逃亡
「──っ!!逃げるよ!こっち!」
アトレは強引に俺の手を引っ張って走り出す。
彼女のスピードは大人に負けず劣らずといったところで、手をつないでいる俺でさえおいて行かれそうだ。
「まっ、待って、はやい!」
このままだと酸欠で死ぬ!そう直感した俺は、声を出すのもままならない中で必死に叫んだ。
すると、その声を聴いた追手のうちの一人がこう叫んだ。
「後ろの奴から殺せ!」
……え、殺す?それって。
その瞬間考える隙も与えさせないように、鼓膜が破裂しそうなほどの発砲音が聞こえてくる……それと同時に、俺たちの正面の壁に、一つ穴が開いたのが見えた。
──逃げなくちゃ、当たったら死ぬ。
警鐘を鳴らすように心臓が嫌な音を立てはじめる。
全身から血の気が引いて、いっそ冷静なんじゃないかと思うくらい、体が逃げることに集中しようとしているのを感じる。
俺はアトレが引っ張ってくれる手をぎゅっと強く握って、彼女の後を必死に追った。
なんで、なんで殺されかけてんだよ俺!別にあいつらに何かしたわけじゃないだろ!?なんで……どうして俺だけこんな目にあってんだよ。
突然降りかかってきた理不尽に、恐怖と悲しさでいっぱいになる。
だけど、泣いて嘆く余裕なんてなくって。
体もそういう状況だっていうことをわかっているからか、涙が出なかった。
それから、二回くらい角を曲がったときだろうか。
何発も飛んでくる銃弾はなぜか俺達には一発も当たらず、無事、転移魔方陣のある部屋の前にたどり着けた。
部屋の扉は重厚な黒い金属でできているようで、見るだけでここがどれだけ重要な部屋なのかがわかる。
アトレは扉を開き……この火災の中で、金属に触れて大丈夫なのか?えっと、急いで扉を閉めて、謎の光をその扉に向かってかけた。
……謎の光、転移魔法陣。もしかしなくても、ここって魔法が実在しているのか?
先ほど転移魔法陣についてきいたときは半分冗談だと思っていたが、こういう風にどこからともなく光が表れているところを見ると……本当のようだ。
「これで、しばらくは大丈夫なはず……行こう、階段あるから気を付けてね。」
俺たちを殺しにかかってくる奴らに、ファンタジーでしか聞かない魔法……何が何だか、うまく理解できない。
とりあえず、アトレが進む方向についていく。
扉の奥には、地下へと続く階段があった。下っていくと、そこには……
「……っ、そんな。」
模様がかけて──本来はなっているはずの光を失なった転移魔法陣がそこにあった。




