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ミッドウェー海戦3

朝、人の声で目が覚めた。


「葵君、起きて、寝坊しちゃうわよ」


「ええっ? 誰?」


「もう、何言ってんのよ。幼馴染のユウよ」


ユウ? 義人化兵器の軽巡夕張、ユウか。


「どうしたの? こんな朝から?」


「それが毎日朝起こしに来てる幼馴染に捧げる言葉?」


「わかったよ。直ぐに起きるよ」


僕は段々わかってきた。義人化兵器には個性というより、設定がある様だ。レイはドSお嬢様だけど。キュウは後輩。ユキは無言でコミュ障が設定だ。察するにユウは幼馴染という設定だ。だけど、初めて会ったの1週間前なんだけどね。


僕はベッドから寝ぼけ眼で起きると。ユウが、


「ちょっと、何考えてるの? 葵君!」


ユウは掌で目を隠す素振りをする。それでいて、指の間からがっつり見ている。


「もぉおおおおおおおおお! 変態!」


ぱちーーん


僕はユウに平手打ちをされた。どうも、朝の健康な男子の下半身を凝視してしまった様だ。


「もう、信じらんない。葵君の馬鹿ぁぁぁぁぁあ!」


ぱちーーん


僕はもう一度派手に平手をくらってしまったけど、僕、悪くないよね?


「もう、知らない!?」


ユウは怒って部屋を出て行ってしまった。まあ、僕は軍人で、これから艦橋勤務で、別に幼馴染と一緒に登校するというシチュエーションは無い訳だから、いなくなっても別に何も困らないし、結局、ドアの処で別れるしかないんだけどね。着替えを見られるのも困るし。


幸い、ユウが早めに起こしてくれた様だ。朝食の時間には未だ1時間は余裕がある。僕はこのミッドウェー海戦に想いをはせた。正直無駄な戦いに思えた。戦略的に何の意味もない。そもそも戦略目標は米空母の撃破だった筈だ。しかし、空母を相手に戦う筈なのに、現場の第一航空艦隊は空母はいないものとして戦った。この海戦は軍令部の立案では無く、山本五十六長官のごり押しで決まった作戦だった。この作戦が実行されなければ、山本長官は職を辞すとまで脅して実行させたのだ。山本長官の気持ちもわからないでもない。山本長官は短期決戦でしか勝機は無いと考えていた。だから、ミッドウェーで、一気に米軍空母一網打尽にして、ハワイを占領もしくは航空攻撃や潜水艦による攻撃で無力化して、米国を和平のテーブルにつかせようとしたのだろう。正直、その戦略は誤りだと思う。米軍がそれ位で屈するとは思えない。あくまで後出しの知識によるものだから、山本長官がおかしいと指摘をするつもりはない。そもそも、山本長官はこの太平洋戦争には反対だったのだ。「半年は暴れてやりますよ」という語録が残っている。半年先の保証はしかねるという事だろう。


戦略の集中性が無さ過ぎた。軍令部と連合艦隊の異なる二つの戦略。これは日本海軍というより日本人固有の問題かもしれない。目的意識の不徹底もだ。第一航空艦隊は敵空母撃破を第一優先で考えていなかった。米空母をおびき出す為にミッドウェー島を攻撃するのだ。早期に出て来る事…いや待ち伏せされる事も考えるべきだったのだ。おそらく、米空母はアリューシャン列島から攻撃してくるという意見があり、その情報が南雲中将や源田実大佐ですら、油断させたのだろう。全てはあまりに勝ち過ぎたのだ。慎重さが全くなかった。


それだけではない。この海戦は連合艦隊司令長官の発案だ。それがそもそもおかしいのだ。作戦立案は軍令部の仕事だ。ところが、連合艦隊司令長官山本は早期決着に固執して、無理やりこの戦いを行ってしまった。ちなみに図上演習では空母赤城、加賀は1度撃沈されたにも関わらず、復活している。あり得ないやり直しというインチキがあった。米国の空母が参戦すると、突然ミッドウェー島での戦いが難しくなる。ミッドウェー島だけでなく、島嶼を攻撃する際、迎撃側が圧倒的に有利なのだ。籠城戦に近いのかもしれない。空母が一隻いるだけで、その難易度は大幅に上がる。日本は珊瑚海で、学ぶべきだったのだが、あの時は迎撃側だった。その為、懲りなかったのかもしれない。しかし、図上演習の結果を見て、考え直せば、あるいは、ミッドウェー海戦は避けられたかもしれない。それが実行されたのは一重にあまりに勝ちすぎ、おごっていたからだろう。ハワイ奇襲から完全勝利しか知らない一航艦を見ると、無敵艦隊にしか見えなかったんだろう。


まあ、どちらにしても、日本軍が勝てる見込みはないとは思う。ミッドウェー海戦で勝利して、米空母の大半を撃沈したとしても、日本軍にハワイを攻略する事は難しいだろう。空母があっても、艦艇は圧倒的に足らない。そもそもハワイを攻略するには陸軍から数万規模の兵力を借りる必要がある。数万の将兵を運ぶ輸送船は? 護衛艦隊は? 中国大陸で戦争を継続中の陸軍が数万規模の兵力の引き抜きに賛成するのか? 例え、ハワイを陥落させたとして、ハワイを維持できるのか? 疑問だらけだ。


とにかく、生き残らなければ。僕の心はミッドウェー海戦で生き残る事にシフトした。以前よりレイやキュウの戦闘力は増した。レイなら空母2杯分の攻撃隊を撃破可能だろう。だが、敵空母は3杯いるのだ。万が一、祥鳳に敵戦力が集中したら…可能性はある。赤城、天城、飛龍、蒼龍が沈んで、祥鳳だけが生き残っていたら? 米軍は軽空母とはいえ、空母を見逃さないだろう。


「直掩隊に頑張ってもらうしかないか」


僕は一人呟いた。ユキのユウの対空砲火と祥鳳の零戦隊に頑張ってもらうしかない。幸い、零戦は12機ある。ユキやユウに誘導させて効率良く迎撃すれば、何とかなるかもしれない。


「そろそろ朝食に行くか」


僕はそう言って、着替える為に、ロッカーを開けた。


「……」


忘れていた。ユキだ。ユキはまた女の子座りをして全裸で僕のロッカーに忍びこんでいた。朝忍び込むのは初めての経験だ。大抵は夕方から夜だ。


ユキは僕と目が会うと、ニッコリ微笑んだ。いや、そんな素敵な笑顔されてもな…もちろん、アへ顔でダブルピースサインとかよりはいいけど。僕も最近、この心臓に悪いユキの露出狂に困ってきた。でも、


「どうしたんだ? ユキ?」


ユキは何故かもじもじしていた。いつもなら、この辺で服を着て、帰ってもらう処なんだけど。


「も、もう、らめ…」


「えっ?」


何が駄目なの?


「もう、げ、限界…」


「何が限界なの?」


ユキは謎の発言をすると、


「昨日の夜からいたの…」


「昨日の夜?」


そうか、今日は昨日の夜から潜んでいたのか。よくこんな狭い処に座り続ける事できるな。変な事に感心するも、僕はユキの言わんとしている事を十分に理解していなかった。


「限界まで我慢した尿意…ごほうび…」


「ちょ、ちょっと待て! 今尿意って!」


「ん、もう、むり、です…」


「いや、早くトイレへ! 頼むからトイレ行って?」


「ひ、ひぇん、お腹が圧迫しゃれてぇ、しゅ、しゅごい…もうらめぇ!」


そう言って、何かをやり切った様なさっぱりとした顔をすると、僕のロッカーの中で盛大に大洪水を引き起こした。


「……」


昨夜からずっと潜んでたのだろう。それで、漏らしちゃったらしい。


それにしても僕はユキの事を勘違いしていた。義人化兵器は2つの個性を持っているみたいだ。レイは表はドSお嬢様だけど、ホントはドM、キュウは後輩という設定だけど、ドM。そして、ユキはてっきり表は無口でコミュ障、裏は露出狂と思ってたんだけど、違った様だ。ユキは表はコミュ症で露出狂、裏はドM…全員ドMだ!? 裏も表も変態だなんて、ユキ、不憫だ。あ? という事はもしかして、ユウは表は幼馴染属性で、裏はドMかな…そういえば、今思えば、あの僕を転生させて、召喚士にしてくれた女神様、ドMだったよな。僕は何となく事態が飲み込めてきた。

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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