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いちじく日記

作者: 黒猫

ぼくは、おとうさんとおかあさんと

三人一緒にくらしています。

時々虫がたまごを産み付けたり、

野鳥が身体をつつこうとするけれど、

何とか免れて生きています。

近所のひとは何人か身体が欠けたり

一部が腐ったり、成虫が身体を突き破って出てきたりしています。


おとうさんは体が大振りだから

おかあさんは形が丸くてきれいだから

そう呼んでいます。

会話をしたことはありません。

ぼくたちには口がないから。


雨が降ったあとに、水溜まりに映ったふたりをみつけて、ぼくには家族がいたんだと思いました。


おとうさんは仕事に出掛けないし、

おかあさんは洗濯のにおいはしないけれど、ぼくたちは家族だと思います。

ぼくたちは毎日揺られています。


ある風の強い日、

おとうさんが地面に落ちていきました。

あっと思う間もなく、

おとうさんは潰れてしまいました。

ぼくはびっくりして、悲しいと思うより、恐かったです。


また別の日、おかあさんは熟れた、甘いにおいの中、

鳥につつかれた弾みで地面に落ちてしまいました。

落ちたおかあさんを、鳥は執拗につついていました。

野鳥は、おかあさんを食べていたのです。

おかあさんが食べられてしまった。

ぼくはハラハラと泣きました。


ぼくはひとりになっていました。

丁度葉っぱの陰にいたので、

野鳥につつかれることはありませんでした。

どのくらいの時間をそうしていたのか、

ある日、ぼくは墜落しました。

何の前触れもなく、その日はやってきたのです。


雨が降ったあとだったので、

水溜まりが出来ていました。

ぼくは水に映った自分が、地面に叩きつけられるところを静かに、穏やかにみつめていました。


その日は、きれいな虹が出ていました。














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