妖怪編
雨が降ったり止んだりを繰り返す、煩わしい曇りの日。
昼下がりの神社に3人の少女は集っていた。
丸机に座っている2人の内の、果物ナイフでリンゴを剥いている1人、ピンク色をした長髪の、ジト目の少女の名はアカナ・メレズ。
彼女は、【同性アカナメ】と言う、同性の垢を主食とする妖怪だが、変態クソレズというアダ名が付くのを怖れて、自分の正体を隠している。
丸机に座っているもう1人、机に片肘をつきながら、海苔せんべいを食べている黒髪で長いツインテールの目つきの悪い少女は鳴上義仙
義仙は代々続く神社の巫女だが、参拝客が多くやってくる大晦日の日以外は特にする事がないので、基本メイド喫茶でバイトをして小遣いを稼いでいる。
丸机の少し離れたところで、うつ伏せに寝転びながら、両肘を立て漫画を読んでいる、頭に二本のツノが生えた、白色のショートヘアの少女は
天邪鬼
名前の通り、彼女は天邪鬼の妖怪だが、性格にまったくの毒が無い常識人、しかし種族がら反対の事を言っているのだと勘違いされまくり、常識人ゆえに気苦労が絶えない。みそ汁が好物。
「ねぇ、メレズ、、、」
義仙の言葉にメレズは相槌を返そうとする前に、続けられた言葉によって、返答する言葉を失う。
「なんであんた自分が同性アカナメって事隠してんの」
ブシュッ!
義仙の言葉に、メレズは動揺しまくり、果物ナイフを握っていた手元が狂い、自分の手を切りつけてしまい、勢いよく血が噴き出す。
少し離れたところからそれを見ていたヨキの顔に、困惑と焦りの色が出て、冷や汗を流しながらそのやりとりを眺めている。
「は?ど、同性アカナメ?ななな、なに言ってんの?私はあれだし、、、ただのリンゴ剥き妖怪だし」
メレズはなんとかポーカーフェイスを保っているが、それとは対照的に手元は狂いまくりで、その果物ナイフはリンゴにはかすりもせず、己の手をひたすら傷つける。
「切れてる!めっちゃ切れてるよ!!」
寝転んでいたヨキはたまらずに起き上がり、慌ててメレズに注意を呼びかけるが、義仙はそれに構わずに言葉責めを続行する。
「リンゴ剥き妖怪とか言いながら私あんたがリンゴ剥いてんの初めて見たんですけど?つーか銭湯とか行った時あんたいっつも腹の音ならしてんじゃんこれはもう同性アカナメ確定ねそれ以外ありえないわうんありえない」
「はぁ?なにそれ?たまたまでしょ?つーか私あれだし、、、あの、、、、、、、、、、同性アカナメとちゃうし!絶対ちゃうし!」
メレズの震えるハートは自らの手に血液のビートを刻み続ける。
「だから切れてるって!!」
メレズと同様に、焦りまくったヨキは大声で注意を叫び、続けざまに義仙へと言葉を投げかける。
「ちょっと義仙いい加減にしなよー、誰にだって知られたくない事の1つや2つあるでしょう?」
「ほら、天邪鬼もあんたの正体が知りたいって言ってるわよ」
「言ってねーよ!!さっきのは本心だよ!」
ヨキの注意も、ツッコミも無視しながら、義仙はなおも喋り続ける。
「つーかさぁ、あんたさっきから動揺しまくりじゃん、もういいからさっさと認めなさいよ」
「はぁ!?動揺してないし?私のどこが動揺してるってのよ?なに?手元が狂って血が出てるだろとか言いたいの?別にこれ血じゃないからこれはあのあれリンゴの皮だけをジュースにしてるだけだからほら私リンゴ剥きの妖怪だし「リンゴ剥くの辞めろー!!!」
見かねたヨキがメレズの胴に、抱きかかえるようなタックルをくらわすが、次の瞬間、メレズの手元から離れた包丁が、メレズの太ももに突き刺さり、そこから噴水のように血が噴き出す。
義仙「、、、、、、、、、、」
メレズ「、、、、、、、、、、」
ヨキ「ご、ごめん、、、まじでごめん、、、」
「痛って、、、これやばいわ、これはちょっと病院行かなきゃ駄目なレベルの怪我だわ、とゆーわけで帰る」
「帰るのは勝手だけど、その前にちゃんと自分の正体暴露してから帰れよ」
「ちょっと義仙その事はもういいじゃない!!」
「ほら、天邪鬼も知りたいって言ってるじゃない」
「だから言ってねーよ!しつこいよ!色んな意味で!!」
メレズは立ち上がり、一呼吸置いた後、外を指差す。
「あっー!!!あんなところにオシャレな服のアリスが歩いているー!!!」
※アリスという人物はオシャレ編参照※
「えっ!?嘘っ!?そんなのゴールデンスラ◯ムの500倍はレアじゃない!!
どこどこ!?どこにいるの!?」
「それは私も気になる!どこにいるの!?」
2人、、、主に、義仙の注意が外に向いた隙に、メレズは自分の靴が置いてある玄関口へと駆け出し、その後なんとか逃げる事に成功した。