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戦争と戦争の間7

女神様に転生させられた僕は突然、目の前に魔法陣としか形容ができない青い光に包まれ、転移した。目の前の景色が白いものから真っ黒になり、周りに光の粒子が流れていく。そして、再び青い魔法陣が現れると僕はとある部屋の一室に転移した。


そこは、剣と魔法の世界では決してなかった。部屋の中にはあからさまに日本人、それもかなり昔の軍人の様な人がいた。部屋の中には軍人さんが一人、部屋は執務室なのだろう、たくさんの書物や書類、アンティークな調度品、かなりの上級軍人だろう。


「貴様、何者だ?」


軍人さんは僕に聞いた? 僕に聞く? 僕にもうまく説明できない自信しかない。それに人に聞く前に自分の方から先に名乗るべきだよね?


「えっと、不知火葵です。転生者です。信じてもらえないかな?」


「日本人なのか? しかし、青い光の中から現れるとは、貴様は妖怪か何か?」


僕は少し考えた。この軍人さんの話しているのは日本語だ。でも少し違和感を覚える。なんか古臭い様な気がする。何故か脳内に普通の日本語に変換されて理解できるが、音自身はまるで古い記録映画を見ている様だった。それに、壁に飾れた書は右から左に文字が書かれていた。ここはかなり昔の日本、それが僕のこの時の推測だった。だから、こう答えた。


「僕は西暦2021年から来た日本人です。転生人です」


「……」


軍人さんは黙り込んだ。にわかに信じられないだろう。実は僕も自身のおかれている状態が信じれない。しかし、この人の信用を勝ち取れないと、かなり面倒な事になるという事は容易に察する事ができた。それで、この人の事を聞く事にした。


「あの、できれば、あなたが誰なのか教えてくれませんか? それと今は西暦何年なのですか?」


「私が誰なのかを知らんのか? 本当に刺客等では無さそうだな。刺客がそんなに間の抜けた顔をしておるとは思えぬ」


酷くねぇ? この人? 顔で判断するな!


「私は海軍連合艦隊司令永野 修身、昨年までは海軍大臣をしておったのだがな。それと今は西暦1938年3月5日、昭和13年3月5日だ」


「教えて頂いて、ありがとうございます。実は僕は未来から来ました。信じられないかもしれませんが、神様の気まぐれで、この世界に飛ばされてきました」


「神様の気まぐれで、未来人が? それに転生とはなんだね? 聞いたことがない言葉だ」


「転生とは、違う世界に生まれ変わりをさせられる事です。僕の場合、西暦2021年から1938年に転生させられました。ここに転生したのは神様の意向です。神様は転生しても僕が困らない人の元へ転生させると言っていました」


永野 修身、後の軍令部総長にして、連合艦隊司令長官にして元海軍大臣、歴代の軍人で三役を全てこなした唯一の海軍軍人だ。僕はとんでもなく有名な人の前に転移した様だ。でも気をつけないと、この時代の人の事は良くわからない。僕は当然戸籍もなく、突然目の前に現れた不審者なのだ。下手するとスパイ扱いで牢獄につながれて、自白させるために拷問が待っているかもしれない。僕は無実というか、唯の転生人だから自白できないから、その時点で死亡フラグが立ちそうだ。


「未来から来たと言ったな? 本当なら、極めて重要な人物だ。君の知っている未来を教えてくれないか? もし、君が本当に未来人なら、手厚く遇しよう」


「わかりました。僕の知っている事を話します。その代わり、命の保証をお願いします」


「うむ、本当に未来から転生してきたのなら、それが一番重要だな。君の未来の話が本当なら、善処できる」


僕は話し始めた。これからの日米開戦、ハルノートから日米開戦に至る経緯、そして、日米間の戦い、そして、日本が敗戦する事、そして、日本が戦後大復興を遂げ、世界第二位のGDPになる大国となる事、その後中国にGDP第三位を奪われて、現在は日本はアメリカと同盟を結び、中国とは年々きな臭い状態になっている事を話した。


「やはり、日本は負けるのか…」


「信じてくれるのですか? 信じたくない事と思うのですが…」


「いや、私もたいていのまともな海軍軍人は米海軍に簡単に勝てるのだなどと思っておらん。日露戦争の日本海海戦では勝ったが、あれはロシア革命前夜の血の日曜日が発生していたからで、ロシアが和平のテーブルについてくれたのだ。それが無ければ、簡単に勝利なぞできん。外部要因で勝った戦いに乗せられて、皆、精神論の様なものに支配されておる。弱気な発言、いや、慎重論が検討の余地もなく否定される世の中なのだ」


この人、やはりまともだ。良かった。女神様はどうやら、まともな人の処に転移させてくれた様だ。女神様はまともじゃなかったけど…そうじゃなかったら、今頃切れて、日本刀で斬り殺されていたかもしれない。


「僕は永野さんの力になれるんじゃないかと思うのですが、僕をかくまってくれませんか?」


「そうしたいのはやまやまだが、私一人で君をかくまう事は難しい。本当に未来から来たのなら、戸籍もないのだろう?」


「はい、僕の戸籍はないと思います。未来で生まれた訳ですし。怪しさ満点ですよね?」


「うむ、すると先ずは戸籍が急務か、だが、私は偶然とは思えないのだが、あてがある」


「何ですか? あてって?」


「私の知人の息子さんが亡くなってな。名を不知火葵という」


「えっ?」


「偶然ではないのだろう。それに葵だなどと聞いた事の無い名だ。最初ととても不思議に思っていたのだが、君の出現で何となくわかった様な気がする」


「それはつまり…」


「ああ、知人に頼んで、君をこの世界の不知火葵にしよう」


彼はそう言った。こうして僕はこの世界の不知火葵になった。その後、永野連合艦隊司令長官とはプライベートで会い、何度か未来の知識を彼に教えた。だが、僕も全てを網羅している訳ではないし。この世界は僕の世界とは少し違うパラレルワールドな事がわかってきた。結論として、僕の知識は参考意見としかならないという事になった。確かに僕の知識では、太平洋戦争は航空機が全盛となる。だから、起工済の戦艦大和を空母に改装したり、未起工の武蔵の建造を取りやめて翔鶴級の三番艦を建造したりという事はなかった。だが、僕の参考意見は細かい範囲では、取り入れられそうだった。僕の意見を元に検証がされる。論理的に考えれば、簡単にわかる事も多いのだ。多分、僕の一番の最初のお手柄は、日本海軍航空隊にドイツ空軍の様に2機を最小単位とする戦法ロッテ戦術が導入される。同時にその派生戦術シュヴァルム戦術も導入される。永野はその後のドイツ軍の第二次大戦の戦術を確認し、海軍内部で討論させた。実際に日本の独自戦法の3機小隊の戦闘機と2機小隊の戦闘機を12機vs12機で何度も戦わせて、模擬格闘戦でロッテ戦術の有効性が確認された。


その他にも艦艇のダメコンの重要性を理解し、永野は海軍艦艇に予めダメコン要員に何をすべきかを徹底させ、被弾時の研究を徹底させた。


それだけではなく、航空兵の育成も予定の1.5倍にする方向になった。航空機は数が足らないが、将来の搭乗員不足になる事は明白だ。これについては海軍の航空機派も戦艦派も同意した。何故なら、航空機派は戦力を上げるのに有利だし、戦艦派は戦艦への航空機の攻撃で航空機が消耗するのは当然という見解を出した。だから、意外と簡単に航空機の搭乗員の大量育成が昭和14年から実行された。

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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