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ミッドウェー海戦4

連合艦隊が計画したミッドウェー作戦はミッドウェー島を攻略し、米空母機動部隊を誘い出し捕捉撃滅することに主眼が置かれた。しかし、日本軍はあくまで米機動部隊はミッドウェー攻略後、全力で同島を奪回すると考えた。珊瑚海海戦の時は翔鶴、瑞鶴が米軍に対して迎撃していた。同島で、米空母が早期に迎撃にあたる可能性…自分達が経験した事が全く反映されていなかったのだ。


そのくせ、米空母がミッドウェー近海に早期出撃する確率は高いと予想していた。日本軍は空母レンジャーは大西洋で活動、空母レキシントンは修理中、空母エンタープライズとホーネットは太平洋で活動中。ワスプの動向は不明。


以上の情報より、米空母は2乃至3隻、ミッドウェー島の航空戦力は哨戒飛行艇2個中隊(24機)、陸軍爆撃機1乃至2中隊(6機or12機)、戦闘機2個中隊(12機)と推測された。しかし、実際は航空機は150機まで増強されており、空母エンタープライズとホーネット、ヨークタウンがミッドウェー近海で待ち構えているという状況だ。迎撃どころか待ち伏せだ。


「不知火中尉、ミッドウェーはどういった形で戦端が開かれるのですか?」


海老名中尉だ。彼と平塚少尉は朝食を士官食堂で終えた後、僕について来て聞いた。この二人は僕が未来から来た人間、いや、この世界にそっくりな世界の未来から来た事知っている。


「ミッドウェー島を攻撃するけど、奇襲とはならず、米軍の哨戒機にあっさり見つかって、敵空母によって、いきなり、空母3隻が沈没するよ」


「一度に三隻もですか? あの一航艦がですか?」


「空母では第二次攻撃の為に爆装した艦載機や、搭載中の爆弾、魚雷が多数あったんだ。その上、雲で隠れて、零戦隊がSBDドーントレスの存在に気がつくのが遅れたんだ」


「そ、そんな。祥鳳はあんなにたくさんの爆弾や魚雷を避けたのに、第一航空艦隊が避けられないのだなんて…」


「それ以前に敵機の接近に気がつかなったんだよ。対空電探がないからね」


「なんか、絶望しか見えないのですが…」


海老名中尉と平塚少尉が顔色を悪くする。無理もない、彼らも軍人、いくら死にたく無い派でも、味方の損害に無関心ではいられない。


「しかし、中尉の魔法小隊は電探を装備していると聞き及びましたが?」


「僕の進言を聞いてくれればいいのだけど…」


二人は沈黙してしまった。二人は僕が第一航空艦隊のお偉方にどう思われているか知っている。僕が直接話したんだから、良くわかっている筈だ。


「まあ、艦長の力を借りるさ。前の珊瑚海海戦より少しはましだよ。それに祥鳳だけでも防衛するさ。一隻でも残れば、たくさん仲間を助ける事ができる。それに最後の一隻は闘将山口多門少将の飛龍だ。山口提督なら僕の意見を聞いてくれるかもしれない」


僕は一縷の望みを山口多門提督に寄せていた。彼は僕の意見を馬鹿にしなかった。興味深く、聞いていた。そのにこやかな顔に理性の目と狂気の目を合わせ持って。


僕は空母飛龍と共闘する事を考えていた。二隻の空母でなら、もしかしたら、空母飛龍と山口多門提督は救えるかもしれない。


「不知火中尉、お願いします」


「だから、あまり買い被らないでくれよ」


僕は苦笑した。正直、歯がゆくてならない。僕の意見通りに動けば、ミッドウェーで勝利すらできるのではないかと思えた。僕は後出しの知恵を持つチートな存在なのだ。僕がいるにも関わらず、前の世界とほとんど変わらない歴史を歩む事に僕は不甲斐なく思えた。


僕は海老名や平塚と別れると少し、考え込んだ。


そうなんだ。源田実航空参謀が僕の意見に耳を傾けてくれれば全て上手くいくんだ。そうなのである。源田実は今回の作戦で、図上演習後に、兵力が分散し過ぎて作戦目標を見失っており、兵力の集中という兵術の原則にも反している。そして、「作戦の重点を米艦隊撃滅に置くべきである。その為には他の作戦可能な兵力、例えば第五航空戦隊(瑞鶴、翔鶴)が参加できるのを待ってでもミッドウェーに集中すべきだ」と唱えた。僕の言った事は彼は理解できた筈なのだ。僕の言った事は彼の意見を肯定するものだった。僕が未来人である事を信じてくれなくても、僕が青二才であっても、彼は理解できた筈だ。だが、彼は僕の言う事を信じてくれなかった。僕が魔法小隊の指揮官だったからだろうか? 得体のしれない戦力。僕の存在自身が彼を見誤らせてしまったのかもしれない。


源田実は後に、作戦目標がアメリカ軍機動部隊の撃滅かミッドウェー基地攻略なのか曖昧であったとし、戦略戦術からいってどうにも納得できない部分があり航空主兵なのか戦艦主兵なのかも曖昧で、戦艦大和が後ろからついてくる事も疑問だったという。


確かにミッドウェー攻略は戦艦部隊に任せて、一航艦は米空母に備えた方が良かったのかもしれない。夜間に砲撃でもすれば、かなり効果があった筈だ。そうすれば、一航艦はミッドウェー島を気にせず米機動部隊に備える事ができた筈だ。日本軍はあれ程多量の戦艦を動かして、一体何をしようとしていたのか? 実際、日本軍の空母が全滅すると、日本軍は7隻もの戦艦を擁していたにも関わらず、撤退している。それとも督戦隊だったのか? 栄えある一航艦に対して?


おそらく、全ては日本人固有の目的意識の不徹底。作戦に参加した膨大な数の将兵、その誰一人として、作戦の本質的な理解等していなかったのだろう。


士官室に近づくと、軽巡のユウがいた。僕と目が会うと手を振ってきた。僕は軽く手を振った。無視するのもなんだ。まあ、朝の仲直りも必要だろう。


「ユウ、待っていてくれたの?」


「うん、一緒に下校しようよ」


いや、ここ学校じゃないよ。ユウは僕の幼馴染という設定だ。あくまで、ここは学園的な物にする気か? 僕達これからミッドウェーに向かっているんだけど。


「どうしたの? わざわざ待っていてくれたの?」


「うん。どうしても話したい事があって…」


「何?」


「葵君って、レイさんの事好きなんでしょう?」


「えっ? あ、うん、そうなんだけど」


そうだけど、なんか幼馴染という設定が過って、なんかユウを意識してしまう。


「私、葵君の事好きなんだ」


「ええっ?」


いや、1週間前に召喚したばかりだよ。もう恋に落ちているの?


「昔から、ずっと好きだった」


い、いや、初めて会ったのたったの1週間前!


「わかっているの。私みたいな幼馴染なんて、負けヒロインだって」


「それは聞いた事があるけど、でも、ラノベとかの話だろう?」


「だって、実際、葵君はユウじゃなくてレイさんを選んだんじゃん」


「いや、僕とレイは君と会うもっと前から彼氏彼女だから!」


「……わかってるの」


絶対わかってない。幼馴染って、設定だけなのに、


「私、レイさんの為に身を引くわ、でも、幼馴染の役目だけは全うするわ」


「な、なんなの? 幼馴染の役目って?」


「葵君とレイさんが初めてエッチする前の練習台」


「はぁ?」


「だから、恥ずかしい事言わせないでよ! 幼馴染は本命の彼女の代わりに主人公のエッチの練習台になる運命なのよ!」


それ、エロゲーかなんかの話じゃないの?


「ユウ、ちょっと待って! 君、変だよ!」


「安心して、ユウを初めての練習台に使ってもらって、そして、その後は性のはけ口として、散々おもちゃにして、最後はぼろ雑巾の様に捨てて頂戴」


いや、そんな鬼畜の様な所業、絶対嫌だよ。


「お願い、私の幼馴染としてのプライドがあるの!」


困ったな。レイも口では散々エロい事言うけど、本当に襲ってきたりしないし、キュウは恥ずかしがりなのか、罠にかけたりして回りくどい事してしかエロい事しないし、ユキは裸を露出して見せる事以外は何もしないけど、ユウは直接エロい事しようと言ってきた。僕の理性大丈夫? ここ艦内だよね?

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)

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読んで頂いた読者様ありがとうございます☆ 本作について、 「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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