勇者の誕生
これから読む人にあたって
自分の小説は横では見にくいと思います。今のこんな感じに改行をして書いていきますので、縦読みにしますことをお薦めいたします
腕が重い。鉛を腕に巻きつけているような重さだ。手から滴る赤い液体を舐める。鉄の味がする。少し頭がフラフラしている。血を流しすぎてしまったようだ
「ちょっと!早く倒れなさいよ!ハァ・・・ハァ・・・こっちだって楽して貴方と戦ってるわけじゃないの!」
そう目の前で喋るのは、どう考えても上の中には最低でも入る美人、透き通るような声、出るところはでて引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
しかし、明らかに違うところ・・・
それは彼女が魔王であるというところ。
その肌は健康的を通り越して少し焼きすぎたんじゃないだろうか、という位の褐色色、目は人間の白にあたるところが黒、黒にあたる部分が黄色くなっている。水晶体は蛇の目のように細い。
そう、彼女は『魔王』なのだ。
事の経緯はほんの数日前。
「ドラ〇エもつまんなくなっちまったなぁ。また新しいRPG探すか」
「よう、倉田!まぁたRPG完クリしちまったのか?お前は本当にゲーム好きだな」
俺の名前は倉田、今話しかけてきているのが田中。俺はコイツのいうゲーム好きではなく、ただ暇を潰せるのならなんでもする。
その時に丁度いいと思ったものがRPGである。敵を倒し、レベルを上げ、お金を稼ぎ、時折カジノにより、ボスを倒す。時間潰しにはモッテコイのものだろ?勉強もする気にはなれないしな
「よう、田中。俺は別にゲーム好きじゃねぇよ。暇なだけさ」
「そうか、だったら今度新作が出るみたいなんだが、お前は買うか?」
「新作?ドラ〇エとかF〇とかと違う、完全新作のRPGか?」
「そうだ。どこの会社が作ったのかもわからない。完全新作さ」
俺の興味を引くのには十分の要素だった。RPGであり、既存RPGとは違う全くの完全新作、そして、どこの会社が作ったのかもわからないもの。海賊版みたいなもんか。そして俺は絶対に買ってやると決めるのだった。
それから一ヶ月、ギラギラと照りつける太陽の光は輝きをさらに増し、同時に気温すらも上げている、今日、その新作RPGの発売日となった。どこの電気屋や大手ゲームショップに言っても名前すら知られていないゲームだったため予約が取れなかった。
しかし裏を返せばなんとやら。誰も買う人はおらず、すんなり買えた。
だが、疑問点がなかったわけではない。今までそこに誰も住んでいるはずのなかった空家の所にゲームショップが建ち、さらには入荷しているのがその新作RPGだけという、とてもとても怪しいお店であった。
そいや田中からタイトルも聞いてないのによく買えたな俺。てかパッケージ見てもどこにタイトルがあるのか全然わからんのだが。
気になって後日来てみるも、跡形もなくそのゲームショップは消えていた。俺は夢でも見ているのだろうか。
とりあえず、白昼夢でも見たのだろうと気にせず家に帰宅。同時にゲームを起動。PCゲームだった
しかし、ゲームが起動されることはなく、PCの画面は今だ俺の萌え系でとても痛い壁紙が表示されている
不良品か?と思い、ディスクを取り出そうとしたその時、画面が突然光り出したのだ
眩しくて目を開けていられないほどの光を放つ。もちろん俺のPCに、誰が得するかもわからない意味不明に画面が光り出すPCの機能がついているわけがない。
すると突然光が消えた。目がチカチカして痛いので、開くのに少し時間を要した。
痛みも取れて、目を開けてみると、そこには村の風景が広がっている。
木で作られたみすぼらしい家。畑を耕す人、藁を運ぶ人。肥えた人から痩せた人まで。さっきまでの俺の家の面影など一つもなく、そして中にいたにも関わらず、俺は今外に出てしまっている。さっきまでそこにあったPCもない。
混乱しないわけがない。俺の家も、大切なものも、全てが跡形もなくなくなっているのだから
するといきなり叫び声が聞こえた
「魔王がまた復活したぞ!」
魔王?RPGなどで登場する、最終対決かと思いきや、実は第三形態まであって徐々に強くなっていくって設定がベタな、あの魔王?
そうくだらないことを考えていると、長老のような人がが話しかけてきた。
「とりあえず、お主が勇者になって魔王倒してきてちょ」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
急な展開に頭が追いつかない。なにを言っているんだこのおっさんは。魔王なんてのはゲームの世界の話である、現実の話ではない。
「はいこれ。勇者の盾と勇者の剣と勇者の鎧でいいよね?あとはそこの蔵から好きなもの持ってっていいから」
軽い。なんとも軽い。それでいて今の俺の頭の中はとてもヘビーだ。
「え、ちょ、待ってください。話が読めないのですが。」
「あぁあぁいいから早く行った行った」
「え、待って、えぇぇぇええええ!?」
ということで冒頭の状況となっているわけだが。なぜ俺はこんなことやってるんだ、そのまま帰ればよかったではないか、という考えはこの際捨てよう。なぜなら何だかんだでものすごい乗り気なんだ、俺。
「これでどう!?」
そう言って魔王(美人)は手を前に出し、人差し指を立てる。するとその指先から眩い光が放たれた。おそらくこの状況、流石にここまで耐えてきた俺ですらピンチだろう。
だが、どうした。俺は勇者、故に最強設定、そのような攻撃など効かな
「アババババババババ!」
「ふん!流石にこれには耐えられないで・・・なんで立ってるのよ!」
そう。最強設定!故に効かん!
「もう私の魔力も尽きたし・・・物理攻撃しかないようね!」
そういうと今度は急接近を仕掛ける魔王。ものすごい勢いでグングンと俺との距離を縮める。
そして、その拳は放たれる。それを持っている盾で上手くいなし、剣の先を魔王に向かって突き刺す。
それすらも魔王にとって、避けることは容易いらしく、俺の一突きは空振りとなる。
ついで魔王は、避けた体勢から蹴りを放つ。どう考えても無理な体勢からの蹴りでも、相手は空を飛んでいるのでお構いなし。さすがにこれはいなせない、と判断した俺は盾でガードした。
そんな感じの近距離戦は長く続いた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・どうした魔王!そんなもんか!?」
「まだよ・・・こんなもんじゃないわ・・・この渾身の一撃であんたを葬ってやる!」
またもや近づく魔王。さすがの俺ももうガードする力なんてのは残っちゃいない。だから、玉砕覚悟でカウンターを狙う!
「おりゃぁぁぁぁああああ!」
「・・・・・・・・ここだ!」
そう、その時に問題が発生したのだ。まさか・・・・あんなギャルゲ展開になるとは思ってもみなかった
「「・・・・・・・・・!」」
説明しようか。今この状態は、唇と唇が重なっている状態、昔の日本の言葉でいう接吻に値する状況、要するに、キスをしてしまったのだ。
この瞬間だ、俺はおそらくこの感情を持たなければまた魔王を攻撃出来ただろう。逆に魔王を葬り去ることができただろう。しかし、俺にはできなかった
なぜなら、魔王に対して『可愛い』という感情を抱いてしまったからである
想像してみろ?見るからに不良すらも退けるあの鋭い眼光に、なんでも破壊してしまう腕力、脚力。すべての世界を統べている権力、もう足りないモノなんてない位のお人、いやお魔物がだ。
キスをした瞬間に目を丸くし、顔全体は林檎のように真っ赤だ。しかも敵方に唇を奪われたにも関わらず、モジモジしているぞ。戦闘中という緊張感すらない
もうすでに魔王という風格は完全に消え去り、一人の女の子として見てしまった俺はもう戻れない
「か、可愛い・・・・」
「・・・・・・・・!」
頭から湯気が出ている。人間ではありえないが魔物ではありえるのか
「・・・・・・・・・・・ま」
「ん?ま?」
「魔界では・・・ファーストキスを奪われたものは奪ったものと結婚しなければならない・・・」
・・・ん?それってつまり・・・
「お、俺は君と結婚しなければならないのか?」
話の展開が早すぎる、俺はまだ可愛いとしか言ってないぞ。
「えっと・・・・・もしかして、魔界でのファーストキスって・・・・所謂プロポーズに値しますか?」
その問いかけに対して魔王は恥ずかしみながらも首を縦に降る。お母さん、はじめてのキスは求婚の証だったようです。
「・・・結婚なんて出来るわけないだろ?俺はまだ17歳なわけだし、そもそも君は魔王、俺は人間じゃないか。相容れぬ存在同士だろ?結婚なんて出来るわけないじゃないか」
そうだ。俺らの世界では、男は18歳以上、女は16歳以上で結婚できるようになるのが法律だ。
そう、「俺らの世界では」、な
「年齢とか種族は関係ないだろう!」
先ほどの真っ赤で恥ずかしがっていた顔は今はなく、その顔はなぜか怒りに満ちていた。さっきまでの恥ずかしがっていた真っ赤な顔は、今は怒りで真っ赤になっている
「お前たち人間はいつもそうだ。種族がなんだと理由をつけ私たちに戦いを挑んでくる。私たちはなにも危害を加えていないと言うのに・・・なぜ魔王や悪魔というだけで私たちを畏れる・・・私だって仲良くしたいのに・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
俺は魔王に言葉をかけることができなかった、かけられなかった。
種族という差別、それが例え、差別している人間側からすれば当たり前のことでも、されている側からすればただの苦痛なのかもしれない。そうゆう気持ちは、実際にされないとわからないことが多々ある
人間はこうである、それ以外はありえない。という固定概念が引き起こす悲劇。それを今俺は目の前で感じている
小説でも読んだことがある。獣の耳と尻尾をもったものは、教会から悪魔付きと恐れられ、火刑にかけられる。
だが例え、その人が悪魔付きだったとしても、人間から生まれてきたことに変わりはない。それでもその容姿の違い故に起きる差別
無情、こうゆう時に声をかけられればいい男なんだがな、と昔から言われてきた。だったらそれを今、この場で実行しよう
「なぁ。」
俺はこういうしかないだろ?決まりきっていることじゃないか
「その・・・君が人間と仲良くしたいっていうなら、俺の世界に来ないか?」
「・・・・・・・・・?」
そりゃそうゆう顔になりますわよね。だって貴女たちにとって、この世界が本当の世界ですものね
「俺は別の世界から来た、この世界の人間じゃない。来れたってことは帰れるとは思うんだが・・・どう?俺の世界に来てみない?たぶん、差別はされないと思う。する奴がいたら俺が殴る。だから、俺の元いた世界にこい。そして・・・・・・・・・・・・結婚しよう」
俺今、今世紀最大のかっこよさだわ
魔王は目に涙を浮かべ、嗚咽まじりに返答をする
「本当に・・・ヒック・・・・私でいいのか?・・・グス」
「お前が言ったんだろ?『仲良くしたい』って。まぁ・・・・いきなり結婚するのは無理だが同棲からなら始められるはずだ」
「そうか・・・・じゃあ、よろしく頼む。私の名前は、ネロ=ワルプルギス、ネロでいい。よろしく頼む」
涙を拭い、その手を差し出す魔王。その名はネロ
「俺の名前は倉田だ。よろしくな」
さて、そんなこんなで元の世界に戻りたいわけだが・・・
「なぁネロ?」
「ん~?」
名前を呼ぶとその澄んだ声で返事を返してくれる。癒やしだ。リア充どもってこんな気分なのかなぁ・・・ってそうじゃなくて
「もう少し離れてくれないか?ものすごく歩きにくいんだが。」
そう、今俺の腕はネロに抱きつかれている。ぶっちゃけ柔らかい胸が腕に当たって至極嬉しいんだが・・・その、なんだ。やっぱ恥ずかしいなこの状態
「なんで?貴方の世界では、恋人同士がこうやって腕を組むことは当たり前なんでしょ?だったらいいじゃない」
いや、それはまぁそうだけど・・・いやそうでもない事もなくはない。
「いやでもほら、歩きにくいし。こんな所をネロのお城の人に見られたら困るだろ。」
主に俺が
「お城?そんなのないよ?私はごく普通の家に住んでるの。ほら、あそこ」
ネロに指さされた方向を見てみると、断崖絶壁の上にそびえ立つ魔王のお城・・・・は言われた通り無く、本当に、ごく普通の、どこにでもあるような家がそこにはあった
「とりあえず、あそこから食料と魔道書を持ってこなくちゃいけないの。別次元へのワープはかなり難しいんだから。」
「食料はなんでいるんだ?向こうにだって食料はたくさんあるぞ?」
「まだ向こうの食料がどんなのかわからないのよ、本でしか見たことないし。」
う~む。見た限りでは俺達の世界となんら変わらない生活してるしなぁ。サラリーマンとかいないけど
「それじゃ、とってくるね。ちょっとここで待ってて、すぐ戻るから」
そう言ってお城(自宅)に戻っていくネロ。
・・・・・・飛んでく姿を見て思ったね。なんで魔王ってあんな露出度の高い服来てるんだろうって。戦闘してる時に向かってくるネロの胸の揺れ具合とか胸の大きさとかが気になって仕方なかった。今も飛んでいったときに見えたお尻のなんとエロいこと・・・いやエロいのは俺か
「ただいま~・・・ってどうしたの?そんな顔真っ赤にして?」
「えぇぇえええ!?いやいやいやいや、なんでもないなんでもない!食料はちゃんと持ってきたのか!?」
まさかネロのことを(主に下のほうで)考えていたとは言えるはずもなく、話の話題を逸す
「うん、ほらこれ!美味しいんだよ~、このお豆」
と言って渡された小包(とは思えぬ大きさ)の中には一粒一粒がデカい豆が入ってた。これは・・・大豆より大きいんじゃないか?
しかしながら見た目はいたって普通の豆。大きさを除いて
「これね。育つのがとっても早いんだ。見てて!」
と言って豆を一粒取って地面に落とす。と、たちまち大豆は得体の知れぬ花へと進化した。
「これ、鉄砲豆って言って、この花を倒すと口の中から大量の豆を出すんだ!」
要するに倒さないと豆を出してくれないと・・・・魔界じゃいっつもこんな命懸けなのか?
そんなことを考えていると、鉄砲豆の口かた大量の豆が発射された。これが種マシンガンか!
「頑張れ~!倉田~!」
「応援してないで手伝え!殺される~!」
「ハァ・・・・ハァ・・・・」
し、死ぬかと思った・・・
「もう、だらしないなぁ、倉田は。これくらいの物倒せないと魔界じゃ生きてけないよ?」
「今から行く世界はそんな危ない生物はいないからいいよ・・・さっさと行こうぜ・・・」
「うん!で、場所はどこなの?なんて世界?」
「人間の世界だ。こことは違ったな」
「そっか!楽しみだなぁ、倉田の住んでるところはどんな世界なんだろ?」
目をランランと輝かせてまだかまだかと心待ちにしているネロ、楽しみなのはいいが早く魔方陣描き終えてくれ。疲れた・・・
「おっけ~!描き終わったよ!それじゃ、転移開始!」
すると、魔方陣が光り出す。もうなにも驚かないぞ、絶対驚かないからな。
「はい到着~」
「早っ!」
流石にこの早さには驚かざるを得なかった。仕方ないじゃない、人間だもの
「へぇ~・・・ここが倉田の部屋か。なんか・・・・イカくさ」
「そりゃそうだ!イカばっか食ってたからな、この頃!いやぁ、イカは美味い!あれほど美味いものはこの世に存在するのだろうか!はっはっはっはっは!」
なんにも聞いてない!なんにも聞いてないからな!てかイカを知ってるのかコイツ!
「それにしても・・・明るいねぇ。私たちの世界じゃこんなのありえないよ」
明るい・・・・?そう思い、カーテンを開けてみる。確かに外は明るく、時計を見てみると日付も変わっておらず、たったの10分しか進んでいなかった
これが世に聞く、『時間軸のズレ』なのだろうか
「まぁいいや。ネロ、お腹すいちゃった。なんか作って?」
「いやだ、面倒くさい。今に至るまで色々あって大変だったんだぞ?少し位休ませろ」
もう本当に色々ありすぎ・・・もうなにがなんだか収集つかん。日記でも付けようかね
「えぇ~・・・お願い、私も作れないの。ね?お願い!」
身長差があるせいか上目遣いに、そしてこの猫撫で声・・・・・・反則だ
「わかったよ・・・・作ってやるよ。ただし期待はするなよ」
「やった~!倉田の手料理、楽しみ~」
こう言われちゃぁ・・・作るしかないな
30分後・・・
「ほれ、出来たぞ。これがこの世界で言うチャーハンってやつだ」
「ちゃーはん?なにそれ?」
「チャーハンってのは、卵を混ぜたご飯を炒めた・・・って言ってもわからないか。いいから食ってみろ」
「うん!それじゃ、いっただきま~す!」
ハムッという効果音が鳴りそうなほど、ニコニコした顔で口にチャーハンを入れる。てかこの世界のものは口に合うのか?
「・・・・・・・・なにこれおいし~!人間はいっつもこんなの食べてたの?!」
「ま、まぁな」
ここまで喜ばれると、なんだ・・・作った甲斐があるもんだな。たぶん、料理人やってる人もこんな気持ちだろう
「ハフゥ・・・・ご馳走様。とっても美味しかったよ!倉田!」
「そうか。お粗末様でした」
そういえば、俺はまだコイツの容姿について説明をしていなかったな。
ネロ=ワルプルギス、魔界の女王、高い身体能力に高い魔力、そして飛行能力のついた女。肌の色は小麦色というよりは褐色で、冒頭でも説明した通り、猫目で黄色く、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。俺の目算ではあるが、確実に芸能界に入ったらグラビアから引っ張りだこになるであろう、それくらいのプロポーションを持っている。服に関しても先ほど説明した通り、露出の多めな服だ。女性下着のように開いた胸元、大きく縦のひし型にへそを出すが如くの服中央、そしてハイレグ。俺としては実に眼福なのだが・・・如何せん一緒にいる間に理性が保たれるかが心配だ。
髪は深い青、いわゆる群青色をしていて、ロングヘアーだ。めっちゃサラサラなんだぞあの髪。この前触ってみたけど
身長も・・・先に説明した通り、俺より低い。たしか俺の身長が170くらいだから・・・大体162くらいじゃないか?ちなみに体重は軽い(らしい)
体重を気にするのはどこに言っても同じようだな。身長を聞いても躊躇わず答えてくれたのに対し、体重を聞いた瞬間、嫌な顔をして「・・・・・・・・・軽いほう」と答えてくれた。
体重なんか気にすることないと思うけどなぁ・・・しかしながら、あれだな。やっぱ可愛いとどんな顔をしても可愛いな。あいや、別に女性の大半を敵にしているわけじゃないんだ。深く考えないでくれ
「で、ネロ。今日は休みで、俺も時間が余りに余っているところだ。どこか出かけるか?」
「そうだなぁ・・・」と下を向いて考え込むネロ
大体2、3分経ったくらいで、頭の電球を光らせたようにパッと表情を明るくさせて、ネロはこう言った。
「人間の街を散歩してみたい!」
そんな人間にとっては至って普通、本当に普通のことだった。それを魔王様はご所望のようだった
皮肉じゃない。皮肉ではないのだが、実に普通。もしかしたら、魔王ってのはそんな普通のこともできなかったのか?外に出れば人間に恐れられる、かと言って家の中じゃ散歩なんて言える訳がない。だからこそ、そんな危険のない外を思いっきり歩いてみたいのか。
そう勝手に推測した俺はもちろん、ネロの頼みを断れるわけはなく・・・・
「よし、そしたら行くか!散歩!」
「うん!」
ネロと散歩、いわゆる美人と散歩。もちろん、周りの男共の目を引かないわけはない。(羽根は隠してある)
フハハ!なんて快楽!なんて優越感!アッハッハッハ!ハッハッハ・・・は・・・・なんて虚無感・・・
哀しい・・・こんな自分が哀しい・・・・なに言ってるんだ俺は・・・あぁぁあぁぁぁあこっちを見るなぁぁぁぁぁぁ・・・
「?ねぇ、どうしたの?いきなり座り込んで。ねぇ倉田、ねぇってば!」
道端の隅で屈みこんでいる俺を必死に動かそうと促すネロ。そんな努力虚しく虚無感に包まれた俺の心はどんどんと黒に染まっていく。
「あっはっは・・・俺って本当にゲスだよな・・・もう俺なんかいなくなれば・・・」
「んもう!倉田ったらぁぁぁあ!」
「ぶべらっ!」
いつまでも動かない俺を見かねてか、ネロは生まれ持つ豪腕で俺の頬を叩いた。しかしながら、その頬は痛みもしない。叩かれた感触すらもないように感じられた・・・いやまぁ叩かれた感触はあったわ
「お前、魔界の時のあの腕力どうしたんだ?地面すらも破壊しそうな勢いのアレ」
「ん、わかんない。でもいいんじゃない?」
いいのか・・・?本人が言うからにはいいんだろうが・・・
その時、この『本来の力を出せていない』ということが、どれだけ重要なことなのか、後々思い知らされることになるとは、到底思いもしなかった
はてさて、時間は進み、今は商店街へと行き着いた。うちの商店街は地元じゃ有名で、食べ物から服、文具や小物まで全てを網羅している商店街なのだ。そこに行けば欲しいものはなんでも手に入るとまで言われている。実際、俺も殆どの用事はこの商店街で済ましていた
「さてネロ、お前のその服は危なすぎる。こっちの世界でも違和感のない服に着替えようか」
「え~、いいよぉ、この服でぇ」
それでは困る、ものすごく困る。なにせさっきから欲情した目で男共がネロのことを見ているからだ。ギラギラした獣の目で見るな!俺の(未来の)嫁だぞ!
「いいかネロ、お前は花嫁としてこの世界に来た。お前のお父さんもお母さんも、ましてや執事さんすたもいないんだぞ?」
実際に執事がいるかどうかはわからんが
「・・・・・・そうだね。なにがあるかわからないしね」
「やっとわかってくれたか。それじゃ買いにいくぞ。そこに服屋があるから入ろうか」
そういって服屋に入るよう促す。これで一先ずは安心・・・・じゃなかった。今度は店員さんが釘付けだ。早く接客をしてくれよぉぉぉぉおお!
「お、おおおおお客様!いらっしゃいm☆△●×」
いや待て噛みすぎだろ!いくらなんでも!
早くもそんな店員を見兼ねてか、奥から、いかにもベテランで、私ここで長年働いてますのという貫禄のある人が出てきた。
「いらっしゃいませ、おきゃくしゃま」
あ、噛んだ
「・・・・失礼いたしました。今日はどういった要件で?」
「あ、この子の服を見繕って欲しいんですけど」
「承りました、少々お待ちください」
そういってネロを連れて奥へと消えていく。さすがの俺も女性服まではわからんからなぁ・・・いや男物でもわからないけど。だって服なんか着られればいいし。ま、そのせいでモテないんだけどね
「お客様~!」
早くも見繕いが終わったようでさっきの人に呼ばれた。
「こんな感じでいかがでしょうか?お客様の彼女さんはスタイルがとてもよろしいので、夏をコンセプトに、飾らずシンプルに仕上げてみました」
そういって試着室のカーテンを開けると、褐色肌とは真逆の、真っ白なワンピースを着たネロがいる。反対の色であるが故に、その健康的な肌の色は余計に強調されていて・・・・まぁ要するに可愛いんだよこれが
「・・・・ど、どう?倉田?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「倉田?どうしたの?」
「・・・・・・・・・あぁあ!?あぁいやなんでもない!可愛いぞ!うん、すげぇ可愛い!」
「そ、そう?あ、ありがとう・・・・」
頬を紅潮させ俯きながら言う。いちいち可愛いなこの・・・!
「もう少し選ぶか?ネロ」
「うん、そうする」
と言って店員さんと服を選びにいった。
その後、何度も何度もネロの服を見たがどれも似合っていた。まさにグラビアアイドル並のなにかを兼ね備えているとしか言いようがない
そして買った服は合わせて10着。しかしながら皆の衆、驚くなかれ。これでなんと5000円ですんだのだ。店員さん曰く、「私も久しぶりに楽しませてもらいました。お代は5着分までで結構です」と言った。それでも服1着が1000円ってのは破格だろうに。よく潰れないよな。
さて、飯を家で食って、服も選んだし、あとはどっかネロの好きそうなところでもぶらつくかねぇ
「なぁネロ、お前はどっか見て回りたいところあるか?」
「・・・・・・そうだね、あのおっきいビルがいい」
「そうか、それじゃ行くぞ」
「・・・・うん」
その時、俺は気づくべきだったんだ。ネロの様子が、さっきとは少し違うことに
まず第一話、完成でございます。
10000文字超えなかった・・・!
ありえん!やっぱり俺に才はないのか・・・!
なんてのは気にしない。なんせ趣味ですからね。気にしたら負けよwww
そんなこんなで不定期更新ですので、よろしかったら毎日、目を通していただくと更新してるかわかりますので、今後ともよろしくお願いします