第六十六話 ダントマト
次話から最終章突入……。
突然王子と王女の様子がおかしくなった。訳のわからない奇声を発して人間を襲ってくるのだ。
能力解放されてるし……くそっ。一体何が起こってるんだ!?
王子が次々と第三部隊を蹴散らしていく。王女はどこかへ走っていき、未だに帰ってこない。もう滅茶苦茶だ。
「ダ~ン~」
気付けば、三部で残っているのはオレだけになっていた。
「バイバ~イ。ケケケ」
王子は能力を使おうとしている。
使ってる能力は氷の槍……か。オレもここまでだな……。
シャッ。
「ケッ!?」
「おい、殺すなら早くしてくれ。ああ、オレ今初めて王子にタメ口きいたなあ」
と目を瞑り、感慨に浸っていたのだがなかなか死が訪れない。
……そういえば今、変な音と声が聞こえたよな。
「残念ながら生きてる」
「……ん?」
すぐ目の前で女性の声が聞こえて目を開けた。
「そこの王子もまだ生きてる。気絶させて、動けない程度に足を切っておいた」
足元には目を向けると、足から血を流して倒れている王子がいた。
いやいや、止血くらいしないとマズいだろう。
「止血は面倒。あなたがやって」
さらりと酷いことを言う長くて黒髪の女性。
「……嬢ちゃん、もしかしてコロシアムにいた子か?」
女性は小さく頷いた。
「トマト。……あなたは確か少年に半殺しにされてた人」
「ははは、あのガキの強さは反則だ」
あれは王子だって言われたらきっと信じてしまうだろう。それほどの強さだった。
「あの少年、能力使ってた。どこかの王国の王子をボコボコ。……最初はやられてたけど」
「ええぇぇぇ」
どうやらオレが病院送りになっている間にとんでもないことになっていたらしい。
あの少年が王子だったことは驚きだが、なぜ王子が部隊長をやっているのかということが気になり、そこで考えるのをやめた。あの少年にも色々あるのだろう。
トマトさんは無言で手を差し伸べてきた。手を振ってそれを断り、自力で立ち上がる。部隊長が女性に手を借りるわけにはいかない。
「ところでトマトさんはどうしてここに?」
「王族が狂って暴れまわってる。だから逃げてきた」
「ここだけではないってことか……」
トマトさんがオレに背を向けて歩き出す。
「おうおうトマトさん、どこ行くんだ?」
「特に決めてない。とりあえず移動」
「オレも行く。こんな危険なときに女性を一人にさせるわけにはいかないからな」
「勝手にすればいい」
オレはトマトさんの横に並んであるく。暴走している王族相手に何ができるか分からないが、囮くらいにはなれるだろう。
トマトさんは無表情のまま無言で歩いている。会ったときから表情が少しも変わっていないのだが、笑うことはあるのだろうか。
「おおっと、ちょっと待ってくれ。王子の止血を忘れていた! 放っておいても問題はないと思うが、一応な? ちょっ、待ってくれって!」
一瞬だけ見えたその横顔は、少しだけ苦笑しているように見えた。




