第六十二話 確認
第一王国訓練場。まだ訓練中なのか、そこでは部隊兵達が額に汗を流して頑張っていた。
そして、俺はその訓練場に入れられた。
「集合」
一部隊長の声とほぼ同時に動き出す部隊兵達。
全員整列したところで一部隊長は話し始めた。
「今日は少し変わったことをやってもらう。まずは紹介しよう。この方は第四王国部隊のヴォルグ隊長だ」
一部隊長は俺を見る。
「初めまして。第四王国部隊長のヴォルグです」
そう言って俺は礼をした。これから何をするのかは聞いたのが、緊張は解けない。
「俺はダイだ。隊長同士仲良くしよう。それに、一部隊長じゃ呼びづらいだろ?」
はははと笑うダイ。この人はけっこう良い人そうだ。
ダイは、部隊兵に内容の説明を始めた。
俺がここに来た理由は、本当に王族かどうか確かめるため、第一部隊の皆様と戦うことになったからだ。もちろん勝てる自身なんかはないが、女王がやれと言うのであれば仕方がない。
部隊兵は隊長を除いて百人。一度に五人を相手にして、それを一息つく間もなく二十セットやらなければならない。
「ではさっさとやってしまおう。準備はいいか?」
確認するようにダイがこちらを見る。それに対して頷き、構えた。
ダイは腕を組んでタイミングを計っている。
「始めっ!!」
ダイの声と同時に最初の五人が飛びかかってきた。
終わったのは、開始から二分後。結果は俺の勝ちだった。
ダイは腕を組んだまま、少しも動いていなかった。やっぱりか、という顔をしている。
俺はダイに近付き、話しかけた。
「終わったぞ、ダイ」
その刹那、俺の体は飛んでいた。
ダイに殴られたと気付くのに三秒かかった。
ダイの表情は変わらず、動くこともなくそこに立っている。そのとき俺はようやく気付いた。
「そういえば部隊長も兵だったな」
俺はゆっくりと立ち上がる。どこにも怪我はない。手加減してくれたのだろうか。
いや、違う。拳が見えなかったことを考えると、全力だったはずだ。そうでなきゃ飛んでないしな。
「なるほど、確かにただの部隊長ではないな。すまんすまん、降参だ。このまま続けたら死んでしまう」
そう言ってダイは笑った。
「……という結果になりました」
俺とダイは玉座の間に戻り、王族に報告をした。
俺が訓練場に行っている間、唯果は玉座の間で王族と話をしていたらしい。俺が戻ってくると、笑顔で迎えられた。
「そうか。嘘ではないようだな。他の王国で王子が捨てられたという話は聞いていない。つまり……」
「俺はこの王国の王子……か」
しばらく沈黙の時間が流れる。当たり前だ。十年以上も前に捨てたはずの王子が今になって戻ってきたのだから。
しかし、だからこそ黙っていないで聞かなければならないのだ。どうして捨てたのか、どうして子供を必ず愛する火星人が自分を捨てたのか。
そう思って口を開きかけたとき、王が沈黙を破った。
「本当に申し訳ないと思っている」
謝罪だった。俺達は、続く言葉を黙って聞いた。
「お前のことは愛していた。……だから捨てたくなかったのだ。しかしそれは神様が許さなかった。その子供は危険だから今すぐ捨てる必要があると言われたときは初めて神様に反発したよ。その結果、子供を捨てるか王国を破滅させるかの二択に迫られたのだ」
王の隣で聞いていた女王は涙を堪えていた。
唯果は俯いていて表情は分からなかった。
話を聞いて分かったことは、王と女王は何も悪くなかったということだ。
神は俺を危険な子供だと言った。それがどうしてかは分からないが、俺はコロシアムでファンと戦ったときのことを思い出していた。
ファンに殺されそうになっていたとき、唯果が間に入ってきて……それで。
唯果が視界から消えて……。そのとき何かに乗っ取られたかのような感覚に陥って。
『コロセ。カナンニヤイバヲムケルモノヲスベテ……』
『コイツヲ――――――ヤキツクセ!』
あれは一体何だったんだ? 神が言っていた危険と何か関係があるのだろうか?




