真実
キースとユラの間に 1つの命が芽生えていた。
2人はそれを喜び、幸せを分かち合った。
暗殺実行の夜。キースとアンナの息子ジャックと、ユラの真実が明かされる。
ーーーーキースとアンナの間には、息子がいた。
名はジャック。彼は2年前の夏、9歳という若さでこの世を去った。
遺体は家からほど近い雑木林の中で見つかり、夏の酷暑で腐敗が進んだそれは 身体の至る所にハエがたかっていた。死因を調べることすらままならなかった。
ジャックは怪我の多い子どもで、日常的にヤケドや青アザ、切り傷などの傷があったらしい。アンナはそんな彼をよく怒鳴っていた。心配してのことだろう。山や川で友だちと元気に走り回っていたし、ジャックはいつでも楽しそうに笑っていたから、怪我について怪しんだり、疑いの目を向ける者はいなかった。
だが彼の亡くなる半年程前から キースは家を空けることが多くなり、アンナの怒鳴り声は日に日に大きくなっていった。
それがジャックの亡くなった事と 関係があるどうかなど、誰1人知る由もない。ーーーー
ナイトは深く息を吸って吐き、呼吸を整えた。街灯の少ない夜の闇に目を凝らし 耳を澄ませる。
微かにドアの開く音がした。
建物の陰から正面玄関に注意を向ける。
現れたのは、見慣れた人物だった。腰まである薄いピンク色の髪に華奢な体つき、身長は155cm前後、小さい歩幅、真っ白な肌。
ユラだった。
月明かりに照らされたその横顔は 数時間前とは違う、どこか生きる気力さえも失っているように見えた。
(...ひらけた場所だが、この際仕方ない)
ナイトは腰の低い位置で短剣を構え、右足を勢いよく踏み込んだ。足音に気づいたユラがこちらを振り向く。彼女は泣いていた。
ナイトに迷いはなかった。
ユラは苦しんだ表情を浮かべた後、力なく後ろに倒れ込んだ。それをナイトは無意識に、支えるように抱いた。ネグリジェの袖がめくれ、ユラの細い腕があらわになる。彼女の白い肌に似つかわしくない、青アザの目立つ痛々しい腕だった。
昼間 洋服で隠れていた首元には、何かで締められたような茶色い跡があった。
すべて演技だったのだ。幸せそうな笑顔も、優しく語りかける姿も、キースに向けていたものすべて。そう理解した途端に、ナイトは自分自身の心の奥からなにかが沸々と湧いてくるのを感じた。
ユラをゆっくりと物陰へ寝かせると、ナイトは建物の中へ入り2階へと上っていった。
鍵はかかっていない。扉を開けるとまっすぐ寝室へ向かう。ベッドの上にキースが眠っていた。
ナイトは短剣を大きく振りかぶり、初めに喉を引き裂いた。
キースの目がカッと見開いた。痛みで顔が歪んでいる。さらに手足をバタつかせ、口を大きくパクパクと動かす。だが声は出ない。
「お前たちはジャックの命を奪い、ユラの心を殺した。この罪は、お前の死をもってしても決して消えない。決して償えない。だがせめて、償う努力はしてもらおう。」
ナイトはキースの上に馬乗りになり、その身体に何度も短剣を突き刺した。
キースは次第に暴れなくなった。力尽きたのか指の1本も動かない。
「心配するな。せめてもの情けだ。お前の妻もすぐにそちらへ連れて行ってやる。」
最後の一振りがキースの頭を貫いた。




