魔王の病気!?
さすがに長くなりすぎたかもしれないので、2話の突入します。話の内容が見れないのでどこが情報齟齬が起きるかもしれません。その際はご指摘お願いします
「で?いつからおかしいと思ってたの?」
「えっと・・・商店街で服を買って、そのあと散歩しようと手を引っ張ったところからです」
「そんな感じだったの?」
「え?えっと、歩くのがいつもより遅くて、口数も減っちゃって、顔も妙に赤かったです」
そんなやり取りを続ける。その質問の取り方はさながら医者のようで、質問をしながらもカルテのようなものを書きながら質問している。
「ふぅん・・・そしたら、ちょっとこの子、借りるわね」
「え?いったいどこに連れていくんですか!?」
背中の羽がばれたらまずい。弱っている今、ネロの羽がどのようなことになっているか俺にはわからない。だが、やばい気がする。
「大丈夫よ。私の診療所に連れていくだけ。それにこの子、『魔族』かなんかなんでしょ?今ここで言うのもなんだけど、私は魔族専門の医者なの。それに、人は無理だけど動物は診療できるわ。だから、この世界だと獣医ってことで通ってる。それより早く向かわないと、この子どんどん弱っていってるわ。貴方も来る?」
「はい!」
魔族専門の医者、そう聞いた瞬間、焦っていた俺はどこかへいなくなり、いつもの俺に戻ることができた。
正直、普通の病院に連れていったところで気持ち悪がられるだけだろうと想像していたし、この人の存在は俺にとってとてもでかいものだと認識できた。
ネロを抱えた女医さんについていくと、そこには普通の軽自動車が一台置いてあった。医者なんだしもうちょっと良いものに乗っていても・・・という余計な考えは捨てよう。今はネロのほうが大事だ。
「乗って。あ、あと後ろのほうにこの子を乗せるから。辛そうだし膝枕してあげて。飲み物ははいこれ、この世界の飲み物とかは魔族には合わないのよね。まぁ順応するんだけどさ」
そうか、ネロが苦しんだ理由はそれだ。飲み物ではないにしろ、飲み物『とかは』と行っていた。そうしたら少なからず、食べ物も含まれるであろうことは想像に難くない。やはり食べさせるべきではなかったのかもしれない
「・・・・・その顔はなにか心当たりがあるって顔ね。なにか食べさせたり飲ませたりしたの?」
女医さんが車を走らせながら聞いてくる
「はい、向こうの世界に行って、こっちの世界に戻ってきたあと、チャーハンを食べさせました。とても美味しそうに食べてましたけど・・・」
「そう、彼らは美味しいと感じる。人間の味覚とそう変わらないのよ。ただ、食べ物が体に順応するまでの間にそんな感じになっちゃうの。」
やっぱり食べさせるのはまずかったか・・・あんな喜んだ顔、されたの初めてだから調子にのったのが悪かったか・・・
「まぁでも、一回順応しちゃえば、あとは何食べさせても大丈夫よ」
俺のことをフォローしてくれるかのように言う。と、ここで一つ思い出すことが・・・
「そういえば女医さん、貴方のお名前は?さっきから焦ってて聞けなくてこのタイミングになってしまったんですが」
「私の名前?私の名前はミサト、藤堂ミサトよ。よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「さ、ついたわよ。はやくその子を下ろして!」
「は、はい!」
そりゃあ必死だったよ。いきなり苦しみ始めるんだもん。さっきと感じがいつもと違うなって感じはあったけど、彼女いない暦=年齢の俺がそんな些細なことに気づけるわけがないじゃん
・・・・・なんてのは一種の合理化、俺自身を正当化させようとしてるだけなんだ。そう、気づけるわけがなかったじゃダメなんだ。気づかなくちゃいけなかったんだ。
そうなると昔のことを思い出す。そう、あの時ちゃんと気づいていたら俺は・・・・
昔、俺には妹がいた。すげぇ可愛かったよ。誰もが愛した。もちろん俺も兄妹として愛した。
妹は勉強もできるし可愛いし、運動もできる、俗に言う『完璧』というやつだ。自慢の妹だった。
ある日、妹の様子が変なのに気づいた。親が共働きで報告はできないので俺がなんとかするしかないと思っていた。
「大丈夫か?顔色悪いけど、病院行くか?」
「ううん、大丈夫だから、気にしないで。お兄ちゃん。ありがとう」
「そうか?ならいいんだけど」
あの時はわからなかったが今なら分かる。あいつは俺を慕っていたからこそ、隠してしまったんだと。ツラいんだけど、俺を心配させまいと。
母さんや父さんも心配してた。だけどあいつは誰にでも優しいから「大丈夫」の一点張りだった。
そして、一週間もしない内に妹は倒れた。学校に言ってる途中に倒れたらしい。
先に来ていた親に聞いたら、原因不明の病気らしい。
それから妹の闘病生活が始まった。といっても入院しているが。
日に日に容態が悪化していく。それでも最初のうちは点滴だけですんでいたので、それほどひどく進んではいなかったらしい。
だがいきなり妹の容態が悪化し、そしてその日のうちに帰らぬ人になっちまった。
俺はあの日妹の強がりにもうちょっと早く気づいていれば、俺はもっとあいつを楽しませることができたかもしれない。俺がもうちょっと早く気づいていれば
「どうしたの?急に泣き出したりしちゃって。」
「え?」
気づいたら頬を雫が伝っていた。熱い雫だ。
「どんな事があったかは詮索しないけど、過去はもう所詮『過去』よ。貴方は『今』を気にしなさい。」
「はい・・・」
そう、俺は今をなんとかしなくちゃいけない。ネロをなんとかしなくてはいけない。いくら過去を気にしても妹が・・・椿が戻ってくるわけではない。
「この子診るからちょっと貴方外出ててくれる?」
「え?なんでですか?俺はずっとネロを見守りたいんですけど・・・・」
「あらそう?じゃあこの子の裸でも見て夜のオカズにでもする?」
「・・・・・・・・・」
俺赤面。さっきの悲しみはどこへやら。早く退散しとかないとミサトさんになにか言われそうで・・・てか告げ口されそうで怖い。仮りにも魔王、本気で怒ったらなにが起こるかわからない。もしかしたら地球なんか跡形もないかもしれない。
何時間待っただろうか。全く覚えていない。俺自身が起きていたとか、そういう詳しい事も覚えていない。気づいたら空は暗くなっていた。
先ほど自分が出てきた扉からミサトさんが出てくる。
「一応、応急処置はしておいたわ。原因はこの世界の物を食したことによる拒否反応。まぁそのうちなれるでしょ」
「はい・・・この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません。ネロを診ていただきありがとうございます」
「固いわねぇ。いいのよ、こういう事をするのが私の仕事なんだし、それに今日は休みだったしね。人、入ってこなかったでしょ?」
そういえば、ミサトさんは普段獣医をやっているって言った。しかし、誰も人が来ないのを見ると・・・普通ならあまりにも適当に処置をするんで人が来ないんじゃないかと考えるだろう。
「今失礼なこと考えたわね。そんなわけないでしょ?ちゃんと処置もしてるし、人も来るのよ?そこいらの獣医がやってる病院より人が来てるわ。予約だって入ってるんだから。」
読心術はもう慣れました。それにしても予約が入るほど人気なのか、ここの病院は。
「そんなことより、彼女の様子見てく?まだすぐ帰すわけにはいかないけど。」
その言葉に俺は甘えさせてもらい、ネロの様子を見に行くことにした。顔色は良い。安心しきったように寝ている。
「こうしていれば普通の女の子なのに・・・」
そう呟いたのが運の尽き。隣にいるミサトさんは随分とサドスティックなようだった。
「あらぁ!?貴方この子の事好きなのぉ?全く素直じゃないわねぇ。それなら一緒に居させてあげるわよぉ」
「え!?ちょ、違います!好きとかそんなんじゃなくて!」
「じゃあなんなのよ?」
「えっと・・・その・・・」
照れ隠しでその場凌ぎの言葉を発したが全くその後のセリフが考えつかない。
確かに、好きか好きじゃないかって言われたら好きだよ?でもこれが恋愛感情かどうかって言われたら当の本人も理解していないので・・・だってその場のノリであの時は言っちゃったし。
「素直じゃない男の子はモテないわよ?」
クスクスと笑いながら俺に言う。
「まぁなんにせよ、あの子には貴方がついていてあげて。その方があの子も安心するわ。それよりも・・・あの子の名前と、貴方の名前、聞かせてくれるかしら?」
「あ、えっと、彼女がネロ、僕が倉田です」
「倉田君とネロね・・・住所は?」
そんな会話が何時間続いただろうか。ようやく警察の尋問から開放された気分だよ。俺の個人情報まで聞かれるし、なんか俺言っちゃいけないことを口にしたのかな。まぁいいや