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クレイジーシスターズ  作者: バナナ焼き
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猛獣編

皆さんこんにちは。垣添太一です。


自分は今、ペットショップでアルバイトを始めました。


自分が働くペットショップの店長

蒸篠むしのナツメさんは



「おぉ〜ヘビ太郎〜お前はかわいいな〜!ん〜?ジャージャーと愛らしい音を立ててどうちたの〜?甘えてるのかな〜?よーちよーちよちよち!!」



、、、、、、、個性的な人です。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




腰まで伸びた薄い赤色のロングヘアーが特徴的な女性。蒸篠ナツメ。


猛毒を持ったヘビ、ガラガラヘビを撫で回す彼女の顔は満面の笑みだった。



彼女、蒸篠ナツメが顔を撫で回すたびにガラガラヘビは尻尾の先端を小刻みに素早く震わせながら特徴的な音をあげている。


「何やってんすか店長!!ガラガラヘビの出すその音は威嚇の音ですよ!!早く手を離してくださ


言いかけた太一の言葉を、地の底から響くような唸り声が遮る。


〈グルルオオオオオオオ!〉


本能に直接訴えかける恐ろしい声の主、ヒグマの唸り声を聞いたナツメは、わしゃわしゃとガラガラヘビを撫で回す手を止め、【クマさんゾーン】と書かれた扉を開けてその中へと入っていく。



「おぉ〜クマ太郎〜お腹が空いたのかい〜?本当はご飯の時間にはまだ早いけど、お腹が空いたんならしかたないな〜、ほーら好きなだけお食べ〜」


猫なで声で喋るナツメの声がドアの向こう側から聞こえた直後、爆音にも似た獣の叫び声が響き渡る。


〈ゴアアアアアア!〉



「そんなに慌てなくてもご飯は逃げまちぇんよ〜」


凄まじい勢いで叫ぶヒグマとは対照的に、呑気な様子で言葉を返すナツメだが、クマ語を解する人からすれば彼女の対応は大きな間違いだという他ないだろう。


【俺をこんなところに閉じ込めやがって!!!噛み殺すぞ人間風情が!!!】


ヒグマの発した言葉の意味は上記の通りだ。


ナムアミダブツ。

なんともビーストめいた発言であろうか。怖い。



〈ゴオォー!〉


雷雨にも似た音を耳にしたナツメは、慌ててその部屋から立ち去るなり、ほとんど全力疾走で下部へと伸びる階段を駆け下りる。


落ち着きのない店長の後を追うようにして、太一も階段を駆け下りる。


階段を降りた先には小規模の湿地帯が広がっており、『ここは本当に都内のペットショップなのか?』という疑問が太一の脳裏に浮かぶ。



「ワニ太郎〜!どうしたの〜そんな大きな声だして〜?私と遊んでほしいのかな〜?」



ゆっくりと水から姿をあらわした巨大なイリエワニは、ナツメへと向かって、のそのそと歩を進めていく。



「やっぱり遊んでほしいんだなー!かわいいやつだなー!おいでおいで〜!」


ナツメが軽快に手を鳴らす音に反応してか、のそのそと歩くワニの動きが僅かに早まる。


「呼んだらちゃんとくるんでちゅね〜お利口ちゃんでちゅね〜、よし、頭をなでなでしてあげる」


ワニに向かって手を伸ばすナツメだが


「だから危ないですって!!いい加減にしてくださいよ!!」


太一が慌ててそれを阻止する。


「やれやれ、バカだな〜お前は〜」


ナツメはわざとらしく肩をすくめ、続けざまに話しだす。


「いいか太一?この子たちはあれだぞ、猛獣なんだぞ?この子たちにその気があれば人間なんか一瞬でお陀仏なんだぜ?だがどうだ?危険な猛獣と四六時中一緒にいるはずの私だが、私はこうして現に生きている。この子たちは私に危害を加えようとしないし、私もこの子たちに危害を加えるつもりは無い。私とこの子たちとの間には立派な信頼関係が築かれているんだ!どうだ?素晴らしいだろう?何をそこまで恐れる必要があるんだ?」


そう話すナツメの足には、刀剣並みに鋭いワニの牙が幾重にも食い込んでいた。


「店長ぉぉぉぉぉぉ!!!おもっくそ噛み付かれてます!!!出血死するレベルで血が噴き出ています!!!」



「ぎゃあああああ!!!」


ナツメは悲鳴をあげながらその場にぶっ倒れる。


彼女の足から噴水のように噴き出した血が、彼女の薄い赤色の髪を、絵の具のように濃い赤色が塗り潰す。


「だから危ないって言ったじゃないすか!!!早く病院に!!!」


「ぐふっ、、、、お、、、お前は何を言っているんだ、、、、。もしも私のいない間に家事や地震が起きたら、ヘビ太郎とクマ太郎とワニ太郎とトラ太郎とゾウ太郎とサイ太郎とゴリラ太郎とバッファロー太郎を誰が守るんだ、、、、、」


「いや地震や火事なんか滅多に起きませんて!!!その不安症を少しは自分の容体に回しましょうよ!!!」


「うるせぇぇ!!!こんなもんツバつけときゃ治るわ!!!私はここを離れる気はさらさらねぇぞオラァ!!!」


そこまで言って、ナツメは気を失った。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





数ヶ月後。



「ヘビ太郎ー!今日もつぶらなお目目がかわいいなー!こっちにおいで〜」



嬉しそうにナツメの首に巻きつくガラガラヘビ。

その姿からは一切の敵意が感じられない。




「クマ太郎ー!相変わらずお前はもふもふでかわいいなー!ほら、お手してみ!お手!」


ナツメの言葉に反応して、ヒグマは言われるままにお手を行う。




「ワニ太郎ー!歯磨きしましょうねー!はい、お口あーんして〜」



歯の裏まで目で見て歯磨きを行う為、巨大なイリエワニの口の中に頭部を突っ込むナツメだが、イリエワニは、口を開いたまま穏やかな様子で静止している。



「よーし綺麗になったー!良かったねー!ワニ太郎がお利口ちゃんだからだねー!」





彼女の愛は動物達に伝わった。


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