半妖我天:その9
「あの、立ってどうしたら?帝斗さん…?」
「うん?あぁ、すまん、俺たちが使う力は
この地から貰っている」
「地、ですか…?」
「なんというか、俺も説明が上手い方じゃ
ないからな…地というのは陽と陰に分かれていて
普通に生活していて、妖怪を視る事も出来ない人間は
殆どが陽の人間だ」
「人間も陽と陰に分かれているんですか?」
「そうだ、そんで、俺たち陰陽師や妖怪は
地の陰の力を貰ってる。陰の力が強くなると
この世の中は昔の、妖怪が好き勝手跋扈してた
時代に戻っちまって、均衡が保てなくなる」
「陰と陽…じゃあ、僕は陰の力を
貰ってるんですね…」
「そうだな、お前たちの一族は、その血もあるが
もともとは高い妖力をもつ一族だったから」
その血と、その妖力のせいで、神の生贄に
されてたなんて…陰陽師にとって自分たちの
生業に邪魔になると思ったから、そうされたとしか
俺は思っちゃいねぇが…。
「あの、帝斗さん…」
「なんだ?難しいか?俺も教えるのは得意じゃ
なくてな…てっとり早いのは師匠に教えて
貰うことなんだが…」
「いや、あのっ、そうじゃなくて…
僕、自分の一族のこと何も知らないんです。
物心ついた時から、あの環境が当たり前だったので
この血のこともそうですけど、妖力の事も…
僕は、自分たちについて何も知らないんです」
「それは、お前…」
【神贄一族は、隠された存在だから】
なんて、こいつに伝えることは出来なかった。
「だから、少しでも帝斗さんの知ってる
僕の一族のことを…教えてほしいんです。
なんとなく、知ってはいけない事なのかな、とは
幼い時から思ってたので、言える範囲で良いんですけど…」
自分の一族の真実を知ることが、こいつにとって
良い事なのか悪い事なのか、なんて、正直俺に
決める権利はない。だけど、その真実を知ってこいつが
傷つかない訳はないだろう。
それでも、きっとこの先、こいつに真実を伝えられるのは
きっと俺しかいない。伝えた後の選択をこいつが
どうするかはわからないが、たぶん、この真実は
伝えてやるべきなんだろうな。
「あぁ、分かった、だが、お前がしっかり
妖術を学んでからだ、それでいいか?」
「…はいっ!ありがとうございます!」