第六十一話 第一王国
廊下が騒がしい。そう思った数瞬後、扉が勢いよく開いた。
そこに立っていたのは、銀色に輝く鋼鉄の鎧を身に纏っている部隊長だった。
「王様、城門前にいる少年と少女が、王様に会いたいと言っているのですが」
「王族ではないのか?」
「少女は第四王国の王女だと言っており、少年は部隊長だそうです」
「……今更何の用だ」
少年と少女の言っていることが本当なのかどうかは分からない。もしも本当なのだとしたら、少女の方はなにかしら能力を持っているはずだ。もちろん封じられているせいで確かめようはないが。
落ち着いて深呼吸をする。
「いいだろう。連れてこい」
「はっ」
部隊長が扉を閉めた。
しばらくしたら少年少女を連れてくるだろう。
あの日以来、誰もこの城に近付かなくなった。他の王国の人間がこの王国に来ることもなくなってしまった。
あの日……。
私は息子を捨てた。もちろんそんなことは望んでいなかった。
神のせいなのだ。
神の言うことには逆らえない。
逆らった場合、この王国はどうなるのか。
考えたくもない。
「……これで良かったんだ」
「……」
隣の玉座に座っている女王は何も言わず私を見ていた。何のことを言っているのか分からないのだろう。
私はただ扉を眺めていた。
俺と唯果はなんとか城に入れてもらい、廊下を歩いていた。
部隊兵が前に三人、後ろに三人歩いている。
誰一人声を出さない。複数の足音だけが城内の廊下に響き渡る。
王と話す内容を考えている内に、大きな扉の前まで来ていた。
おそらくここにいるのだろう。
兵が扉を開ける。
玉座の間だった。そしてその一番奥に王と女王が座っていた。
数歩前へ出ると、兵が扉を閉めた。
玉座の間にいるのは王と女王、俺と唯果だけだった。
第四王国より少し広いが、中は大して変わらない。そのおかげか、緊張が少しほぐれる。
「はじめまして。第四王国部隊長のヴォルグです」
こんなあいさつでいいのか不安だったが、王族に対してどのような挨拶をすればいいかなど、記憶を失っている俺なんかが分かるはずがなかった。
初めて自分の本名を口にしたせいかかなり違和感がある。
続いて唯果も挨拶をした。
お互いに挨拶が終わってすぐ、王は言った。
「で、何の用かな?」
「聞きたいことがあって来ました」
迷わず答える。
「……聞こう」
王は眉をひそめたが、頷いてくれた。
俺は単刀直入に言う。
「なぜ王子を捨てたんですか?」
教えてくれるはずがないと思っていたが、どうしても聞かずにはいられなかった。
「どうしてそれを聞く?」
王の表情は変わらない。隣に座っている女王は一言も発することなく、ただ俺を見ていた。
一応予想通りの返答だ。
「自分がどこの王国の王子なのか分からないんです」
「どういうことだ? お前は部隊長なのだろう?」
王は怪訝な顔をする。
俺は自分についてすべてを王に話した。
話している途中で、王の表情が徐々に驚きへと変わっていくのが分かった。
「……つまり、あなたはこの王国の王子なのではないかと思っているのですね?」
話が終わった後、女王が初めて口を開いた。とても美しいと思えるような声だった。
「はい」
それを聞いた女王は、ふふっと笑う。そして言った。
「では、今の話が本当かどうか、確かめてみましょうか?」




