表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

 夜の闇は静けさの中で命を消し去っていく。

 静まり返った道で街路樹の葉が風に流され音を立てる。

 そんな些細なことさえも今は恐怖に感じられて、高校生にもなった彼は全力で自転車をこいでいた。

 通りなれた道も、いつもと同じ風景さえも全てが終焉の時を、ただ、静かに待っているかのようだった。

 死を前にして彼の脳裏に浮かんだのは、今朝、出会った少女からの忠告だった。




「寒い・・・・・・。」

 秋も深まり朝晩は冷えるようになってきた。

 空は薄く雲が広がり、朝焼けで真っ赤に染まっている。澄み切った、雲ひとつない秋の空とはいかないようだ。

 いつもと変わらない、もう何度も繰り返してきた、朝の支度を済ませ。登校のために自転車にまたがった。

 家は表の通りから、一本裏に入ったところにある。軽自動車が一台通れる程度の狭い道で、道の両側は民家のコンクリート塀が、より圧迫感を与えている。さらに、電信柱が等間隔に道の片側に並んでいる。

 表通りに向かって進むとゴミの回収場所があり、月曜と木曜の生ゴミの日には多くのカラスが群がっている。カラスには曜日感覚があるのだろうか?それとも、毎日やって来て、ゴミのある日だけ、漁っているのだろうか? 

 電線の上に止まったカラスは、ざっと数えても20は降らないのである。

 近くを通る通行人に容赦なく襲い掛かり、苦情は止まなかった。彼もまたその犠牲者の一人であった。なぜなら、通学のついでに、ゴミを出すのが彼の日課だからである。

 今日は木曜日でちょうど、ゴミの日なのであった。

 覚悟は決めていた、いつものようにやればいい。彼は、そう自分に言い聞かせた。

 自転車に乗っている利点を生かし、全速力で近づいて、ゴミを投げ込み、全速力で走り去る。それでも取り囲まれてつつかれるとものすごく痛い。

 角を曲がると、カラスの群れが見えてくるはずだった。

「あれっ、・・・・・・なにあれ。」

 彼の目にカラスは映らなかった。代わり止まっているのは、獰猛な猛禽類。鷲か鷹だろう。

 電柱の天辺に止まっている。民家の塀の上にも。数は5羽。カラスはどこにもいない。

 突然、辺りを見渡す彼の前から風が吹いた。同時に、大きなものが後ろに飛んでいった。

「うあ。・・・・・・。」

 振り向いた彼の目には、純白の鳥が翼を広げて留まろうとしている、姿が映った。

 そこには、小柄な少女が立っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ