第六十七話 第五
火を放ち、避けられ、稲妻が飛んでくる。このままでは戦いが長引くだけで、終わらないと思った俺は前へ出た。
「ケッ!」
それと同時に形を変える王女。ぐにゃぐにゃと色んな形が混ざり、まるで醜い怪物。そして段々と人間らしい形へと整っていく。
次は、第二王国王子……今まで戦ってきた中で一番厄介な相手だ。
少女はゆっくりとこちらに手を伸ばし、手のひらを向けた。
「くそっ」
俺は咄嗟に横へ跳んだ。
あの能力はおそらく、手のひらを向けられた物や人間を動かすもの。でなければわざわざ手のひらをこちらに向ける必要がない。
少女の手のひらから逃れながら火を放ち、着実に近づいていく。
唯果は後ろの方で、同じように手のひらから逃れながら俺のことを見守ってくれていた。戦闘向けの能力を持っていない唯果は、余計なことをしない方がいいと判断したのだろう。
「……っ!」
俺はポケットに手を突っ込み、目の前まで迫って蹴りを放ち、避けられた……が、同時に手を入れていたポケットから携帯電話を取り出して投げつけた。
「いてっっ!?」
そして怯んでいる間に火を投げる。火は少女に直撃し、火だるまになる。
「ガアアアァァァァ!?」
絶叫しながら形が崩れていく王女。数秒で別の王子に形を変え、巨大な水の塊を頭上で発生させてそのまま塊が落下した。
バシャアアア!!
火が消えてびしょびしょになった王女の形は、初めに見た少女に戻っていた。
「はぁ……はぁ…………ケ、ケケ」
「すまないな」
全身に軽いやけどを負ってうずくまっている王女を気絶させ、足を切った。
心が痛むが、やらないと被害者が増えてしまう。
「唯果、やりすぎた。どうする?」
俺は寝ている王女を見たまま後ろにいる唯果に声をかけた。
「そこの王女様は俺に任せておけ」
しかし、返ってきた声は唯果と全然違い、男の声だった。
少し驚き、振り向いてみるとそこには……、
「……誰?」
「そこまでくると最早ネタだろ!!」
赤い髪に猿のような顔…………五部隊長だった。
久しぶりに見た気がする。
「俺を殺さないのか?」
「王族相手に勝てるはずがないだろう? 聞きたいことは人の数ほどあるけど、まあいい。とにかくここは俺に任せろ。まだやるべきことがあるんだろう?」
赤髪は、王女を抱え上げて俺に背を向けた。
「ありがとう、助かる」
「……っと待て。これで何度目かわからないが、名前を教えてくれ」
赤髪は振り返らない。その場で立ち止まって俺の言葉を待っている。
「全部無事に終わったらな。そのときはお前の名前も教えてくれ」
ふっ、と赤髪は笑ってそのまま歩いて行く。その笑いは、期待を裏切られたからなのか、それとも期待通りだったからなのか。分からない。
俺と唯果は走り出した。残る王族は後一人。
俺の弟――――第一王国王子だ。




