episode.2
「っ…!!」
少女は急いでフードを被り、その場から走り去ってしまった。
「あっ……!!」
エリオットの伸ばした手は、空を切る。
「……」
それから城に戻ったエリオットはどこか上の空だった。
彼女のことが頭から離れないのだ。
とても、とても美しい竜族の少女。
薄紫色の長い髪。翡翠の瞳。
そして、黒曜石のような角が印象的だった。
「(……どうすれば、もう一度会えるだろうか…)」
考えを巡らすが、どうにも方法は見えてこない。
それもそうだ。一目会っただけなのだから。
「……はぁ…」
エリオットは深いため息をついた。
後日。
第二王子の兄、アレンがエリオットにこう伝えた。
「エリオット!
喜べ。ついに竜族の国との交流の兆しが見えてきたぞ。」
「本当ですか、兄上!」
「あぁ。
何でも、我が国の者が竜族の姫君を助けたらしい。
是非礼をしたいとのことだ。」
「竜族の姫君…」
「そこで、父上はお前を共に姫君に会わせると言っている。
もちろん、お会いするだろう?」
「はい。そのお話、お受けします。」
「そうか!
では父上に報告しておく。
もしかしたら姫君と婚姻を結べるかもしれないぞ?」
「はは…ご冗談を。」
第四王子であるエリオットには、まだ婚約者はいない。
兄と父は、ここで姫君と婚姻を結べと言っているのだろう。
だがエリオットは、どうにもあの少女が気になっていた。
「(未熟者だな、俺…)」
エリオットの「あの少女に会いたい」という願いは、この後思わぬ形で叶うことになるのだった。
続