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クレイジーシスターズ  作者: バナナ焼き
2/29

マフィア編

◯月×日


この日は記録的な大雨だった。


各所で川が氾濫し、朝の4時半から発令された大雨洪水警報は、昼の三時半を回っても一向に解除される事は無い。


それどころか、雨は一層激しさを増しまるで降り止む気配がない。



屋上に筋肉ムキムキの趣味の悪い銅像が建つ高層ビルの最上階で、1人の女性がソファに座っていた。


女性の名は石動狂子いするぎ きょうこ


白髪のサイドテールに上下黒のスーツ姿で、縦にできた左目の縫い傷が特徴的だ。


狂子は大雨が降る外の景色を眺めながら1人物思いに耽っていた。



『雨の強い日は忌まわしき記憶が蘇る、、、、、、あれは私が15の時だった』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわー!凄い大雨!今日は晴れだって言ってたのに!!」


15歳の石動狂子は、バシャバシャと水音を立てながら大雨の中を傘もささずに走っている。


もっとも傘をさしたところで結局はずぶ濡れになるだろう。


それほどの大雨だった。


ツルッ

「げっ!!」


狂子が足を滑らせて体勢を崩してしまう。

倒れる直前に左目に石が見え、危ないっ!と思ったがなす術なくそのまま転んでしまう。


「ぐえええっ!!!」


狂子は左目で石を抑えつけたままズガガガッ!とスライディングしながら勢いよくぶっ倒れる。


転んだ勢いと石の硬さによって左目の部分の皮膚が抉れ、大量の血が噴き出し雨水で濡れた道路が更に赤い液体で染まった。



辺りはちょっとした殺人現場の様になってしまうが、一流の空手家の正拳突きを530発まで耐えきるタフネスを持つ狂子はすぐさま立ち上がる。


「いってぇ〜、何なのよも〜、ん?なんか左目に違和感が、、、、なんじゃこりゃーーーー!!!」



幸い、眼球はなんとも無かったものの、左目周辺の皮膚を6針縫う怪我を負い、狂子は消えない傷を負う事になる。


『この後、私は悉くこの傷に苦しめられる』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【バレンタインデー】


高校2年生、17歳の狂子は、3年生の男の先輩を体育館の裏に呼び出していた。


「話ってなに?」


先輩が狂子に質問すると、狂子は慌てて後ろ手に隠していた小さなハコを両手で差し出す。


「あああ、あ、あの!こ、これ!わた、私からのチョコ受け取って下さいっ!」


男の先輩はジャンケンのパーを縦にした形を手に作り、その手を左右に振りながらチョコの受け取りを拒否する。


「悪い、俺面食いなんだわ、顔に傷のある女はちょっと」


「ガーーン!!!」


『恋も、、、、』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【会社の面接】


19歳の狂子が面接会場の扉をノックし、扉を開ける。


「失礼します、石動狂子です、本日は

よろしくお願いします」


「君、、その傷は何かね?」


「あ、これは雨の日、、、「悪いけどウチでは雇えないね、帰っていいよ」


「えぇっ!?」


『仕事も、、、、』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『何もかも上手く行かず私は絶望した』



『私はグレた、夜の繁華街を歩き回り適当な相手を見つけては、レスリング勝負を挑み、フォール勝ちを連発した』


『強制的なレスリング勝負をキッカケに私はあらゆる悪事に手を染めた、最初はポイ捨てや信号無視など、誰もが一度はした様な小さな犯罪だったが次第にエスカレート、勾配の急な坂道にローションをぶちまけたり、自作の超リアルなゴキブリロボットでイタズラしまくった』


『嫌、こんなのはまだ可愛いものだ、20歳になる頃には強盗や恐喝、薬を売ったりと、とても洒落ではすまない事を毎日のように繰り返した』


『気づけば、私は若くしてマフィアのボスになっていた、マフィアは常に死と隣り合わせ、敵対する組織と銃撃戦になる事もあった』


『私はその銃撃戦を制しては、、、、、フォール勝ちを連発した』


『私がちょうど誕生日を迎える頃に死神というアダ名がつけられた、若い女性の身でありながら最強のマフィアと恐れられて名実ともに闇世界の支配者になる、22歳のバースデープレゼントは、見ず知らずの悪党共に死神というアダ名をプレゼントされるという最悪のバースデーだった』



『そして今、私は23歳、女子学生というブランドを手に入れるため大学に通うものの彼氏はできない』


狂子は片手で自分の顔を押さえ小さくため息を吐く。


「はぁ、いい加減、彼氏欲しい、、、」



その時、扉が勢いよく開かれ、大柄でサングラスを掛けた角刈りパンチパーマの男が野太い声で狂子に話しかける。


「ボス!例の取引ですが相手方が急な値上げを要求しています!どうしますか!?」


それを聞き、狂子は振り向きもせずただ一言だけ言葉を返す。


「じゃあ殺せ」


続けざまにサングラスを掛けた太った男が入ってきて狂子に質問を投げかける。


「ボス!買い取った薬が0、01グラム足りません!誤差の範囲ですがどうします!?」


「殺せ」


さらにサングラスを掛けたアフロヘアーの男が部屋に入ってくる。


「すんませんボス、俺のミスで取引とレスリングの日が被ってしまいました」


「何やってんだぁぁ!!もう両方入れとけ!レスリングしながら取引するから!!」


まるでバーゲンセールの如く次々にサングラスを掛けた男が入ってきては、皆が皆、狂子に質問を投げかける。


「ボス!」「ボス!大変です!!」「ボス!」「ボス!」「ボス!!」



「ああもう!!ボスボスうるせぇぇ!!

殺せ!皆殺しにしろ!!所詮この世は弱肉強食なんだよぉぉ!!!」



「ボス、お耳に入れておきたい事が」


「今度は何だぁぁぁ!!!」


「面接を受け受けたいという者がいるのですが」


「あぁ!?そんなのあんたが適当に、、」



「でも相手は若い男ですよ?」


「マジで!?行く行く!すぐに準備するわ!」


先程までとは打って変わり、嬉しそうな顔で狂子は急いで準備を進めていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


扉がノックされ、狂子が「入れ」と促すと、ドアが開かれ若い男が中に入ってくる。


「失礼します、垣添太一かきぞえ たいちです。本日はよろしくお願いします」


男は緊張した面持ちで話し出す。


「こちらこそよろしくね」


『ちょっと筋肉が足りてないけど顔は悪くないわね、年も若いし、これは狙い目ね』


面接で緊張する垣添太一とは逆に狂子の頭の中に面接という意識はほとんど無い。



「どうぞ座って」


「は、はい失礼します」


「早速最初の質問だけど、、」


何故この仕事をやりたいと思ったか、とかを聞かれると思い垣添太一は、頭の中で質問に答える為の言葉を整理するが、その行為は全く無駄だと思わざるを得ない質問が飛んできた。



「私は美人か?」


『なんだこの質問!?』


予想外の質問に太一は思わず、心の中でツッコミをいれる。


『この質問、マフィアの仕事とどう関係があるんだ?』


そう考えつつも太一はその質問に答えを返す。


「、、美人です」


「やだー!恥ずかしい♡」


美人と言われた瞬間、狂子は懐から銃を取り出し、それを太一に向けて撃ちだす。


ドギュンドギューン!


「どわあああああぁぁ!!」


太一は、なんかこう、物凄い頑張ってそれを躱す。


「あらごめんなさい♡嬉しいのと恥ずかしいのが混ざって思わずやっちゃった」


『拳銃ぅぅ!?この女拳銃撃ってきやがった!!どんな照れ隠しだよ!命がいくつあっても足りねぇぞ!!』


「それじゃあ、次の質問なんだけど、、とりあえずお前、私とセックスしろ」


『ナンデソウナルノ?』


なんだこれは、最早質問ですらない。


「あの、すいません、さっきから何を

言ってるんですか?大体僕たちは出会ったばかりだしいきなりそんな」「そういうのいいから答えを聞かせて」


狂子の言葉を聞いた太一は気まずそうに目線を下に向け押し黙る。


「なんで何も言わないの?」


ゆっくりと狂子が立ち上がり、太一の方へ歩を進める。


「お前さっき私の事美人って言ったよな?言ったよな?」


「い、言いましたけど」

ロクでもない空気を感じつつ質問に答えると次の瞬間、狂子が太一の胸倉を掴み鬼の形相で怒鳴りつける!


「じゃあセックスしろよぉぉ!!!」


「ひぃぃ!!ちょ、ストップ!なんでそんなにセックスしたいんですか!?」


「私はなぁぁ!!てめぇが生まれる前から処女やってんだよ!!生まれてこの方1度も彼氏できた事がないから欲求不満なんだよ!!分かったらセックスしろおらぁ!!私は美人なんだろ!!?」


「すんません!あれは嘘です!別に美人じゃないです!面接に受かりたくて嘘つきました!でもそれぐらい皆やってますよね!?だから許して下さいお願いします!!」


ブチ切れた狂子が力士顔負けのパワーで太一をぶん殴る。


「死ねっ!!」


バキャアっ!!



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