半妖我天:その2
「おいっ、いくぞっ」
「は、はいっ!」
帝斗さんに助けられてから半年、最初の方に1度だけ
来たことがあるけれど、正直あの頃は自分が、これから
どうなってしまうのかという不安と、ただ生きることに
必死過ぎて、ほぼ記憶なんかないけど…宇賀裏邸は本当に大きい…
「おや、帝斗じゃないか」
話しかけてきたのは、たしか前に来た時、僕以外で帝斗さんに
話しかけている人、という印象だった遊朴さんだ。
知り合いだと思ったが、そうではないらしい。
「うるさい、俺に話しかけるな」
「なんだよ、冷たいなあ、君は誰とも関わらないくせに
ちゃんと本家の集まりには、参加するんだね」
「無視しても呼ばれるんだ、来るしか選択肢がない」
「ふふふっ、宇賀利様も強引だねぇ」
遊朴さん以外、帝斗さんには誰も話しかけない。
それどころか皆、口々に…
「なんであいつが居るんだ?」
「宇賀利様も物好きだ…この召集に化け物を呼ぶなんて」
「やめろ、あいつは人でも妖怪でも関係なく殺してくるぞ」
これだけ聞いていれば、帝斗さんは何をしたのだろうか?
なんて疑問が僕の頭に浮かぶ。
「…い、おいっ、丹把っ!」
「‥えっ?は、はい!」
「俺は少し話さないといけねぇが、お前は待ってろ」
「あ、はいっ!わかりましたっ」
確か前のときも1人にされたなぁ。
あの時は全然気にならなかったけど、今は視線が痛い。
帝斗さんに向けられていた、陰口も、今は僕…。
「あいつがか?」
「あぁ、あの、希血を持つ一族の生き残りだとか」
「今では化け物の飼い猫か」
「そのうちあの小僧も、化け物が食べちまうんじゃないか?」
僕の事はなんて言われてもいいけど、命の恩人の
悪口を言われるなんて、僕も溜まったものじゃない。
「あのっ、帝斗さんはそんな人じゃ…!!」
「丹把くん〜〜、僕と庭に散歩でも行こうか〜〜
ほ〜ら、美味しそうな月見団子〜満月じゃないけどね〜」
「へっ、あ、遊朴さんっ」
言い返そうとした時、遊朴さんに腕を引っ張られて
気づけば屋敷の中にある、庭に連れて行かれた。
「ほら、口を開けて、お団子美味しいよ?」
「い、いりません!僕は、あの人達に少しは文句言わないと!」
「あまり騒ぎを起こすんじゃない。
帝斗はただでさえ、ここに来たくもないんだ。
君は帝斗が戻るまで静かに待つ、それが最善だろう?」
そう言われれば、確かに。そうだ。
「それは…そうですけど…というか、なんで帝斗さんは
あんなに、その、嫌われてるんですか?」
「う〜ん、それは僕の口から言うよりも、ちゃんと
帝斗に聞いたほうがいい話だよ。
ま、帝斗が話せばね?」
僕はまだ、深い話をされるくらい、帝斗さんに
信用されてないということなのか。