episode.1
夢を見た。
「母上、妖精族と竜族の共存はできないのですか?」
「そうね…少し難しいかもしれないわね。」
「それなら、僕が二つの種族の架け橋となってみせます!」
「ふふ、楽しみにしているわ。」
ーーーー
「…………」
青年はゆっくりとベッドから起き上がった。
彼の名は「エリオット」。
妖精族の国の第四王子である。
美しい水色の髪と瞳を持つ、麗しの貴公子だ。
「…"二つの種族の架け橋"、か…。」
エリオットはそう呟くと、ため息をついた。
「(架け橋になる為には、まだまだ勉強が必要だな…。)
よし、今日は街の様子を観察しに行こう。」
寝巻きから着替え、彼は街へと繰り出した。
この世界には、妖精族と竜族と呼ばれる種族が存在する。
竜族は、妖精族には無い竜の角と尻尾が特徴的である。
性格は大人しい者から血の気の多い者までいるらしい。
次に妖精族。
妖精族は尖った耳と高い魔力が特徴だ。
性格は竜族の説明とそう変わらない。
妖精族の国と竜族の国は隣合っていたが、交流はまだ極めて少ない。
エリオットには、「双方が手を取り合い、仲良くして欲しい」という幼い頃からの夢がある。
彼は種族の架け橋になる為に勉強をしているのだった。
……と、言っても第四王子であるエリオットの立場は弱い。
兄達に"竜族の国ともっと交流をもちたい"と伝えても、夢物語だと笑われてしまった。
「(どうすればいいんだ…)」
正直、エリオットは行き詰まっていた。
すると。
「や、やめてください…!」
「俺達と遊ぼうぜ、お嬢ちゃん。」
「そのフードも外して可愛い顔見せてよ〜。」
目にとまったのは、一人の少女が男二人に絡まれている光景だった。
エリオットは彼女を助けようと、少女と男達の間に割り込んだ。
「やめなさい。
その子は嫌がってます。」
「アァ?なんだお前…?」
なんと柄が悪い。
これは帰ったら兄達に街の治安を報告しなくては…なんて考えていると。
「おい、無視すんじゃねぇよ!
お嬢ちゃん、俺達と一緒に行こうぜ。」
男たちが少女に手を伸ばそうとした瞬間。
「だから、嫌がっているでしょう。」
「なっ…!?なんだコイツ!?
とんでもねぇ力っ……いてててっ!!」
エリオットは男の手をひねりあげた。
「このまま交番に突き出してしまいましょうか。」
「チッ…!!行くぞ!!」
男達は急いで逃げていった。
「……ふぅ…大丈夫ですか?」
「は、はい…助けていただき、ありがとうございます。」
「いえ、お気になさらず。」
その時。
強い風が吹き、少女の被っていたフードが外れた。
「あっ……!!」
「!!」
エリオットは少女に釘付けになった。
なぜなら……
「竜、族……」
彼女には、竜族の角が生えていたのだ。
続