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バッドエンドのその後で  作者: 高菜かな
序章 忌子の聖女と記憶喪失の少年
6/6

一時の平穏

夢。それは、脳が記憶の整理の際に見せているものだと言われている。

だとしたら、先ほど見た夢は──俺に残っている記憶の一部だったのだろうか。

夢と現実の狭間で、ふと思う。

そういえば、あの後どうなったんだろう?

確か、転移魔法陣で上空に放り出されて……そこから、うまく覚えてない。

あの時見た空にあった、大きな魔法陣。覚えているのはそのくらいだ。

過去の状況から、今どうなっているのか推測する。

最悪のパターンとしては、あの追手たちに追いつかれて……


俺たちを殺しにくる追手。

そのことを考えた途端、俺は様々なことをネズミ式に思い出す。


『──後ろのやつから殺せ!』


爆発しそうなほど鼓動が早くなる。

最初に出てきたのはそんな言葉で、次に出てきたのは空気を切り裂くような発砲音。

そして……殺意を込めてこちらを見つめる、理不尽が──



──……



「──っ!!はっ、はぁ……」


体を大きく跳ねたのと同時に、目が覚めた。

過呼吸気味になっているようで、視界は薄ら暗く、心臓と肺は悲鳴をあげるように活動している。

汗で張り付いた衣服が気持ち悪い。さっきまで心地よく微睡んでいたのに、どうしてこんな最悪な目覚めかたをしてしまったのだろう。

時間をかけて、体を落ち着かせる。

やがて平静を取り戻した俺は、周りの状況を確認する。

二つあるうちの一つのベッドに寝かされてる……ここは誰かの部屋か?ということは無事に逃げ切れたのかな?

本音を言うと、助かるとは思っていなかった。だって、とんでもない高さまで飛んでしまったから。

……さっきの夢、なんだったっけ。もう忘れちゃったな。


「ただいまー……って。」


ドアの方から憂いに沈んだ声が聞こえて、俯いていた顔をそちらに向ける。

そこにいたのはアトレだった。彼女は俺の存在に気がつくと、持っていた荷物を放り出してこちらに駆け寄ってくる。


「おはよう?」


目を見開いてこちらを見つめる彼女に、なんて言っていいのかわからなくてとりあえず挨拶をする。

するとアトレは何も返答せず、俺の頬や頭を色々触ってくる。

しばらくすると満足したのか、大きくため息をついていった。


「っ、はぁあ……おはよう、無事に起きてくれてよかったよ。」

「……俺、どれくらい寝てたの?」


まるで死者が動いた時みたいな反応してたよな……そんなに俺、長く寝てたのか?

恐る恐る尋ねると、彼女はこう返してきた。


「うーんとね、二日くらいかな。ぐっすりだったよ。」


ふ、二日……あと一日遅かったら餓死してたんじゃないか?

そう考えたら、急にお腹が空いてきた気がする。

自分が空腹であることを自覚した途端、俺のお腹がぐーぐーなりだす。


「ご飯、食べる?」

「ウン……」


顔に熱が集まっていくのを感じる。やばい、ちょっと恥ずかしい。

アトレは手を差し出し、俺を立ち上がらせようとする。

その手を取って、床に足をつけた途端……


「へぶ!?」


体勢が崩れて勢いよく床に倒れてしまう。


「え!?け、怪我ない?だいじょうぶ?」

「だ、だいじょ……力入んない……」


力がうまく入らない……あの時は動けたよな?なんで?

すると、心配そうな顔をしたアトレが、何かに気がついたように苦い顔をする。


「あー……そういえば言い忘れてたんだけどね、わたし、今までずっとあなたに体を強化する魔法をかけてたんだよね。」

「体を強化する魔法?」

「うん、で、今のあなたは魔法をかけてない素の状態なの。」


まて、じゃあ俺の体力って今これだけしかないってことか?

……一体、どうやって生きていけっていうんだよ。

ちなみにこの後食事をしに向かったんだけど、その途中の階段で見事に転けて、俺はアトレに抱っこされながら食堂へ行くことになったのだった。

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