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ミッドウェー海戦1

昭和17年、西暦1942年5月27日、南雲中将率いる第一航空艦隊、第一航空戦隊赤城、天城、第二航空戦隊飛龍、蒼龍、第四航空戦隊分遣隊祥鳳、空母5隻からなる機動部隊を編成。護衛には戦艦榛名、霧島、重巡洋艦利根、筑摩、駆逐艦多数がついた。機動部隊の他には主力部隊、戦艦大和、長門、陸奥、空母鳳翔、水上機母艦千代田、駆逐艦他。第一艦隊、戦艦伊勢、日向、 扶桑、山城、軽巡洋艦北上、大井、駆逐隊他。ミッドウェー攻略隊の第二艦隊、戦艦金剛、比叡、重巡洋艦愛宕、鳥海、妙高、羽黒、空母瑞鳳、駆逐艦他。その他にも支援隊、護衛隊を擁する大艦隊だ。


僕は柱島を出港する前に第一航空艦隊の主要人物と顔を合わせる機会があった。連合艦隊司令長官山本五十六の計らいだ。彼は僕に珊瑚海海戦の戦訓を活かす為、僕の発言を求めた。僕は索敵の重要性、島嶼を攻略する際には島嶼の戦力だけではなく、空母の存在に注意する事、いや、島嶼を攻略する際には敵空母は必ずいるものと考えるべきなのだ。そして、索敵が遅れた場合、最悪、爆弾や魚雷を満載した母艦が敵攻撃隊の攻撃にさらされる危険について話した。


だが、僕の意見は源田実航空参謀長に潰された。彼は僕の言っている事は理解できた筈だ。だが、感情がそれを許さなかったのかもしれない。新しい兵種である魔法兵への無理解と嫌忌。僕は悲しかった。他でもない、航空畑の源田実がどれだけ砲雷屋から嫌忌されたか? 容易に想像がつく。他でもなく、僕の意見が航空畑の源田実を始め、多くの第一航空艦隊の主要人物の耳には届かなかったから。曰く、敵索敵機より我が日本軍が先に発見できない筈がない。空母の存在は索敵で判明するし、潜水艦部隊の索敵で動向が判明する。潜水艦隊を馬鹿にするのか? 空母に爆弾、魚雷を搭載した航空機を満載した状態で敵攻撃隊の奇襲を受ける際は我が零戦隊がたちまち撃破するだろう。直掩の零戦隊を馬鹿にするのか? と、言った具合だ。山本五十六長官がなだめてくれたものの、僕の評価はどうも最悪だった様だ。僕が20の青二才だった事、魔法小隊というにわかに信じがたい兵種だった事も災いしたのだろう。僕は沈黙するしかなかった。


源田実の猛禽を思わせる顔の他、気になったのは山口多門第二航空戦隊司令だった。彼は終始笑顔で僕の話を聞いてくれた。そして、優しそうな目の奥には狂気を感じた。闘将山口多門、ミッドウェー海戦でたった1隻、空母飛龍を指揮し、唯一反撃した男。武人としては素晴らしい。だが、僕は彼が怖かった。僕なら逃げるだろう。たった1隻で敵機動部隊に立ち向かうのは武人としては尊いだろう。だが、僕にはいかれた人間、少し狂った人間の様に思える。いや、戦争では平常に狂った軍人が役に立つのだ。彼は優秀な武人である事は間違いない。ただ、それに巻き込まれるのはどうか? という問題だ。例え米軍の三杯の空母の攻撃でも、僕は祥鳳だけなら守り切る自信がある。だが、それは祥鳳が山口多門の指揮下で戦う事を意味する。この戦い、僕は生き残れるだろうか?


柱島を出発して僕は少し暇になった。祥鳳の操艦は航海長と海老名中尉、平塚少尉が行う。僕は艦橋付きとはいっても、魔法小隊の指揮官なので、あまりやる事がない。ほんの数日前まで、艦長代理だったし、祥鳳の操艦もする必要があったので、そこそこ忙しかったのだが、今はあれが嘘の様に暇だ。そんな時、通路で、海老名中尉に会った。偶然ではない様だ。彼の後ろには平塚少尉もいた。トラックからの帰途の最中、平塚少尉も僕達に感化された。つまり死にたく無いという一派だ。


「不知火中尉、第一航空艦隊のお偉方はどんな塩梅ですか?」


「彼らは僕の言う事には耳を傾けてくれなかったよ。原少将あたりが発言してくれたら、かなり違うものになったと思うんだけどね」


「確かに中尉の不知火中尉が南雲中将や源田少佐に説明するのもちょっとしんどい話ですね」


「ああ、盛大に馬鹿にされたよ。若造の上、魔法小隊…魔法小隊事態信じてないみたいだ」


「つまり、インチキ臭い新興宗教の教祖の様に思われたのですか?」


「耳が痛いが正しくその通りだったよ。山本五十六長官の計らいは嬉しかったけど、戦訓はいかせなかった。つくづく原少将が僕の代わりに説明していてくれたら…」


「仕方ないですよ。原少将は今、横須賀ですからね」


平塚少尉だ。彼も、僕の意見を聞きたいのだろう。何せ僕達は死にたくない派なんだ。生き残る為の情報は欲しい。僕も彼らに期待する処がある。この二人は艦橋勤務なんだ。僕も艦橋で、魔法小隊の指揮を執る事になっているが、新艦長が果たして出撃を許可してくれるだろうか?


「ああ、これも歴史が変わったんだ。翔鶴は本当は損傷を受けて、呉で修理をするはずだったんだ。だから、もしかしたら、第一航空艦隊への説明は第五航空戦隊、翔鶴の原少将が行えたかもしれないんだ」


「翔鶴も瑞鶴も横須賀で補給を終えたら北方方面アリューシャン列島に行くらしいですよ」


「何処で聞いたんだ?」


海老名中尉が驚いて聞く。確かに少尉の平塚少尉の知っている様な事じゃない。僕は未来の知識として、翔鶴と瑞鶴が北方部隊、つまり、アリューシャン列島を防衛する為に派遣される予定があった事を知っているが、平塚少尉は何故知っているんだ?


「呉の街の飲み屋で話が出てましたよ。軍人も民間人もみんな知っている事ですよ」


「機密情報が駄々洩れな訳か…」


僕は思わず呟いた。これは僕も未来の知識で、聞いた事がある。僕達の第一航空艦隊だって、ミッドウェーへ向かう事を呉の民間人が知っているなど、あり得ない話なのだ。連戦連勝の日本は完全に浮かれていた。将兵が不用意に漏らしたんだろう。ミッドウェーどころか翔鶴や瑞鶴の事まで呉で知られている。こんな状態でミッドウェーを奇襲できる訳がない。敵空母はミッドウェーで迎撃していて当然な状態だ。スパイによって、情報がハワイにもたらされているだろう。例え、暗号が解読されていなくても、察知されても不思議はない。


「それはそうと、不知火中尉はどう行動するおつもりですか?」


「そうです。教えてください。私達の生存率に係わります。ミッドウェーで空母はみんな沈むのでしょう?」


「平塚少尉、僕達以外の人の前では絶対言うなよ」


「安心してください。米軍ならまだしも、味方にどうこうされたくは無いですよ」


「不知火中尉、士官では私と平塚少尉、飛行隊長の茅ヶ崎大尉だけにしか話してません。しかし、下士官は概ね私達の身内です」


「安心したよ。僕に感化されて、君達がどうこうなったらと思うとね…」


「そんな事より、不知火中尉の作戦を教えてください」


「ああ、とりあえず、魔法小隊で対潜哨戒任務でも志願して、魔法兵を艦長達に見てもらう。本物を見れば、僕達に好意的なるかもしれないじゃないかな」


「それはそうですね。前の祥鳳の艦長は魔法兵を全く信じていなかったですからね」


「信じてくれたら、ミッドウェーでは防空の指揮をとらせてもらう様に志願するつもりなんだ」


「防空だけですか?」


「僕がレイ達に敵空母への攻撃なんて言う命令を下すと思うかい?」


「私も実は、彼女達にそこまで頼るのはどうかと、あんな可憐な少女達にだなんて…」


海老名はレイ達を見かけた事がある。それが率直な感想なのだろう。


「でも、実際には凄い強さなんでしょう? 海老名中尉から聞きましたよ。レイさんが敵空母の攻撃隊を一瞬で一蹴したって」


「確かにそうなんだけど、弱点もあってね。一度戦うと大幅に魔力が下がるんだ。今だと二回戦うと危険だ。魔力が無いと、彼女達はただの人間と同じだよ」


「そうなんですか…レイさんが無双すれば簡単だと思ったんですが…」


「そうなんだ。そうじゃなきゃ、僕だって、珊瑚海海戦で問答無用で、敵機動部隊を屠むったさ。それが一番安全だからな」


「しばらくは艦長達との信頼を築くのが先ず大一だな」


「私達も協力します」


「私ももちろん」


海老名中尉と平塚少尉は協力してくれる。珊瑚海よりましかもしれない。

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