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半妖我天  作者: ここめ
6/9

半妖我天:その6


話が終わって、広間に戻る。

相変わらずの周りの視線にも、もはや慣れてきた。


「あん?あの餓鬼大人しく待てもしねぇのか…」


はぁ、あいつを探さないと帰れねぇ。

なんて思ってたら、北東の方で、嫌な気配がする。


(何だこの感じ…急に妖気が現れた…鬼門か…?

 あぁ、嫌な予感がするぜ、まったく)


急いで向かうとそこには、案の定、鬼に追われる丹把がいた。



あの餓鬼、生きることを諦めた様な顔しやがって。

そういうやつが1番嫌いだ。

ましてや、さっきあの人からあんな風に頼まれた

ばっかりだってのに、だ。


「…っおい、糞餓鬼!!なにもう死んだような面してんだっ」


呆けた面で俺の名前を呼ぶこの餓鬼。


俺が助けてやったのに、そんなにすぐ

死のうとするなんて、俺がぶっ殺してやろうか。


それにしても、久しぶりに動くと気分がいいな。

糞餓鬼が呆けてる間倒して、いつの間にか

遊朴まで来ていた…散々丹把を怒鳴り、少し

言い過ぎたか?と思いもしたが、溢れる言葉は止まらなかった。





「帝斗、わざとでしょ?」


こいつの変に勘がいいところが、嫌いだ。


「丹把くんにあんな風に怒ったの、わざとそうしたんでしょ?」


あいつが俺のところに来てから半年、俺の言うことを

よく聞く。それと同時に思うことがあった。


こいつは一度でも感情をしっかり出したか?泣いたか?

この歳の餓鬼にしては、妙に落ち着いていて、家族も仲間も

皆殺しにされたというのに、泣いた所を見ていない。


こいつを強くするには、きっと…

最初に超えないといけない部分だと。


俺がそうだったから。


化け物だと、こんな奴早く殺してしまえ、と。

どれだけ言われても、俺は何も感じなかった。

今思うと、いつ死んでもいいと思っていたんだと思う。

生きていても意味がない、感情一つ出すことも無駄なこと

そう思っていた。だけど、あの人が…


この宇賀裏一族の総代、宇賀裏要うがりかなめ


最初は面白がっていたのかと思った。

こんな俺をかばって、俺と話して、怪我すれば心配して

他の人間と同じ様に、あの人だけは扱ってくれた。

そんな幼少期、俺のことを忌み嫌う連中から

攫われて、殺されかけた。その時初めて

”死にたくない”と、思った。



死ねば、あの人ともう二度と話せない。それだけは嫌だ。



その時初めて、自分から助けを求めて、あの人が助けてくれて

死ななくてよかった、と、二人して泣いた。


それからは、生きることに対して、とことん貪欲になった。

どんな奴にも負けないように、勝ち目がなかったら逃げてもいい。

ただ、生きてさえ、いれればいい。

そう考えるようになってから、周りの奴らの言葉なんて

なんとも思わなくなった。前のように、感情を出すのが無駄だから

とかではなく、だからなんだ、と。鼻で笑ってやれる様になった。




こいつは、上手く生きようとしている。でもそれと同じくらい

なんで、自分だけ生きているんだ、と思っているはずだ。

なんで自分だけ生きているのか、と。



お前は生きていい、もっと惨めに生きたいと願っていい。

お前が歩くその道は、お前のものなのだから。





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