半妖我天:その5
「俺は少し話さないといけねぇが、お前は待ってろ」
「あ、はいっ!わかりましたっ」
丹把にそういった後、俺は他の奴らから
「宇賀裏様」と言われている人のところへ向かった。
この大きすぎる屋敷は、毎回迷子になりそうになるが
あの人のいる場所はいつも決まっている。
屋敷の一角、ここだけ誰も寄せ付けないように自ら
結界を張っているようだ。俺が来たことは、気配で
分かるらしい。
「よく来たね、帝斗」
「こっちだって本当は来たくねぇよ」
「はははっ、そんな事は言わないでおくれよ
僕はお前に会える事を、毎回楽しみにしているんだから」
はっきり言おう、俺はこの人に弱い。
小さい時から、親がいない俺にとって、親代わりの様な人。
周りの奴らが俺を嫌って近寄らくても、この人は。
この人だけは、いつも俺の見た味方をしてくれた。
「あの子のことについて、話しておこうと思ってね」
「丹把か…なにかわかったのか、あいつのこと…」
「帝斗も知ってると思うけど、あの子は神贄一族の子だろう」
「あぁ…知ってるよ…読んで字の如く、だろ。
俺が一番嫌いな奴らが、あの一族に群がってやがる」
「そうだね…昔から、神贄の一族は人柱や妖怪に対する生贄に
されてきた、彼らの持つ血が、それは特別なものだったからだ。
その一族も半年前に囲っていた陰陽師もろとも襲われて全滅…」
「見ても行ってもないが、惨い有様だったんだろう?」
「あぁ、宇賀裏の者が向かったんだがね…人型として
残っている者はほとんどいなかったよ」
「何の仕業か、まだわからないんだろう?」
「そうだね…まあ、一つ言えることは、普通の人間の仕業じゃ
ないってことくらいかな。妖怪か、将又、他の陰陽師か」
「他の陰陽師…妖怪だけじゃないんだな」
「帝斗、これは私と宇賀裏のごく一部の者、しか知らない事だが
囲っていた陰陽師は私達宇賀裏一族の末端、鴨台一族だ。
そして、その鴨台の屋敷に、血まみれで破れていたが、一枚だけ
千蛇一族の式札があってね…」
「…千蛇一族?なんであの一族が今更…」
「正直、どんな理由であんな惨劇があったのかわからない。
でもね、千蛇が絡んでいるとなっては、話は別だよ。
早急に全容を突き止めて、終息させ無ければいけない」
「…だから、俺なのか」
「ふふっ、そうだね、僕の立場じゃ自由に動けない。
それに信用できる者も限られている。
帝斗、お願いできるかな?」
「はぁ、わかったよ、わかった!
頼むから、下手に出るような事はしないでくれ!」
俺が、断れないと分かってやっているんだから
この人も本当に、人が悪いよ…。
「兎に角、帝斗は千蛇の動きを掴んでくれないかい?
あと、あの子を守ってあげてほしい。
狙いが何であれ、きっとまたあの子は狙われるだろう…
それまで彼を守り、力をつけさせてあげてほしいんだよ」
「子守は好きじゃねぇんだがな」
「きっと一人残されて、あの子も不安だろう
頼んだよ、帝斗」