続く、脅威
「これから、転移魔法陣のもとへ行くよ。」
「……てんいまほうじん?」
なにそれ。魔法とか、何を言っているんだ?
俺が首をかしげて尋ねると、アトレは微笑んで「うーん、一瞬で移動できる道具って言えばいいかな?でも、そんな理解しようとしなくて大丈夫だよ。」と言ってくる。
どうやらここは随分と広いお屋敷のようで、俺たちは今、長い廊下を歩いている。あたりには煙が立ち込めていて、本来なら倒れてしまいそうなほど苦しいはずだが、なぜか平気だ。
うぅ、疲れた……俺たちが子供だからというのも理由として挙げられるだろうが、ずいぶんと長い時間を歩いている気がする。
「まだ混乱してると思うけど、どうしてこんなことになってるかについて……少しだけ頭に入れていてほしいな。」
アトレは転移魔法陣の場所まで歩く途中で、現状について説明し始めた──
彼女が気が付いた時、すでにここら一帯は燃えていた。
足の悪いアトレのお父さんは、住民の避難を彼女に任せた。アトレは父親に多重の結界をかけて、避難誘導へ向かう。
そして彼女は住民の避難誘導を終え、父の安否を確認しようと屋敷へ戻った。
そこで……俺とばったり出会ったそうだ。
「──そこから先は、わたしもよく覚えてないの。確かなのは、わたしたちの記憶がなくなったのは敵の魔法によるもので、あなたはわたしより重い被害を負ってしまっているということ。」
アトレは父親の安否や自分について、詳しいことを話さなかった。
話したくないのか、それとも忘れてしまっているのか。
……どちらにせよ俺が深く追及する意味はない。聞かないでおこう。
俺は彼女の話を聞いて、一つの疑問が浮かぶ。
「なぁ、その敵っていうのは今も近くにいるのか?」
……やっぱり聞かないほうが良かったかも。いないと思い込んで行動していたほうが俺の心が傷つかないで済む。
アトレに尋ねると、彼女は徐に頷く。隣を歩く彼女は眉間にしわを寄せて、辛そうにする。
嫌なことを聞いてしまっただろうか。俺は謝ろうと口を開くが、そのときすでに彼女の顔は笑顔に戻っていた。
「うん、でも大丈夫。あなたのことはわたしが守るから。」
「……ありがと。」
本当にこの子に、俺を守れるような力があるのだろうか?
無理をして笑ってくれているのではないかと、申し訳ない気持ちが少し湧いた。
俺がもう少し色んなことを覚えていたら、少しは役に立てたかもしれないのに──
「居たぞ!!」
徐にアトレを見つめていると、突然背後から男の叫び声が聞こえる。
振り向くと、そこには銃を構えた大人が複数人、こちらを殺意のこもった目で見つめてきていた。




