第一話 召喚
ちょっと厨二病くさいですが読んでもらえるとありがたいです。ブックマークしてもらえるとやる気が上がります。
眩しさで目が覚めた。
次の瞬間、久瀬怜歌は自分が床に立っていることに気づいた。
畳でも、コンクリートでもない。磨き上げられた白い石。継ぎ目のない、広い床。
隣には双葉葛がいた。
周囲を見渡す。広い、という言葉では足りない空間だった。天井が高い。柱が太い。壁には金の装飾。正面には玉座。
玉座に、人が座っている。
大勢の人間が並んでいる。鎧、ローブ、剣。全員がこちらを見ていた。
久瀬は一秒で状況を整理しようとして、できなかった。
「……なんだここ」
双葉の声が広い部屋に吸い込まれた。
玉座の男が立ち上がる。年齢は四十代くらい。金の冠。赤いマント。どこからどう見ても王様だった。
「勇者よ。我が国へようこそ」
声が響いた。
久瀬は双葉を見た。双葉は王を見ていた。表情がなかった。
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儀式、と呼ばれるものが始まった。
ローブの老人が二人の前に立ち、呪文のようなものを唱える。久瀬の手の甲に光が走る。
「鑑定します」
老人が久瀬の手を取り、目を細める。
「風属性。魔力値、平均以上。固有スキル——『疑心』」
「なんと! 魔力値平均以上! 即戦力ですぞ、勇者様……」
老人の声が少し止まった。
「疑心……相手の矛盾、不自然、隠された意図に反応する。観察時、違和感が強調される」
周囲がざわめく。
貴族「...疑心?なんだそれ。観察如きで何ができるんだ」
大柄な貴族「...使い方によっては国に利益が齎せるかもしれん。」
次に双葉。
光が揺れる。乱れる。一瞬、部屋の空気が変わった気がした。
「……属性、なし」
老人の声が低くなる。
「魔力値、無いに等しい。固有スキル——『愚者』」
沈黙。
「愚者……世界法則の無視。詳細、不明」
玉座の王が眉をひそめる。隣に立つ側近が王に何かを耳打ちする。
——視線が、変わった。
さっきまでの「期待」が「吟味」に変わっている。
久瀬「……双葉」
双葉は答えなかった。
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王が口を開いた。
「勇者よ。我が国は魔王の脅威に晒されている。汝らの力を我々に貸してほしい」
双葉が小さな声でぼそっと呟いた。
「よくできたセリフだ」
双葉には助けを求めているように聞こえなかった。助けを求めているならもっとすがるような目で話しかけてくるはずだ。王としての威厳を保っているのか。わからなかった。
「質問していいですか」
「なんでも」
「この召喚、相当準備が要りますよね。魔法陣も、人員も。つまり計画的にやってる。なのに俺たちが何者か、どんな力を持つか、召喚するまで一切わからなかった。それって、賭けじゃないですか」
王は答えなかった。
「よほど切羽詰まってるか、あるいは俺たちじゃなくてもよかったか。どっちですか」
俺たちじゃなくてもよかった場合——それは"勇者"という肩書きが欲しかったということになる。どの話に出てくる勇者も膨大な力を持っていて、国すら敵に回せる存在だ。戦争にしても何にしても、絶大な知名度になる。
「……魔王の手はもうすぐそこまで来ている。勇者を召喚するには十分な条件じゃないか?」
ほんの一秒。でも久瀬の疑心スキルには十分だった。
——この人は今、嘘をついた。
「まあいいです。続けてください」
口角だけ上げて、双葉は言った。
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その夜。
二人は城の客間に通された。
天蓋付きのベッド。上等な調度品。窓の外には城下町の灯り。
久瀬はベッドの端に座って、窓の外を見ていた。
昼間、鑑定の時に久瀬の手に走った光を思い出す。綺麗だった。あの感覚は本物だった。でも今は、それを綺麗だと思う余裕がなかった。
「……俺たち、使われようとしてるよね」
「だな」
双葉はベッドに仰向けになったまま、天井を見ていた。
沈黙。
今日の出来事を整理しようとした。学校。帰り道。気づいたら光の中にいた。そして今ここにいる。
死んだわけじゃない。
でも帰れる保証もない。
「……家族に、連絡できないかな」
「できない」
間もなく、答えが返ってきた。考えた様子もなかった。
「……そうだよね」
双葉は何も言わなかった。
久瀬は窓の外の灯りを見続けた。泣かなかった。泣けなかった、というより、まだそこまで現実が追いついていなかった。
ただ、双葉がすぐ近くにいることだけを確認して、久瀬は横になった。
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異世界ものを描きたくて描きました。これから面白くなるのでお楽しみに




