第十三話 雪解け
「ううっ、これが試練か」
今日は、あの日から1週間経った、大会の日である。今日、六番隊の隊員が全員観戦するらしい。
12人とは初顔合わせである。
だが、俺の試練はそこでは無い。
目の前にあるこの穴である。
今、物置きの中にいる。
中に入るのは一苦労であった。先に荷物を中に入れて置き、目を瞑って中に飛び込む。
毎度毎度このスピードには慣れない。
今度は綺麗に足から着地することが出来た。
そこには、ヤンキーとかヤクザとか言っても違和感のない面子が集まっていた。
「おう!田中!これが例の…?」
中でも、金髪で耳にピアスをしていて、何故か手のひらに刺青がある青年が目の前にいる。
まだ、25くらいにみえるのに…
「おうよ!武!これが俺らの後輩の紫月クンだ」
何やら自慢げに俺の事を言っている。
「なぁ、紫月クン。俺ら!後輩っつーもんが今まで居なくてよ!俺は25でお前が来るまで最年少だったんだ!だから是非とも、武センパイと呼んでくれ」
「うっ、武…せんぱいっ」
「ありかとよ!!紫月」
押し負けてしまった…でも、こうやって求められるのは久しぶりだな…
「お、俺もっ」
「おい、ぬけがけすんな」
「わ、私も…」
「はいはーい、俺も俺もっ」
「僕も出来れば、、」
「ええい!お前ら!静かにしろ」
隊長と副隊長が現れた。
「今から、大会が始まるんだ!また、はしゃぎすぎて壁壊してないだろうな。」
副隊長は、武先輩をみる。
そして、
「え、俺、今回はやってませんよ」
今回は。ってやったのかよ。でも、やりそうだな〜
「あ、紫月君!改めて、六番隊へようこそ!
君は、のびのびしてくれていい。君の小学校での事情とか性格とかはもう大琥から聞いてるよ。
ここは、結構な暴れん坊が揃ってて、君が
年相応でないことなんて、この面子に比べたら大したことなんかじゃない。
君は自己評価が低いんだ!ここにいる全員が君の事必要だと思ってるし、大切なんだ!」
皆、ぽかーんとしている。何を当たり前なことを言ってるんだといった感じ。
俺は、今聞いたことが信じられなかった。
俺は、親と遊んだ記憶はそこまで無いし、
小学校でも友達なんかいなかった。家でトレーニングとかハンターの情報を探ってる方が楽しかった。学校のテストは難なく満点を取れたし、運動もできる方だったから、困ったことなんてない。裏で妬まれてこそこそ言われてたのは先生も気づかなかった。親にも言ってなかった。それが原因でひねくれたのかもしれないと今では思う。
ここでは、憧れの人達に囲まれてマシになっているが、いつボロがでるか分からない。
今、こんなにも喜んで貰えて、素の性格がでたら
どんな反応になるかって。
「いやー、俺は別にお前の事嫌いになんない!
これは絶対!たかが、口が悪いだけだったり、ちょっととんがってんのってすぐなくなるし、
むしろ、それでも俺は喋りやすい。」
「うん。だって、ここにいるほぼ全員口悪いしね〜、何かしら持ってる奴しか居ないんだし。
その歳でとんがってるって反抗期でしょ。」
「別に気にしないよな、俺らの可愛い後輩に変わりは無い。」
口々に賛同する声が上がっていく。
反抗期、、初めて言ってくれたなぁ。そんな言い方。軽蔑してない。
「ほら、ね。君は気にしなくていい。
ここは、今日から君の職場で、家なんだから。
家族みたいに思ってくれていい。」
「あ、ありがとうございましゅっ」
気付いたら泣いてた。