第九話 真実
「それにしても…広いなぁ、本部。
どこだ、モニター室は。」
俺は鎌を入れた大きなリュックを背負い、本部を右往左往している。
色んな色のケープを羽織ったハンターがすれ違う度に、「な、どうしたんだい?迷子かな?」
と言ってくる。もう、うんざりだ。
「すみません、入閣試験を受けたんです。」
と言うと、
「す、ごめんなさい。迷子じゃなかったんだね」
と言われる。だが、浮き浮きしたりもする。
黒いケープを羽織ったハンターに話しかけられた時は、さすがに、緊張した。だって!実力派の一番隊だぞ!誰だって、緊張するんだ!
なんていうんだ。何か風格が…とにかく!凄いんだ。本部を色んなハンターに声を掛けられながらも、さまよっていたらモニター室という札がかかった部屋にたどり着いた。部屋の壁に大きなモニターがあり、それを遠巻きに様々な色のケープを羽織っているハンターたちが見ていた。だが、そのモニターの真ん前に2人の月白のケープを羽織ったハンターが陣取っている。
見るからにして、零番隊の隊長と副隊長か?
名前もどんな姿なのかも、外部の人達には知られない。伝説の2人組。会ってみたいなぁ。
そうだ!もし会話出来るなら父と母のことを聞いてみよう。そういえば、俺の両親は出勤しているのだろうか。流石に外からでは中にいるハンターたちの顔までは見えない。俺は、部屋に入るのが恐ろしくてその場から目を凝らす。すると、その画面には先程までいた教室で受験者たちがヴァンパイアもどき相手に討伐している映像が映し出されていた。
ひぇ〜、も、もしかして、モニター室にいる大勢のハンターたちに見られてた…?
そんなことがあるものか。恥ずかしくて死んでしまいそうになる。でも、田中さん…モニター室で先輩方が待ってるとか言ってた気がする…はぁ見られていたと思って間違いなさそうだ。あぁ、消えてしまいたい。でも、入らないとだもんなぁ。
この部屋に。静寂に包まれた部屋に足を踏み入れる。俺が最近買ってもらった運動靴のキュッキュッという音がそこに響く。完全に場違いだ。
「っ、あの、田中さんに言われて来ました。赤島紫月ですっ。何故呼ばれたのか教えて貰っても…」
よく見ると、全ての隊から集められてるじゃないか。深紅、深碧、不言、小紫、白銅、黒、月白。
やべぇ、興奮してきた。
「おい!お前!どうやったんだ!あの100体。」
「本当にみえなかったんだけど、ねぇ。」
「俺たちでさえ、あんな動きは出来ない。流石だ。」
色んなハンターに質問責めにされる。
「う、ええっと、ズバッとジャンプして、バッと鎌振って、立つ…です。」
そう言うと、、、皆さん黙り込んで
「まぁ、こうなるよなぁ。まるで誰かさんみたい…」
そう言って、モニター前に未だ陣取っている2人に視線をやる。
「…君が、今回の一位抜けか。おめでとう。
最年少で受かったのも素晴らしいが、なんといってもその、並外れた技術力を持っている。」
「ねぇ。稀な秀才クン、君はどの隊にはいるのかな?」
零番隊隊長、副隊長に言われる。
だが、頑なにまだモニターを見ている。
「そ、そういやぁ、あなた方の隊に俺の両親がいるんですけど知りませんか?大琥と、姫紗里って言うんですけど…下っ端だったらすいません」
しばらく部屋が静寂に包まれる。
だが、
「ぷっ……ごめんっもう俺我慢の限界だわっ
はははっははっ」
急に隊長さん?が笑い始めた。
それに合わせたように周りまでくっくっと笑い始める。
「早く…気付けよっ、何でお前は肝心なとこが抜けてんだよっ紫月、くっくっ」
ん?呼び捨て?知り合いか?
「まだ、気付かねぇのか。」
2人が振り向く。その顔を見て、確信に変わった
「父さん?…と母さん?」
「気づくのおせぇよバカ息子。流石だな。
合格するなんて思ってもなかった。知らせを受けた時びっくりしたよ。」
「ホントに。よくやってくれるねぇ最近までランドセル背負ってたのに…」
勢いよく抱きついてくる。
「は、離せよ。恥ずかしい。っていうか、なんで今まで言わなかったんだよ。自分たちのハンターでの立場。」
「そりゃあ。恥ずかしいしな!」
「なんだよ。それ」
「で?どこに入隊するんだ?紫月。ここに揃ってんだぜ!全隊長が。おっ!そろそろ他の合格者も来るぞ!」
「ここ?ですか?って、げっ!紫月じゃねぇか
なんでそんな、ハンターに抱きつかれてんだ…あっ!大琥さんだ!すいません」
「あぁ、気にしなくていいぞ。70点君」
「ん?70点って?」
「あぁ、今のテストの点数だよ!他のやつも、入って来いよ!」
「は…い…お邪魔します」
「やべぇ、凄い面子だ」
「ヤバい、緊張するんだけど…」
「さて、これで全員揃ったな!君達は、合格者だ!今回の試験ではまぁ、このバカ息子は置いといて、皆!凄い実力だった。有馬君は80点、神楽坂君は70点、三河君は60点、星川君は50点。凄いじゃないか。どの隊に入ってくれるのか皆期待している。」
「「「「で、そちらのバカ息子(紫月)さんは?」」」」
「ええっと、、、これ言っちゃっていいの?」
「はー、いいんじゃないですか。別に」
「………それぞれの隊長に得点してもらって、600点だ。。。」
「「「「………」」」」
「ん、じゃあ、気を取り直して!どの隊に入るか聞かせてもらおうかな?その隊長が拒否したは、違う所になるんだけどね」
「ん、じゃあ紫月行け!お前の場合!どの隊に入っても文句なしだ」
「本当か?俺!まぁ、いいけど」
「俺は! 」