでしょう? 僕は変態ですと大声で言いなさい」


「い、いや、僕は…」


「言えないの? では、ご褒美の言葉責めだけあげるから感謝しなさい。この意気地なしの変態糞豚野郎!」


「い、いや、僕そんなご褒美いらない…」


「嘘をおっしゃい。ふふっ。そんな事言って、だらしない雄豚の顔してる癖に、情けない声で弁解するなんて……恥ずかしい男ね」


「嫌、僕、レイ達の事心配なんだから、ふざけないで……」


「そんなに心配なら、一人でロッカーの中に隠れてお祈りすれば? じゃあ、いくわね」


「あ、レイ……し、死ぬなよ、絶対生きて帰れよ!」


「ああ、もう! レイのばか、ばか! 葵があんなに心配してくれるのに! こんなに心にもない事を言って、でも葵は欲しがりだから! もう、帰還したら、婚約しようとか、式の日取りを早速決めようとか、結婚式場は何処にするか早く決めた方がいいとか! 初夜の時に備えてもう練習しようとか、恥ずかしすぎてレイ、おかしくなるわ! 葵、そんな恥ずかし事言わないで!」

いや、僕はそんな事言ってないよね? レイが一方的に恥ずかしい事言っているだけだよね?


「先輩☆任せてくださーい☆」


キュウのお気楽な発言だ。結構キュウのお気楽発言も結構疲れる。


「二人共頼む、そして、絶対死ぬな! それが僕の最大の命令だ!」


二人は祥鳳の飛行甲板からエンタープライズの艦爆隊とヨークタウン艦爆隊にそれぞれ向かった。


歴史は変わるのだろうか?

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