マフィア編 ②
屋上に筋肉ムキムキの銅像が建つ、趣味の悪いオフィスビルの最上階、女マフィアの石動狂子は鏡と睨みあっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
15の頃に転んで、たまたまうまい具合にあった石によって出来てしまった左目の傷。
その縫い跡。
はぁ〜、やっぱり目立つなコレ。
寝起きの直後のぼやけた視界ですら目立つんだもん、冗談じゃねぇぞ。
、、、、、、、、やっぱりこれはマイナスポイントなのだろうか、せめて私が男なら、歴戦の猛将、みたいな感じでカッコよくなっただろうに。
いや、そんな事にはならないか、猛将と言うよりかは、唯の厨二病として扱われるかもしれん。
この際、目の傷はいいか、治れと思って治るものでもあるまい、それよりも他の個所で女らしさを演出しよう。
髪を三つ編みにしてみようか、、、お?
悪くは無いんじゃないか?
これなら男共が言い寄って来るかも知れん、そしてゆくゆくは、夜のレスリングを、、、うへへぐへ〜、、、と、妄想は辞めとくとするか、止まらなくなるからな。
もっと三つ編みを増やしてみるか、増やせば増やすほど可愛くなるかも。
、、、、、、、気付けばドレッドヘアーになってしまった。
これは厳ついな、なんつーか、不良外国人みたいな?いやまぁ、実際私はマフィアなんだけど。
いかんいかん、これではおそらく男共は言い寄って来ない。
まぁ、左右に2本ずつの三つ編みで良いか、よし、仕事部屋に向かうとしよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おっす!オラ阿部さん!いっちょやらないか!」
私は意味もなく扉を蹴破りながら部下共に朝の挨拶をかわす。
「おはようございます!!!」
「おはようございます!!!」
「おはようございます!!!」
パソコンや書類が小綺麗に並べられていた仕事机に向かっていた、上下黒のスーツ姿で厳つい、数十人の男共が立ち上がり、やかましいぐらいの大声で次々に挨拶を返す。
いや、それは良いんだ、それは良いんだが、、、、、、それだけか?
色黒でスキンヘッドの巨漢、ジョナサンの肩に私は腕を回す。
「おう、ジョナサン、どんな具合だ?」
「お、押忍!順調です、、、押忍、、」
「仕事の話しじゃなくて私の話しだよ」
「え、、なにがスか?、、、あ?髪型変えたんすね」
はぁ〜、こいつ何にも分かってねーわ、その後に続けるべき言葉があるだろ。
「え?あ、えーと、よく似合ってますよ」
「チッ!!」
意図して出した私の舌打ちに、ジョナサンは、ビクンッ、と肩を震わせる。
「そうじゃねえだろこのバカ!そこは普通、あ!髪型変えたんすねー!めっちゃ可愛いですよ!ムラムラして来たんで一発フ◯ックしていいですか!?て言う
口説き文句垂れるとこだろうがこらぁ!!」
クソッタレ!私が欲求不満なの知ってんだろ!!
私は怒りのままにジョナサンの胸ぐらを掴み上げる。
「いやそんな口説き文句無いっすよそれより仕事しましょーや今はロシア産の小麦粉(意味深)が人気らしーですぜ」
この野郎、露骨に話し逸らそうとしてやがる。
まぁ、いいか、とりあえずはジョナサンの言うとおり仕事を始めるとしよう。
「メガネちゃーん、私はなにすりゃいい?」
私の呼びかけに、キーボードを凄まじい勢いで打っていた、メガネをかけた黒髪長髪の女性
女鹿澤寧々子
通称メガネが返事を返す。
「やってもらうことは特にないです、ぶっちゃけ用無しです」
オゥフ、、、ぶっちゃけ過ぎだろ、、、
まぁいい、そんじゃあ筋トレでもしとくか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
トレーニングルームにて筋トレを始めて5時間弱、そろそろ昼になるな、飯にするか。
今日は何を食おうかな〜
ガラガラ蛇のプロテイン煮込みとか
タランチュラのプロテイン粉揚げとか
ウツボのプロテインソースがけお刺身とかもいいな。
ぬぅ、どれもこれも甲乙つけ難い、どれにすべきか。
私が頭の中で昼食のメニューを決めようとしていると、扉が開けっ放しのトレーニングルームに、黄色い帽子を被り、上下が青色のスモック。
いわゆる幼稚園児の服を着た小さな女の子が現れる。
その女の子の名前は
石動早苗
年の離れた私の妹だ。
「ん、もう幼稚園終わったのかい?意外に早いんだな」
「姉者、話しがあるんだけど」
「話し?」
「今日社会見学で幼稚園の皆がここに来るんだけど」
「ファっ!?い、今、なんて?」
「だから、社会見学で幼稚園の皆が来てるの、もう、建物の前で皆まってるんだけど」
なにいいいいいいいいい!!??
そ、そんないきなり!?
今から社会見学で妹の通う幼稚園の皆がやって来るだとぉ!?
まずい、それはまずい、マズすぎる。
何がマズいかって、言うまでもないが、それはウチがマフィアだからだ。
そりゃもう見られたらヤバイブツが山ほどあるさ。
そんなところに社会見学だと!?正気の沙汰じゃねぇ!
「ちょっと早苗!なんでウチで社会見学なんかする事になったのよ!」
「どういう仕事を見学したいか、園児達に、先生が多数決をとったの、最初は
ケーキ屋さんとかスーパーだったんだけど、私のウチが会社やってるって言ったら皆そっちに興味持っちゃって」
※妹は姉の会社がマフィアなのを知らない※
「とゆーわけで皆を呼んで来るね」
「おい!待てこら!」
くっ、こうしちゃおられん!とにかく部下共に、何か聞かれてもマフィアって事を誤魔化すよう伝えないと!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「始めまして〜引率の先生を勤める、先崎生羅で〜す
職業もアダ名もせんせいで〜す
本日はよろしくお願いしま〜す」
髪型も口調も雰囲気もふわふわの幼稚園の先生が挨拶して来たので私も挨拶を返す。
それにしても、不幸中の幸いと言うべきか、言っちゃ悪いがこの先生かなり頭が緩そうだ。
これなら多少のボロが出ても強引に誤魔化せそうだ。
もちろん油断はできないが。
内心冷や汗ダラダラだ。
余談ではあるが、仮に引率の先生が男なら私のアレがダラダラになっていた事だろう。年中発情期だからな。
はぁ〜彼氏欲しい、、、、って、それより今はこの場を切り抜けるのに集中すべきだな。
「そ、それじゃあ、どうぞ入って下さい」
先生と園児供を招き入れると、左右に、ずらっと並んだ、強面の部下共が一斉に挨拶する。
「「「「「「オォス!!!御勤め御苦労様です!!!」」」」」
、、、、、、、うわぁ、、、園児供半泣きじゃねぇか、、、どうしてくれんだよこいつら。
「あの、、、石動さん?これはいったい、、、」
先生も訝しげな顔をしている。
そりゃそうだ、こんなのどう考えても極道だもんな。
「す、、、、すいません驚かせしまって、ウチはあの、あ、、挨拶は徹底してるんですよ、挨拶は大事ですからね挨拶は、、、あははは、、、、」
くっ、この言い訳は苦しいか!?
「な、な〜んだそうだったんですね、物凄い剣幕だったからびっくりしちゃいました、そうですね、やっぱり挨拶は大事ですもんね、幼稚園でも元気な挨拶をするように教えてますし」
よし、なんとか誤魔化せたか。
「えーと、じゃあ中を案内しますね、はーいクソガキ供〜お姉ちゃんについておいで〜」
「ぶはっ!お、お姉ちゃんだって(笑)」
私の言葉を聞いた瞬間、部下の1人が盛大に吹き出しやがった、後でぶっころす。
「探検しよーぜー!」
「あははは!」
うおっ!?早くも幼稚園児供が自分勝手に動き出しやがった!!
ちょっ!そ、その部屋はやばい!
やばいって!あああああああ!!!
「、、、、、、、なにこの白い粉?」
「小麦粉です!」
そう小麦粉、少しだけ普通の小麦粉と違い、末端価格数十万にも昇る品物だが、それ以外は至って普通の小麦粉です。
小麦粉と言う私の言葉を聞き、他の子よりも一回り体が大きくて生意気そうな、いかにもガキ大将という感じの子供がその小麦粉を鷲掴みにする。「ちょうど腹が減ってたんだよなーいただきまーす」
「食べちゃ駄目ええええ!!!!!」
私の言葉を聞いたガキ大将とその他の園児達が、まるで猛獣にでも襲われるような恐怖に引きつった顔で一斉に私に振り向く。
しまった、焦りすぎておもいっきり叫んでしまった。
私の部下である強面の男どもがビクビク脅えていると言うのに、こんな小さな園児供に大声で怒鳴ったらそりゃ泣きそうにもなるさ、やべぇどうしよう。
「ど、どうしたんですか石動さん!?幾ら何でもその反応は過剰すぎますよ!?
何をそんなに焦っているんですか!?、、、、、、、はっ!まさか、その白い粉って、、、、」
ぬぐっ!まずい、私の異常な反応に先生も疑惑を持ち始めた、どうにかしてごまかさなければ。
「 だ、駄目だよ〜僕〜、この粉はね、本当は小麦粉ではなくプロテインなのよ、5歳児には刺激が強いから食べないでね〜」
咄嗟に出た私の言い訳に、園児供は顔を?にしているが、ともかく、食べるのは諦めたようだ。
しかし、先生は再度私に問いかける。
「プロテイン?でもさっきは小麦粉って?」
「間違えたのよ!文句ある!?」
ここは逆切れで強引に誤魔化す。
かなり無理矢理だが、とにかくこの話題から離れなければ。
「い、いえ!誰にでも間違いはありますもんね」
よし、なんとか力技で切り抜けた。
しかし、初っ端からこれかよ先が思いやられるわ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
社会見学が始まって15分、あと45分も誤魔化さなければならないと言うのか、、、なんとか上手い事時間を潰さないと。
私がそう考えていると、目の前に、大きなダンボールを持った1人の部下が現れる。
「ボス!!おはようございます!!ただいま出張から帰りました!!いや〜、今回はなかなかいい武器が手に入り、、むぐっ!?」
その先を言うなぁ!!
私が焦って部下の口を塞ぐと、その衝撃で部下の手からダンボールが落ちてしまい、
ガラガラガシャーン。
大量の日本刀やドスが地面にばら撒かれる。
「い、石動さん、、、これってどうみても、、しかも、さっき武器って「武器じゃありませんプロテインです」
先生の言葉を遮り、すかさず私は日本刀やらドスを拾い集めてそれを食べる。
「ほらちゃんと食べれるじゃないですか」
完