第六十三話 急展開
「ヴォルグ」
「はい」
王はじっと俺を見つめている。聞こうとしていることが分かった。自分に何か危険な部分があるかどうかという話だろう。だから俺は聞かれる前に答えた。
「関係あるかどうか分かりませんが」
俺はコロシアムでファンと戦ったときのことを話した。
なんとなく、すぐ隣にいる唯果を見ることができない。
「なるほどな。何かが憑いている可能性があるということか。それに、能力は発火と治癒の二つ」
確かに危険ね、と女王は自分の頬に手を当てて言った。
唯果は今どういう表情をしているだろうか。
「私を守るために生まれてきたんじゃない?」
唯果はふざけて笑う。正直、笑い事ではない気がするのだが。なぜなら、その可能性がないわけではないからだ。
もし仮に唯果を守るために生まれてきたのだとしたら、唯果が誰かに狙われることにならないか?
それがいつかは分からない。もう既に狙われているかもしれない。神のみぞ知るというやつだ。
「でも、もしそうだとしたら私は一体何者なんだろう? だって変だよねー、神様が私を守るためにたいちょーを作らせただなんて」
「ヴォルグさんが先に生まれたってことは、カナンさんが特別な存在だということが生まれる前から分かっていたってことですよね」
「それに、どうして王国を別々にしたのかも分からない」
俺はなんとなく唯果の方を見ると、胸元で輝いているネックレスが目に入った。これも何か関係しているのかもしれない。
分からないことだらけでどうしたらいいのか分からない。
「たいちょーを捨てるように命令した神様って一体どんなやつなのよーもー! 一発殴ってやりたい」
唯果が頬を膨らませて怒っていた。
その言葉、神に聞こえていると思うんだが。
「そういえば、そのとき私に命令した神様は、この王国の神様ではなかったな。どこの神様だろうと大して変わらんと思って気にしていなかったが」
顎のヒゲを撫でながら、呟くように王は言った。
「どんな感じの神様なんですか?」
王の表情が険しくなる。神の特徴を思い出そうとしているのだろう。
「……とにかく異様だったことを覚えている。体が……半分男で、半分女? そんな感じだったような……」
「なっ!?」
いや、待て。確かに同じ特徴の神を俺は知っている。しかし、神っていうのはどいつも同じ特徴なんじゃないのか?
でも、どうやらそうではないらしい。
「たいちょー」
「ああ」
呼ばれただけで唯果の言いたいことが分かった。
第四王国の神には色々聞かなければならないことができた。
そう思い、王と女王に挨拶をして帰ろうとしたとき、声が聞こえてきた。聞き覚えのある声…………第四王国の神だ。
「やはりバレたか。まあ、そうなると分かっててお前達をここに行かせたのだがな」
声は聞こえるが、姿が見えない。
突然聞こえた声に、その場にいる全員が驚く。
「……おい、姿を見せろよ。ぶん殴ってやる」
聞いてて鳥肌が立つほど、唯果が激怒していた。一体、体のどこから声を出しているのかというくらいの低い声。
しかし、それに対して神は笑っていた。
「ふふふ、怖い怖い。まあそう怒るな。そうだな、次に姿を見せるのは……」
その後に続く言葉を聞いたとき、俺は神に対して明確な敵意を抱いた。
「私以外の敵をすべて倒したときかな。お前達は私の星に必要ない。邪魔なんだ。四部隊長、お前を捨てたのが間違いだった。捨てるのではなくて、しっかり殺しておくべきだった」
「おまえぇえええええええ!!!」
唯果が絶叫する。それでも神は無視して、落ち着いた声で言う。
「なんだか急展開だな。まあ事情は説明するのが面倒だからやめるが、とにかくお前達が壊したこの星はもういらない。火星に住む人間を一度消して、またやり直すよ。だからとことん壊してくれ。では、生きていたらまた会おう」
声が聞こえなくなり、玉座の間に静寂が訪れる。
……正直、本当に急展開すぎてわけが分からなかった。




