第八話 励む者
神楽坂side
「ね、ねぇ。いつ…殺ったの。100体も…」
僕は彼に問う。
僕は、自分の剣で奴らを切り裂こうとした。
でも、その時奴は居なくなっていて、一斉に奴らの首が落ちた。瞬殺されたような死に方だった。
彼が殺ったのは確かだと思う。
だって、僕達の頭上から自身の白いTシャツを真っ赤に染めて降りてきたのだから。僕は思った。
奴は化け物。ヴァンパイア達にとっての死神になるんだと。
でも、何としてもどうやって殺したのかを聞いておきたかった。
「え、殺ればよかったんだよね。こいつら。
ヴァンパイアは、可哀想な生き物だ。
早く殺ってあげないと苦しむだけだよ。
だから、一瞬で殺ったんだ。」
僕はそういうことを聞きたかったんじゃないと思いつつ、奴の言っていることの意味を分かろうとした。が分からなかった。
僕らが討伐すべき対象である、ヴァンパイアが、
可哀想な生き物?どこが可哀想なんだ。人々の脅威であるヴァンパイアだぞ!
早く殺らないと苦しむ?
ヴァンパイア相手に感情的になっていいものか。
だから殺った?だから、どうやって!
意味が分からない。
そうだ。奴が持っているその道具は死神のような
大きな鎌。飛んで思い切り降ったら…一瞬で奴らを討伐できる…か。
でも、そんなことができるのか!まだ13歳の少年に!そうだ。奴とは言えどまだ13歳。
まだ、少年じゃないか。
でも、こんなことを考えて自分の実力が、彼よりも遥かに劣っていることを紛らわそうとしているのかもしれない。
「っていうか。もう倒しちゃったんで俺は退出していいですかね。」
奴、紫月が慌てて入ってきた田中さんに言う。
田中さんも現状を把握しきれず、戸惑っているようだった。
「お、おう。1階にあるモニター室に行ってこい。先輩方がお待ちだ。お、お前らは引き続きここに残れ。もう1回、紫月無しでやることになったから。」
「じ、じゃあ失礼しまーす。」
紫月は、13歳らしくぺこりと頭を下げて教室を出ていった。
多分、紫月は零番隊にも入隊できる程の実力を持ち合わせている。一体どの隊を指名するのだろうか。僕も、紫月に会うために精進しなければ、、