オシャレ編
休日の昼下がり、何の変哲もない木造の一戸建て住宅の自室で、1人の少女はベッドの上で仰向けの体制で本を読んでいた。
少女の名はセリナ。
その切れ長の目はほとんど色彩を帯びず
何かを諦めたかのように乾いた瞳をしている
簡単に言うとレ◯プ目だ。
それに加え彼女の変わった所は一切の衣服を
纏っていない所だ。
自宅とはいえ年頃の少女がパンツの1枚も履いていない、つまりはフ◯マンで生活している。
金髪のロングヘアーによって辛うじて大事な所は隠れているものの、アウトかセーフでいうなら確実にアウトである。
何故彼女はこの様な生活を送っているのか
そんな変わり者のセリナが【イかれた姉妹達】というタイトルのギャグ小説を、くすり、とも笑わずに数ページめくった所で、セリナの部屋の木製のトビラが開かれる。
「ただいま、セリナちゃん」
トビラが開くと肩まである長さの、赤みを帯びたオレンジ色の髪の少女が立っていた。
何より特異なのはその服装で、どこぞのパンツレスラーよろしく、太い針の付いた首輪を身につけ、有名な絵画であるムンクの叫びの配色グラデーションをどことなくパクった様なそうでない様な何とも表現し難い色合いの服装には、トーテムと文字が書かれており、その文字の通りトーテムポールがプリントされた服を着用して、下着はスカートの下にダメージジーンズを履いている。
この悪趣味な服装をした小女の名はアリス。
彼女こそセリナの姉にして、妹のセリナをレ◯プ目かつフ◯マンに追い込んだ張本人だ。
「、、、、、、、。」
セリナは読んでいた小説を少しだけズラして
目線だけを動かし、アリスに対して面倒くさそうに一瞥をくれた後、すぐに読書を再開する。
「、、、呆れた子ね、セリナちゃん、どうしてあなたって子はいつもいつもフ◯マンなの?」
「、、、、、、、、。」
セリナはアリスの問いを無視して黙々と読書を続ける。
そんな妹の態度に腹を立てる様子もなくアリスは楽しそうに話しかける。
「ジャーン!今日はそんなセリナちゃんの為に私が服を買ってきましたー!ほら早く着てみて!」
「はぁ、、、、」
テンション高く紙袋を掲げるアリスとは対照的にセリナは、ただただ面倒だといった具合に小さく溜息を吐きながらゆっくりとベッドから立ち上がり、ノソノソと服を着る。
「あら〜!良く似合ってる!かわいいわよ
セリナちゃん!!」
「、、、、、、、、、。」
セリナはただ無表情に自分の服装を見つめる。
白のワイシャツには【I am 不感症】と嫌がらせとしかとれない文字が書かれており、ズボンには、何故かマグロが片足ずつ縦向きにプリントされている。
仮にこの服が嫌がらせや悪ふざけならまだ許せる。
しかしこの姉のタチの悪い所はこの服を本気でオシャレだと思いこんでいる所だ。
この様なクレイジー極まりない感性の姉は、イかれた服を買って来てはそれを妹に着せたりしている。
それだけならまだしも彼女はセリナの私服を
「オシャレじゃない!」の一言で改造したりもする。
そんな狂った姉の手によってセリナのパンツは、1枚残らずフンドシになったりもした。
アリスには悪気は無く、寧ろかわいい妹の為と親切心でやっているものの、その行動は、確実にセリナの悩みの種になっている。
と言うか種どころか寧ろ花が咲いているくらいだ。
「ん?どうしたのセリナちゃん、なんで
さっきから黙っているの?」
ビリィィィィィッ!
「えぇっーーー!!?」
突然着ていた服を破るセリナに対し、アリスが驚きの声を上げる。
「ど、、、どうしたのセリナちゃん、、サイズが合わなかった!?それとも材質が合わなかった!?ゴワゴワしちゃった!?」
どう考えても違う理由を挙げながら質問をするアリス。セリナは、相変わらず冷めた目でそれを睨み続ける。
「ご、ごめんねセリナちゃん、私なにか悪い事したかな?なんで怒ったのか教えてくれる?」
「、、、、センスが悪い」
「セリナちゃん?黙っていたら分からないわよ?なんで怒ったのか言ってくれない?」
「服のセンスが悪い」
セリナの声が小さいわけでもなければアリスの耳が遠いわけでもない
自分に都合の悪い事は無意識に聞かない様に
しているのか、服のセンスを指摘するとアリスはいつもこの調子である。
「セリナちゃん?なんで黙っているの?
人の話し聞いてる?」
「こっちのセリフなんだけど、、、」
その時、アリスが両手でセリナの肩に掴みかかる!
「ちょっと聞いてるのセリナちゃん!?どうしてお姉ちゃんの事無視するの!?」
「だから服のセンスが悪いって、、、」
「お願いだから怒ったわけを教えてちょうだい!改善するように努めるから!!」
「いや、服のセンスが、、、、」
「言えよぉぉぉ!!本音をぶつけてこそ真の人付き合いがあるんでしょ!?あなたお姉ちゃんの事が嫌いなの!?」
「センスが、、、」
「ちょっといい加減にしなさいよ!黙ってちゃ分からないでしょ!?何がそんなに気にくわないのか知らないけどいつも不機嫌な顔しちゃってこの子はまぁ!ちょっと聞いてるの!?ねえっ!ねぇってば!!」
「離せやっ、、、」
セリナは鬱陶しそうにアリスの手を払い退ける。
「っ!!!」
その行動に対しアリスは目を見開きながら大口を開け言葉を失い、信じられないといった具合にビックリした顔をした後、力無く地面にへたり込んで、両手を握りしめ床を叩く様な四つん這いの体制になって小さな声で独り言の様に呟く。
「うぅ、、セリナちゃん、、いつからこんな
反抗的な子になっちゃったの?、、、」
「読書の邪魔だから向こう行ってて」
〜完〜