半妖我天:その3
遊朴さんに言われ落ち着いた。
とはいえ、もうあの大広間に戻ることも出来ないし
この庭で何をしていたら…。
「僕ちょっとお団子取ってくるよ、あんまり
うろちょろしないようにね、ここは陰陽師の屋敷だけど
どんな妖怪がいるかわからないから」
本当にお団子が好きなんだな…あぁ、違う。
「わかりました、大人しくしてます」
僕がそう言うと、遊朴さんは大広間の方へ消えていった。
半年たって、わかっているのは、僕が帝斗さんの
式神達と何ら変わりがない、と、言うことだ。
「はぁ、これじゃ何の役にも立ててない…」
ガサガサガサッ
「うわぁあぁ!!な、なんだ誰だっ!」
遊朴さんが言っていた事を思い出し、少しうろたえてしまった。
前に襲われたことを思い出し、帝斗さんを呼びに行こうとも
思ったが、そう何度も迷惑をかけるわけにはいかない。
ゆっくり、なるべく気配を殺して…広間に戻るんだ…
そう思い、ゆっくり後ろに下がると。
ガサガサッ、バッ
「わぁあ!!あ、な、なんだ…お前かぁ」
そこには見たことのある猫。いや、怪猫が居た。
「やめてくれ、僕はすぐ怖がってしまうんだ…
頼むから驚かさないでくれ!?」
妖怪の猫相手に、何を言ってるのか、とも思うが
まあこれでわかってくれたと思おう。
「ところでお前は、どこから来たんだい?」
「ニャッニャッ」
なんだ?何を伝えたいんだ?というか
喋れない怪猫もいるのか。
「はははっ、普通の猫みたいだな」
手を伸ばそうとしたら、触るな!とでも言わんばかりに
爪を立てられて、どこかへ逃げて行ってしまった。
「うわ、いててっ」
また、帝斗さんを待つまで退屈な時間が流れる、はずだった。
パキパキッ
枝は折れる音がする。先刻の怪猫より
大きい動物でもいるのかと思い振り返った。
「…えっ…」
「…ア”ア” ウマソウナ ニオイガスル」
動物、なんて可愛いものではなかった。
なんでここに、牛鬼がいるんだ。
まさか、もしかして、この血で、か…?
よだれを垂らしながら、鋭い牙の生えた口を開けた
顔がこちらを見ている。
「お前は喋れるのかよ…っ」
あの怪猫は、これを伝えたかったのか?
だったら、喋ってくれよ。
僕は二重にあの怪猫を恨んだ。
戦うすべを持たない僕は、逃げるの一択しか無い。
駆け出した僕の後ろを、凄い勢いで追ってくる。
あぁ、それにしても僕はとことん馬鹿だ…。




